●『猫の手探偵事務所』 調査報告書 No.0

   私鉄とJRが乗り入れている、この地域では一番大きな駅から、歩いて  10分弱・・・
   これだけ聞けば相当に羽振りが良いように聞こえるだろうが、大規模な
  再開発の結果、地域を代表する都市へと成長したこの街に相応しく、高層
  建築が立ち並ぶ駅の北口側と対照的に、昭和の佇まいを色濃く残した昔な
  がらのアーケードしかない南口側。
   しかも、そのアーケードの中でなく、アーケードを後ろ側に見る住宅地
  に有る小さな倉庫の2階が俺のオフィスだ。
   まあ、この倉庫も内装業を営む知人が羽振りがよい頃に建てた物で、今
  となっては住宅街の中に有るこの倉庫は、治安を不安に思う住民達からの
  非難の的になっている。
   住民達の非難を避けるために、俺がこの倉庫に住むという条件で、破格
  の値段で鉄筋2階建ての倉庫を借りているのだが。
   俺にしてみれば、ここの立地は住所だけでハッタリは効くし、仕事の依
  頼を待つには都合が良い。
   しかし、探偵に資格が必要でないことと、TVドラマや映画の影響を受
  けて気軽に探偵事務所を開いてみたが、ドラマや映画のようには上手くは
  いかないのが現実である。
   簡易印刷の値段が安いので大量にチラシを印刷して、高校生を使って駅
  北口でチラシを配布し、自分の足でチラシを配って歩いた。
   1万枚印刷したチラシは全て配布し終わり3日目、なんの連絡も来ない。
  どうやら、俺には1万分の1の幸運も無い様だ・・・
   「間違え電話でもいいから、電話鳴らないかね・・・」
   俺は、応接用のソファーの上に寝ころびながら呟いた。
   「コトコトコトコトコト・・・」
   階段を上る音が聞こえる、この音は女だな。
   俺はソファーから起きあがり、服の皺を手で撫で付けた。
   「ガチャ!」
   階段を上がってきた奴は、ノック一つ、挨拶一つなくいきなりドアを開
  けた。

   「暇なんだろ?」
   ドアのノブに片手をかけたまま、女はそう言った。
   俺は、女を見てだらしなく上げた右手をヒラヒラと振り、帰れと合図を
  して見せた。そんな俺に構うことなく、女は事務所に入ってくる。
   「猫の手探偵事務所。どんな依頼でも相談に応じます。家出したペット
  の捜索〜失踪者の捜索。お子さまの素行調査〜浮気調査。その他、あらゆ
  る素行・信用調査。一度、相談にお越し下さい。(相談費、無料)。この
  チラシは、あんたの所のチラシだろ?」
   チラシを片手に内容を読み上げながら歩き、女はソファーに座った。ソ
  ファーに軽く腰掛け、足を組む。
   「こいつ、黙ってればいい女なんだけど・・・」
   俺は、心の中で呟く。
   「こんな綺麗な客が来たの初めてだろ?」
   俺の心を見抜いたのか、女は俺に言う。
   「客では、初めてだな」
   俺は、女に軽口を返す。
   「ははは! そういう見栄を張るなって」
   「なんだよ、本当に仕事の依頼か? お前で儲けようとは思わねえから、
  実費+小遣い程度でやるぜ」
   俺は、笑ってみせる。しかし、彼女は・・・
   「最初から正規の料金を払う気持もないんだけどさ、とりあえず話を聞
  いてからの方がいいわよ」
   しまった・・・ こいつが、こういう態度をとるときはろくな事が無い。
  どうやら、懐かしい女が突然に来て喋りすぎたようだ。
   微かな後悔と、楽しそうなやっかい事の予感で女に聞いた。
   「で、どんな依頼なんだよ? まさか、先週に見たUFOを探せとか言
  わねえだろうな? そういうのは、どっかのTV局にでも頼んでくれよ」
   「はははは・・・ そういえば、最近はそういう番組もやらないね。大
  丈夫よ、安心して。あなたにも出来そうな事だから」
   女は、軽い冗談で返してきた。俺は、一気に確信に踏み込んだ。
   「で、どんな依頼なんだよ? 惚れた男の身元調査か?」
   俺は、軽く笑いながら言ってみたのだが・・・
   「う・・・ ん、惚れてるのかもしれないけど・・・ あたし自身も良
  くわからないんだよね。一言で言えば、確かに身元調査ね。もう一人のあ
  たしのね」

少し照れの混じった複雑な笑顔で女は答えた。
   「詳しく話してみろよ」
   何を言っても笑わないぜというニュアンスで、俺は言った。
   「実は、もうひとりのあたしと言っても、現実の世界の話じゃないんだ。
  インターネット上に居る、もう一人の私。悪く言えば、私の名前を語った
  偽物・・・ 男なのか、女なのか、何処に住んでいるのかすらわからない。
  でも、あたしはこの人に会ってみたいの・・・」
   俺は、「惚れたのか」という台詞を口にしないで話を続けた。
   「で、俺にも出来そうな身元調査と言うことは、この辺の人間なんだろ
  う? ここを見てみろよ、どこにもパソコンなんて無いし、俺はパソコン
  なんて使ってないんだぜ。どうやって調べるんだよ?」
   「それは、大丈夫。きっと断られないと思って、パソコン一式とバカに
  でも理解できる程度の本を、ここに送っておいたから」
   俺は、半ば呆れながらも頭の中で段取りを考えた・・・ コンピュータ
  に詳しい友人を何人かピックUPして、そいつらに連絡を取る方法を考え
  ていた。
   「で、被害は無いみたいだけど・・・ どういう事なんだ?」
   彼女は、照れ隠しか大げさに悩んで見せて、こう言った。
   「あのね、ホームページって言うのが有って、あたしが自分で作ったホ
  ームページと、インターネット内であたしが使っている名前で作られたあ
  たしじゃないホームページが有るの・・・ 偶然にあたしと同じ名前の人
  が居るのでなくて、あたしに成りすまして作られたホームページが・・・」
   「そのホームページの偽物は、悪意で作っているのでない訳なんだな」
   事実を把握しきれない俺は、曖昧に聞き返した。
   「で、どうしてその相手に会いたいんだ?」
   彼女は少し困ったように、答えた。
   「やっぱり好きなのかな・・・ あたしと、あたしに成りすましている
  その人とは大きな違いが無いんだけど、見事にこうなりたいって感じのあ
  たしなのよ。こんな少女趣味な身元調査を、あなた以外に頼めないでしょ
  ?」
   なんだ、ちゃんと自分で分かっているじゃないかという意味で、俺は微
  笑して見せた。
   「わかった、この以来お受けしましょう」
   彼女は、パッと笑顔になった。
   「しかし、用意がいいな。インターネット絡みの調査なら、必要経費に
  パソコン一式を上乗せできたのにな」
   俺は、軽口をたたいてみせた。
   「どうせ、そんな事だろうと思ってたわよ。パソコン一式儲け損なった
  からって、他で儲けようと思わないでよね。安月給なんだから、ちゃんと
  お友達の値段でしてよ」
   彼女は、安心したのか軽口を返してきた。どうやら、俺の所に来て少し
  は気が楽になったようだ。
   「OK、OK。じゃあ、茶でも飲みながら金の話しでもするか? 当然、
  お前のおごりでな」
   「いいわよ。でも、お茶くらい出した方が良いんじゃないかしら? 高
  く付くわよ、このお茶代は」
   笑顔で言う彼女の肩を叩いてソファーから立たせて、出口を掌で指し示
  した。
   「そういや、朝飯食って無かったな・・・ 飯にするか? おごりで」
   彼女は、事務所のドアを開けてから一番の笑顔を俺に見せた。
   階段を降りる二人分の足音が、トリッキーなリズムでフェードアウトし
  ていく。

 

少し照れの混じった複雑な笑顔で女は答えた。
   「詳しく話してみろよ」
   何を言っても笑わないぜというニュアンスで、俺は言った。
   「実は、もうひとりのあたしと言っても、現実の世界の話じゃないんだ。
  インターネット上に居る、もう一人の私。悪く言えば、私の名前を語った
  偽物・・・ 男なのか、女なのか、何処に住んでいるのかすらわからない。
  でも、あたしはこの人に会ってみたいの・・・」
   俺は、「惚れたのか」という台詞を口にしないで話を続けた。
   「で、俺にも出来そうな身元調査と言うことは、この辺の人間なんだろ
  う? ここを見てみろよ、どこにもパソコンなんて無いし、俺はパソコン
  なんて使ってないんだぜ。どうやって調べるんだよ?」
   「それは、大丈夫。きっと断られないと思って、パソコン一式とバカに
  でも理解できる程度の本を、ここに送っておいたから」
   俺は、半ば呆れながらも頭の中で段取りを考えた・・・ コンピュータ
  に詳しい友人を何人かピックUPして、そいつらに連絡を取る方法を考え
  ていた。
   「で、被害は無いみたいだけど・・・ どういう事なんだ?」
   彼女は、照れ隠しか大げさに悩んで見せて、こう言った。
   「あのね、ホームページって言うのが有って、あたしが自分で作ったホ
  ームページと、インターネット内であたしが使っている名前で作られたあ
  たしじゃないホームページが有るの・・・ 偶然にあたしと同じ名前の人
  が居るのでなくて、あたしに成りすまして作られたホームページが・・・」
   「そのホームページの偽物は、悪意で作っているのでない訳なんだな」
   事実を把握しきれない俺は、曖昧に聞き返した。
   「で、どうしてその相手に会いたいんだ?」
   彼女は少し困ったように、答えた。
   「やっぱり好きなのかな・・・ あたしと、あたしに成りすましている
  その人とは大きな違いが無いんだけど、見事にこうなりたいって感じのあ
  たしなのよ。こんな少女趣味な身元調査を、あなた以外に頼めないでしょ
  ?」
   なんだ、ちゃんと自分で分かっているじゃないかという意味で、俺は微
  笑して見せた。
   「わかった、この以来お受けしましょう」
   彼女は、パッと笑顔になった。
   「しかし、用意がいいな。インターネット絡みの調査なら、必要経費に
  パソコン一式を上乗せできたのにな」
   俺は、軽口をたたいてみせた。
   「どうせ、そんな事だろうと思ってたわよ。パソコン一式儲け損なった
  からって、他で儲けようと思わないでよね。安月給なんだから、ちゃんと
  お友達の値段でしてよ」
   彼女は、安心したのか軽口を返してきた。どうやら、俺の所に来て少し
  は気が楽になったようだ。
   「OK、OK。じゃあ、茶でも飲みながら金の話しでもするか? 当然、
  お前のおごりでな」
   「いいわよ。でも、お茶くらい出した方が良いんじゃないかしら? 高
  く付くわよ、このお茶代は」
   笑顔で言う彼女の肩を叩いてソファーから立たせて、出口を掌で指し示
  した。
   「そういや、朝飯食って無かったな・・・ 飯にするか? おごりで」
   彼女は、事務所のドアを開けてから一番の笑顔を俺に見せた。
   階段を降りる二人分の足音が、トリッキーなリズムでフェードアウトし
  ていく。

 

少し照れの混じった複雑な笑顔で女は答えた。
   「詳しく話してみろよ」
   何を言っても笑わないぜというニュアンスで、俺は言った。
   「実は、もうひとりのあたしと言っても、現実の世界の話じゃないんだ。
  インターネット上に居る、もう一人の私。悪く言えば、私の名前を語った
  偽物・・・ 男なのか、女なのか、何処に住んでいるのかすらわからない。
  でも、あたしはこの人に会ってみたいの・・・」
   俺は、「惚れたのか」という台詞を口にしないで話を続けた。
   「で、俺にも出来そうな身元調査と言うことは、この辺の人間なんだろ
  う? ここを見てみろよ、どこにもパソコンなんて無いし、俺はパソコン
  なんて使ってないんだぜ。どうやって調べるんだよ?」
   「それは、大丈夫。きっと断られないと思って、パソコン一式とバカに
  でも理解できる程度の本を、ここに送っておいたから」
   俺は、半ば呆れながらも頭の中で段取りを考えた・・・ コンピュータ
  に詳しい友人を何人かピックUPして、そいつらに連絡を取る方法を考え
  ていた。
   「で、被害は無いみたいだけど・・・ どういう事なんだ?」
   彼女は、照れ隠しか大げさに悩んで見せて、こう言った。
   「あのね、ホームページって言うのが有って、あたしが自分で作ったホ
  ームページと、インターネット内であたしが使っている名前で作られたあ
  たしじゃないホームページが有るの・・・ 偶然にあたしと同じ名前の人
  が居るのでなくて、あたしに成りすまして作られたホームページが・・・」
   「そのホームページの偽物は、悪意で作っているのでない訳なんだな」
   事実を把握しきれない俺は、曖昧に聞き返した。
   「で、どうしてその相手に会いたいんだ?」
   彼女は少し困ったように、答えた。
   「やっぱり好きなのかな・・・ あたしと、あたしに成りすましている
  その人とは大きな違いが無いんだけど、見事にこうなりたいって感じのあ
  たしなのよ。こんな少女趣味な身元調査を、あなた以外に頼めないでしょ
  ?」
   なんだ、ちゃんと自分で分かっているじゃないかという意味で、俺は微
  笑して見せた。
   「わかった、この以来お受けしましょう」
   彼女は、パッと笑顔になった。
   「しかし、用意がいいな。インターネット絡みの調査なら、必要経費に
  パソコン一式を上乗せできたのにな」
   俺は、軽口をたたいてみせた。
   「どうせ、そんな事だろうと思ってたわよ。パソコン一式儲け損なった
  からって、他で儲けようと思わないでよね。安月給なんだから、ちゃんと
  お友達の値段でしてよ」
   彼女は、安心したのか軽口を返してきた。どうやら、俺の所に来て少し
  は気が楽になったようだ。
   「OK、OK。じゃあ、茶でも飲みながら金の話しでもするか? 当然、
  お前のおごりでな」
   「いいわよ。でも、お茶くらい出した方が良いんじゃないかしら? 高
  く付くわよ、このお茶代は」
   笑顔で言う彼女の肩を叩いてソファーから立たせて、出口を掌で指し示
  した。
   「そういや、朝飯食って無かったな・・・ 飯にするか? おごりで」
   彼女は、事務所のドアを開けてから一番の笑顔を俺に見せた。
   階段を降りる二人分の足音が、トリッキーなリズムでフェードアウトし
  ていく。

 

少し照れの混じった複雑な笑顔で女は答えた。
   「詳しく話してみろよ」
   何を言っても笑わないぜというニュアンスで、俺は言った。
   「実は、もうひとりのあたしと言っても、現実の世界の話じゃないんだ。
  インターネット上に居る、もう一人の私。悪く言えば、私の名前を語った
  偽物・・・ 男なのか、女なのか、何処に住んでいるのかすらわからない。
  でも、あたしはこの人に会ってみたいの・・・」
   俺は、「惚れたのか」という台詞を口にしないで話を続けた。
   「で、俺にも出来そうな身元調査と言うことは、この辺の人間なんだろ
  う? ここを見てみろよ、どこにもパソコンなんて無いし、俺はパソコン
  なんて使ってないんだぜ。どうやって調べるんだよ?」
   「それは、大丈夫。きっと断られないと思って、パソコン一式とバカに
  でも理解できる程度の本を、ここに送っておいたから」
   俺は、半ば呆れながらも頭の中で段取りを考えた・・・ コンピュータ
  に詳しい友人を何人かピックUPして、そいつらに連絡を取る方法を考え
  ていた。
   「で、被害は無いみたいだけど・・・ どういう事なんだ?」
   彼女は、照れ隠しか大げさに悩んで見せて、こう言った。
   「あのね、ホームページって言うのが有って、あたしが自分で作ったホ
  ームページと、インターネット内であたしが使っている名前で作られたあ
  たしじゃないホームページが有るの・・・ 偶然にあたしと同じ名前の人
  が居るのでなくて、あたしに成りすまして作られたホームページが・・・」
   「そのホームページの偽物は、悪意で作っているのでない訳なんだな」
   事実を把握しきれない俺は、曖昧に聞き返した。
   「で、どうしてその相手に会いたいんだ?」
   彼女は少し困ったように、答えた。
   「やっぱり好きなのかな・・・ あたしと、あたしに成りすましている
  その人とは大きな違いが無いんだけど、見事にこうなりたいって感じのあ
  たしなのよ。こんな少女趣味な身元調査を、あなた以外に頼めないでしょ
  ?」
   なんだ、ちゃんと自分で分かっているじゃないかという意味で、俺は微
  笑して見せた。
   「わかった、この以来お受けしましょう」
   彼女は、パッと笑顔になった。
   「しかし、用意がいいな。インターネット絡みの調査なら、必要経費に
  パソコン一式を上乗せできたのにな」
   俺は、軽口をたたいてみせた。
   「どうせ、そんな事だろうと思ってたわよ。パソコン一式儲け損なった
  からって、他で儲けようと思わないでよね。安月給なんだから、ちゃんと
  お友達の値段でしてよ」
   彼女は、安心したのか軽口を返してきた。どうやら、俺の所に来て少し
  は気が楽になったようだ。
   「OK、OK。じゃあ、茶でも飲みながら金の話しでもするか? 当然、
  お前のおごりでな」
   「いいわよ。でも、お茶くらい出した方が良いんじゃないかしら? 高
  く付くわよ、このお茶代は」
   笑顔で言う彼女の肩を叩いてソファーから立たせて、出口を掌で指し示
  した。
   「そういや、朝飯食って無かったな・・・ 飯にするか? おごりで」
   彼女は、事務所のドアを開けてから一番の笑顔を俺に見せた。
   階段を降りる二人分の足音が、トリッキーなリズムでフェードアウトし
  ていく。

   ○「猫の点探偵事務所」人物ファイル Ver.1

   この「猫の手探偵事務所」の人物設定は、あえて曖昧なまま初めており
  ます。
   今後、話が進むに連れて人物が明確になっていくでしょう。様々な作者が
  参加するに連れて、人物の相関関係が複雑さを増すことは容易に想像できま
  すので、不定期では有りますが、俺が人物ファイルとして人間関係や、その
  人物の設定を書き留めていこうと行こうと思います。
   創作の手助けになれば、幸いです。

   人物1 名前  男(今は名前無し)
       職業  猫の手探偵事務所所長
       年齢  (現在は、不明)
       備考  ひとりで探偵事務所をやっていて、パソコンには持っ
          ていないようだ。

   人物2 名前  女・彼女(今は名前無し)
       年齢  (現在は、不明)
       備考  今回の依頼者、インターネット上にホームページを持
          っている。(NET内でのハンドルは現在は不明)

   人物3 名前  知人(今は名前無し) 
       職業  内装業?(現在は不明)
       年齢  (現在は、不明)
       備考  探偵事務所の有る鉄筋2階建ての倉庫のオーナー。以
          前は、ずいぶんと羽振りが良かったらしい。(現在、性
          別?)

   人物4 名前  高校生(現在は無し)
       職業  高校生なんだと思う
       備考  猫の手探偵事務所のチラシ配りのバイトしたらしい。
          (現在、性別?)


   関係

   女・彼女−男 どの程度のつき合いかは不明だが、少なくとも昨日・今日
         の友人では無く、親しい間柄のようである。

   知人−男   利害関係の一致により、探偵事務所の有る建物のオーナー
         と借り主の関係。

   高校生−男  探偵事務所の広告チラシの配布に、男が雇った高校生。

 深夜 しんと静まり返った部屋にパソコンのキーボードを叩く音がこだまする。
時折ため息混じりの人の息づかいがはさまるが、その音は間断なく続く。
「いったい何が わたしをこうさせる?
 このパソコンの画面の向こうに何がある?
 わたしのこの思いを伝えたい誰かがいる?
 たとえどこの誰でもいい。
 わたしの心情を どんな形でもいいから 受け止められる人がいれば。」
と、心に念じながらも、実は目的の意中の人物は意識の中に明確に存在していた。

 連載中の小説は、過去の恋愛を題材にしたものだった。
自分を相手に見立てた記述に最初はとまどったが、書き進めていくうちに
筆はどんどん進んだ。相手が自分をどう思っていたかを推察すれば
すむことなのである。
 まだまだ最初の出会いの場面を少し過ぎた頃だったのだが、宣伝の効果だろうか?
幸運にも、読者の書き込みが入った。
「恋愛小説 わたしも好きです。それにしても衝撃的な出会いですね。
 これからもぜひ読みに来ます♪」
「もしかして あなた自身の私小説?
 興味津々です。
 どんな結末になるのでしょう!?」
などの、もっともらしく比較的軽い書き込みの中に、一つだけ周囲とは違って
一歩踏み込んだ異色の書き込みに目をとられた。それは、
「そうじゃない。わたしはもっともっと あなたのことが知りたかった。
 しかしどうしてあなたは そこで逃げてしまったの?
 この続きを期待しています。
 あなたのある言葉を。」

 しんと静まり返った部屋で、この書き込みの発信者が求める言葉とは何か?と
自問自答を繰り返しながら、黙々とキーを叩く音だけがこだましていた。
「さあ、この思いが伝えられるのか?
 このNETというもので。」
やがて、今夜の連載分を書き終えると、NETに接続しサーバーにupし終えると
ふうっと息をつき、ベッドに倒れ込むように横になった。
部屋は更に静まり返り、キーを叩く音すら消え、何もない世界と化した。

翌朝、考えた。
昨夜あれほど集中して打ったのは何?
それは、私が生きている証だった。
・・・・・・・・それだけ。

コーヒーとトーストを注文したら、女は言った。
「いくらお客が来ないからって、
朝はもうちょっとしっかりしたものを食べなくちゃ。
ほら、モーニングサービスの卵料理くらいとったら。」
「おいおい、そんなことを言って、この卵が高くつくかもな。
なかに釣り針でも、仕掛けてないか?」
「うふふ、それはわかんないわね。これからの話次第よ。
気をつけて、よく噛んで食べてね。」

たっぷりとバターをぬったトーストは、ふわりとしておいしかった。
「ところで、そのHPというのはどんなものなんだい。」
「うん、恋愛小説が連載されているんだけど、それを書いている人が私なの。」
「うっ!
 変なことを言うから、コーヒーが喉に詰まるじゃないか。」
「信じられないけどね、私が書いているとしか思えないの。
しかも、私の話が書いてあるの。
そして、その私は私以上にとても真剣に生きているの。
何だか、すごく惹かれちゃって・・・。
ね、他の人に頼むわけに行かないでしょ。
なんなら、トーストもう一枚食べる?」

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