醤油だけで出す”照り”は秘伝のもの

醤油は薄口のものですが、特別のもの。
うちは味醂(みりん)や何か他のものは一切使わず、
醤油だけでおかきの照りを出してるんです。
 日曜の晩にお米を水に漬けておき、
火曜に餅を搗いて四日ほど置いて
ほどよい固さになったら厚さ2ミリほどに
削りそれをさらに小さく切って金、土、日と乾かす。
この時、風にあてたらいかんのです。
この乾燥のよしあしがおかきを決めてしまいます。
そして一挽寝かして月曜日に焼く。醤油をつけるのは
餅を削る日。ここでこうして、日がな一日、並べては焼き、
ひっくり返しては焼いてます。

冬は炎火の温かさがあるからいいですが、
夏は大変。クーラーも入れられませんから。
 焼くのは細長い四角い火鉢のようなもの。
内側はトタン張りにしてあり、備長の炭で
うちは豆炎を併用しています。
この傍らにあるバケツに入った灰ですか。
炭の上にかけるんです。
直火では焼かない。豆炭の灰がここで生きます。
むっくりと炊き上がります。

 私もいつのまにか還暦が今年です。
主人が死んで、近所の人の親切が
身に泌みています。
こうして焼いていると、「どうえ」と言って
様子を見がてら、夕食のおかずを
おすそわけしてくれる。
義母と二人して暮らしているのを知ってくれてはるから。
この辺の人たちは、それは人情深くて。


                              (京都民報)より