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一般的には、カクテルとは蒸留酒または醸造酒をベースにリキュール、シロップ、ジュース、フルーツ、香辛料などを加えてミックスした飲み物である。大きく考えれば酒をストレートで飲むのではなく、これに何かを混ぜればカクテルだという説もある。こうなるとオンザロックも水割りも立派なカクテルということになる。また3種類以上混ぜたものをカクテルという説もある。2種類の酒を混ぜたものはミックスドリンクというとの説もあってなかなか定かではない。狭義には、マティーニのようなショートドリンクス(洋酒をほとんど薄めることなく、かなりのアルコール度数があるままに飲む場合)を指すが、広義には、ジン・フィズのようなロングドリンクス(洋酒を水、ソーダ、コーラなどのミキサーで薄めて飲む場合)を含めた全てのミックスドリンクスを総称する語である。このカクテルに語源についてはいろいろな説がある。昔、メキシコのユカタン半島のカンペチという港にイギリスの船が入港、上陸した船員達がある酒場に入った。カウンターの中でバーテンダーが皮をむいた木の枝を使っておいしそうなミックスドリンクを作り土地の人に飲ませていた。当時イギリス人は、酒はストレートでしか飲まなかったのでとても珍しい光景に映り、「これは何か?」と聞いた。バーテンダーは木の枝のことと勘違いして「これはコーラ・デ・カジョ」とスペイン語で答えた。雌雄のしっぽの意味で英語では「テール・オブ・コック」となる。以来船員達の間ではミックスドリンクのことを「コックテール」と呼ぶようになったという。他には、有名人が集まったある酒席の主人公をつとめた絶世のメキシコ美人の名がコクチルで、それが後にcocktailに変じたとか、こっけいなようなこじつけ話が多く伝えられる。カクテルの作り方で、使用する酒の量をms、msr、msrsなどの語を用いてあるものがあるが、これらはmeasure(s)の略である。できあがり全量を4として、それぞれの分量を1(=1/4)、2(=1/2)などと表記する。ちなみに夜のバーのカウンターに輝くカクテルの数は約3000程度ある。カクテルは自分の口にあったものを勝手に作って名前を付ければよく、誰にでもできるから楽しい。
カクテルグラスのように足の長いグラスで冷やしたカクテルを飲む場合は、手の温かみが伝わらないように足の部分を指先でつまんで飲むのがよいとされている。しかしカクテルパーティーのように立ったままで飲む場合は、グラスの足の下の丸い底を小指と薬指の間にしっかり押さえて持った方が、人と触れ合ったときにこぼしたりしないのでよい。また、カクテルグラスの場合は普通3、4口で早く飲むものとされている。これは、せっかく冷やしてあるカクテルが温かくならないうちに飲むということで、マナーとして決まっているわけではない。フィーズのような場合はグラスの中に氷が入っているため、氷が溶けて小さくならないうちに飲むのがエチケットということになっている。また、何を注文すればよいのか分からない場合は、知ったかぶりをするよりは好みをハッキリ言う方が無難である。例えば、甘口だとか辛口だとか、フルーティーなのが好きだとか。酒に強い人、弱い人など好みに応じてバーテンダーが選んでくれるはずである。
「あなたが酒場で最初に飲まれたカクテルは何ですか?(サントリーカード会員調査結果より)」による回答によれば、男性は、@位ドライ・マティーニA位ジン・フィズB位ソルティ・ドッグ、女性は、@位ソルティ・ドッグA位カルーア・ミルクB位バイオレット・フィズである。やはり、オーソドックスなものが好まれているようである。
2月14日のバレンタインデーのお返しにカクテルというのはいかがでしょう。まず、ウィスキーベースにベルモットを加えたささやきという意味のカクテル「ウィスパー」。次の1杯はルージュ色の「キッス・イン・ザ・ダーク」。このへんまでくると大分酔いがまわってくる。三杯目はブランデーベースの「キッス・テル」。もうここまでくると彼女は「ワン・エキサイティング・ナイト」。このカクテルで完全に「パーフェクト・レディ」ということになる。さて次なる1杯は当然「ビトイーン・ザ・シーツ」ということになるから要注意。
カクテルやシャンパングラスの縁に砂糖や塩を付けたカクテルが多いが、これを雪が付いたようになるところからスノースタイルと言われるようになった。レモンを二つに切り、グラスの縁を回しながらレモンの切り口の汁を平均にぬらし、平らにした砂糖や塩の上にグラスをふせるようにして付着させる方法がとられている。
カクテルに欠かせないオリーブとチェリーだが、オリーブは辛口にチェリーは甘口に入れられている。オリーブは南フランスの地中海地方が原産地だが、アメリカのカリフォルニアや我が国の瀬戸内海の小豆島でも栽培されている。加工してないオリーブはプレーン、種子を抜いたものはストーンドまたはビテッドといいレッドペパーなどを詰めたものはスタッフド・オリーブという。チェリーで有名なのはマラスキノチェリー。ユーゴスラビアのマラスノキ地方に野生するサクランボを、この地方特産のチェリーから作られたマラスキーというリキュールの瓶の中に4ヶ月くらい貯蔵、念入りに加工して香り高い風味をもたせたものだが、現在ではシロップ漬けにして着色したマラスキノスタイルと言われるものがほとんどである。
形はレモンによく似たグリーン色をした柑橘類果物がライムである。アジアが原産だがインド、セイロン、マレーシア、カリフォルニア、フロリダ、西インド、メキシコなどが主産地として有名。我が国に輸入されているものは、ほとんどがカリフォルニア産かメキシコ産である。酸味はレモンより強いが搾れるジュースはレモンの約半分ぐらい。カクテルに使用する場合特に気を使うのは搾り方によって強い苦味が出ること。しかし、この苦味を上手に使わなければならないカクテルもある。ライムは使い方によって搾り方をいろいろ変えなくてはならないから面倒である。
レモンはカクテルにはなくてはならない柑橘類であり、原産地はインドといわれている。アラビアからヨーロッパに渡り現在では温帯の南部から熱帯にかけて広く栽培されている。柑橘類の中では最も寒さに弱い。ビタミンCの含有量は果物のうちでは一番多いとされ、主産地はカリフォルニア。地中海地方の各地が有名だが、我が国でも瀬戸内海の島で少量生産されている。一個のレモンからジュースは45〜60ccくらい取れるのが普通である。カクテル用に使う場合は、この搾り方が問題。バーテンダーによってカクテルの味が違うのは、この搾り方によることが多いと言われている。また、カクテルにレモンの皮を用いるものがあるが、余程注意しないと苦い成分が香りと共に入ってしまう。搾り方は時間がたつにつれて味も香りも色も変化するので常に新鮮なものでなくてはならない。
全量ホワイトラム、1/2個分ライムジュース、グレナディンシロップ茶さじ1/2。
3/4ドライジン、1/4イエローシャルトリューズ。
1/2ドライ・ジン、1/4クレームドカカオ、1/4クリームまたはミルク。
現在ではアレキサンダーと男名で呼ばれているが、もともとはアレキサンドラと女名で呼ばれていた。19世紀の中頃、イギリス国王エドワード7世の婚礼を記念して、王妃のために捧げられたカクテルである。この王妃の名前がアレキサドラということであるが、いつのころからか分からないがアレキサンダーと呼ばれるようになってしまった。ブランデーをベースに、カカオリキュールとフレッシュクリームを配した甘口で口当たりのよい女性に人気のあるカクテルである。ジャック・レモンが主演した映画の中で、全く酒を飲めない妻にこのカクテルを飲ませる場面があった。彼女は大変お気に召してグラスを重ね、最後には夫と共にアルコール中毒になってしまう話だった。
1/2ベネディクティン、1/2ブランデー。
グラスに30mlウオッカ、タバスコ2滴、ウスターソース2〜3滴、トマトジュースで満たす。
日本語でいうと「血まみれのマリー」である。なんか血なまぐさい名前だが、よく飲まれるカクテルである。フランス革命で断頭台上に消えたマリー・アントワネットの血の色ということでなんともすさまじい名前である。このカクテル、飲む人の好みによってなかなかうるさい代物である。コショウを少々とか塩を入れろとか、タバスコソースを2滴とか、レモンをしぼれとかウスターソースをスプーン1杯入れると美味いとか。大変なものである。何とか名前のイメージを振り払いたい思いがお客にあるようである。酒を飲めない人がウオッカ抜きで注文する場合、ただのトマトジュースになるがこれを「バージン・マリー」という。
アメリカの禁酒法時代の話である。ドライジンにトマトジュースを混ぜる飲み方がはやったようである。取締官が踏み込んできても「これはトマトジュースだぜ」とごまかすためである。ジンとトマトジュースを混ぜたカクテルはブラディ・サムというが、ジンは香りが強いため見破られる危険があり、後にウオッカが使われるようになった。ジンがサムという男性名に対して、ウオッカにはマリーという女性名が付けられた。ウオッカの方が口当たりが柔らかいからだろう。だが、現在ではブラディ・サムというカクテルの名前すら知らない人が多くなった。
カクテルグラス同量ラム、レモンジュース1個分、砂糖茶さじ1杯。
ダイキリとは中米のある鉱山の名前で、ここの鉱夫達が好んで飲んでいたところからこの名前が付けられた。今では世界に広がり、ラムベースとしては最もよく知られ飲まれているカクテルである。砕氷と一緒にミキサーにかけ、シャ−ベット状にしたものをフローズン・ダイキリという。このカクテルは小説家ヘミングウェイがこよなく愛したカクテルである。
卵黄とミルクの入ったカクテル。基酒は好みにより何を用いてもよい。ロングはタンブラーの中で基酒と卵黄1個を混ぜ合わせ冷たいミルクで満たす。適量の砂糖またはオレンジキュラソーで甘味をつける。ショートは基酒、卵黄1個、ミルク30ml、オレンジキュラソー少々に氷を加え、特に強くシェークしてカクテルグラスに注ぐ。共にできあがりの上へナッツメグの粉を少量浮かす。
このカクテルは普通、冷たくして飲用されるが、冬季はミルクを温めてホットドリンクとして飲まれることもある。もともとはアメリカ南部でクリスマスドリンクとして飲まれていたものだが、現在では世界中に普及して、四季を通じどこでも飲まれるようになった。特に最近は、強精飲料として飲まれる場合も増えた。
ドライジン30ml、レモンジュース1個分、砂糖茶さじ1杯、氷、チェリー1個、レモン輪切りグラスに入れ、ソーダウォーターで満たす。ドライジンをジェネバージンに代えるとジョンコリンズ、その他ラム、ウオッカ、ウィスキーコリンズなどがある。
ラム30mlライムジュースまたはレモンジュース1/2個分をグラスに入れ、氷を加えコーラで満たす。
カクテルの名前は偶然に付けられたものが多くある。キューバ・リバーもその一つである。スペイン風に言うとビバ・クバ・リブ(自由キューバ万歳)である。スペインから独立するためのキューバの合い言葉だった。しかし、このカクテルを創作したのはアメリカの軍人と言われている。アメリカの戦艦メイン号が沈没したため、アメリカ軍がキューバに上陸し、スペインと戦争になった。8月のある暑い日にハバナに駐屯していたアメリカ軍のバーで一人の少尉がラムを注文した。彼の向かいの席で同僚の一人がコーラを飲んでいた。少尉はストレートのラムをコーラで割ることを思いつき早速実行。そして、やおら立ち上がって「キューバ・リバー」と叫んだ。これがこのカクテル誕生の瞬間である。
1/2ドライジン、1/2バイオレット、レモンジュース1/4個分、好みによって砂糖を少し。
1/2ブランデー、1/4チェリーブランデー、1/8グレナディンシロップ、1/8レモンジュース、チェリー1個。
1/2ドライジン、1/4スイートベルモット、1/4ドライベルモット、オレンジジュース(生オレンジ1/2個分または適量のオレンジシロップ)。
1/2ドライジン、1/4アプリコットブランデー、1/4オレンジジュース。
このカクテルはかつては甘口の代表のような処方になっていたが、最近は甘さが抑えられて処方される場合が多くなってきた。昔はドライジン1/3、アプリコットブランデー1/3、オレンジジュース1/3となっていたが、最近のものはドライジン1/2、アプリコットブランデー1/4、オレンジジュース1/4となっている。戦時中の砂糖不足のせいか、昔は甘い物が好まれたが、最近は辛口のカクテルが好まれるようになってきた。
オールド・ファッションドグラスに角砂糖1個を入れ、アンゴステュラビターを3〜4滴とごく少量の水またはソーダウォーターで角砂糖を少し溶かす。氷2〜3個と原則としてウィスキー30mlを加え、さらに少量のソーダウォーターで満たす。チェリー1個とレモン輪切り1片で飾り、マドラーを添える。基酒を代えればスコッチ・オールド・ファッションド、ラム・オールド・ファッションドなどになる。
このカクテルはアメリカのケンタッキー州ルイビルノのバーベンデニス・クラブのバーテンダーによって創作された。ここは有名なケンタッキー・ダービーの本場である。当然バーへは競馬ファンが集まってくる。そうした客にサービスされていたと言われている。当時はバーボン・ウィスキーにシロップやビターを加え、ミントの葉を飾って出されていた。その処方が古風なカクテル「トゥディー」に似ているところから「オールド・ファッションド」と命名された。
1/3ブランデー、1/3オレンジキュラソー、1/3オレンジジュース。
2/3ドライジン、卵白1個分、グレナディンシロップ茶さじ1杯、パイナップルジュース大さじ3杯、砂糖茶さじ1杯、氷。
このカクテルの発祥地は我が日本である。日本生まれのカクテルで世界的に有名になった代表的なものである。誕生は横浜のグランドホテル。作者はチーフバーテンダーのルイス・エビンガー氏である。飾りにパイナップルを使うのが普通である。このカクテルはまず銀座のカフェ「ライオン」が客に勧めて世に出され世界へと広まった。
1/2ウィスキー、1/2ベネディクソン。
ウオッカ30ml、ライムジュースまたはレモンジュース1個分をタンブラーに入れ氷を加え、ジンジャーエールで満たす。
このカクテルは1940年代にアメリカのハリウッドの料理店からスタートしたと言われている。このカクテルの普及にはカミノフ・ウオッカで世界的に有名なヒューブライン社が、自社製のウオッカを売り込むために並々ならぬ努力をした。社員一同がインスタントカメラを持ち、バーやレストランなどでバーテンダーにモスコ・ミュールを注文し、記念写真を写して別の店に行き「どこの店でも今最も流行しているカクテルはこれだ」と見せたそうである。こうして全米に広がり、今では世界中どこでも知らない人はいないほど有名なカクテルになった。
30mlのブランデーをタンブラーに入れ氷を加え、ジンジャーエールで満たす。このときレモンの皮を薄くらせん状に切り取り、グラスに入れ上端をグラスの縁にかける。
「馬の首」とは変わった名前だが、ダービーの本場イギリスで初めて作られたと言われている。グランド・ナショナル・ダービーで優勝したジョッキーが祝杯用にと作ったらしい。このカクテルに使うレモンの皮のむきかたがなかなか難しく、果肉と皮の間をうまくむかないと全く別の味になってしまう。
1/3ペルノ、1/3ドライジン、1/3ホワイトペパーミント。
2/3ドライジン、1/3ドライベルモット、オレンジビター1〜2滴。オリーブ1個を入れレモン皮をしぼりかける。
このカクテルは18世紀の始めにイタリアのマティーニ・ロッシという人がベルモットの製造を始め、それを売り込むためにそのベルモットを使用したカクテルをつくり、マティーニと名付けたという。これがキング・オブ・カクテルといわれるほどに飲まれるようになった。第二次世界大戦中の英国の宰相チャーチル氏は、敵国イタリアの酒なんか飲めるかとベルモットの瓶をにらみつけて自国のジンを飲んだという。これがチャーチルドライと言われるようになった。
ヘミングウェイの「河を渡って木立の中へ」に出てくるカントウエル大佐の好みは、ジンとベルモットの比率が15:1という超ドライである。これは、モンゴメリー将軍が出撃の時に1杯ひっかけたという名作である。数年前、東京の外人記者クラブに詰めていた記者達は、もっとすごい超ドライ好みだったという。この記者クラブの物置から出てきた空き瓶が何と、ジンの空き瓶161本に対してフレンチ・ベルモットの空き瓶が5本でしかなかったという。だが最近は、こうした超ドライ・マティーニよりもアンティークなマティーニの方が人気がある。
数あるカクテルの中で、最も話題の多いのは何と言ってもマティーニだが、その中で、一番話題になるのは「007」ジェームズ・ボンドがスクリーンの中で好んで飲むマティーニである。ただ、ショーン・コネリーだから格好良いが、これがロジャー・ムーアだと何となく映りが悪い気がする。このショーン・コネリーのマティーニの処方は一般的に知られている処方とはいささか違っている。3オンスのドライジン、0.1オンスのウオッカ、0.5オンスのキナリレで作られる。キナリレは滋養強壮剤で、健胃の作用もあると言われるトニック。ワインの一種。
英国の名門校ケンブリッジ大学の学生達の論文に「マティーニの比率について」というのが多く、大学側はたまりかねてこのテーマの論文の提出を禁止したという。マティーニのファンは多く、酒飲みが最後にたどり着くカクテルといわれるだけあって面白い。
2/3ライウィスキー、1/3スイートベルモット、アンゴステュラビター1〜2滴。
マンハッタンはニューヨーク市のハドソン川とイーストリバーに挟まれた島の名前である。昔、オランダ人がこの辺りを植民地にしようとして、原住民のインディアンの酋長に酒を飲ませて書類にサインさせた。この酋長はだまされたことに気づいたが後の祭り。酔いから覚めた酋長は彼らの言葉で叫んだ。「マンハッタン」と。このマンハッタンとは酔っぱらったという意味のインディアン語で、そのまま地名になったといわれている。ドライマティーニがカクテルの王様ならマンハッタンは女王様といった風格がある。このカクテルはアメリカ生まれのアメリカ育ち。生粋のアメリカのカクテルである。所はメリーランド州のある町。ホテルに一人の男が運び込まれた。この男の名前はホブキンス。ふとしたことからフランスの公使館員と決闘した。ピストルか剣か定かではないが、ホブキンスは勝つには勝ったが相手の血を見て倒れてしまった。この意気地なしの勝者を抱えてホテルのバーに入った介添人は、バーテンダーに気付け薬を作ってくれるように頼んだ。そこでバーテンダーはそばにあったライウィスキーをカクテルに半分くらい注ぎ、ビターを数滴入れてかき回したが、疲れたときには甘味がいいだろうと思いつき、シロップを入れてホブキンスに飲ませた。これで気を取り直した彼は「ワンモア」と叫んだ。このときこそ「マンハッタンカクテル」の誕生の一瞬であったとか。
1/3グリーンペパーミント、1/3ホワイトクレームドカカオ、1/3ミルクまたはクリーム。
このカクテルの名前はその色がバッタやイナゴの色によく似ているところから付けられた。白濁した緑色をしているため、何となくバッタを思い出したのだろう。非常に爽やかなカクテルで、一口飲んで思わず「おはようございます」と言いたくなる味である。毎朝歯を磨くときの味に似ているがこのカクテルのファンは多い。昔はリキュールグラスにホワイトカカオを入れ、その上にグリーンペパーミントを静かに注いだ。そうするとカカオの上に上澄みができ、さらにその上に生クリームを注ぐときれいに三色に分離する。これが原形だが、次第にシェークされるようになり、現在のスタイルになった。
3/4ドライジン、1/4ライムまたはレモンジュース、砂糖茶さじ1/2。
レイモンド・チャンドラーの名作「ロング・グッドバイ」に登場するカクテルである。クラブ「ダンサーズ」で酔いつぶれているテリー・レノックス。よれよれの服を着て4、5日ひげをそらない顔はかつてのテリーの面影はなく残骸のようであるが、それでいていやに礼儀正しく異様なまでのプライドを持っている。そんなテリーにフィリップ・マローはひかれていく。まだ店を開けたばかりのカウンターでテリーがギムレットを飲む。このカクテル、能書きの多いことではマティーニにひけをとらない。ジンの種類からライムジュースの種類、またその調合割合などうるさいが、原形はジンに生ライムを搾って強くシェークしたもの。
いわゆる五色の酒。この他、七色(レインボー)、三色、二色などがある。それぞれわずかずつ比重の異なる糖分を含むリキュールなどを加える。
このカクテルは明治45年の新聞に載っている。「新しい女 五色の酒を飲む」という記事である。新しい女とは平塚らいてう女史を中心とした雑誌「青鞜」の女性達のことである。この雑誌の編集者の一人が東京最初のカフェの広告を取りに行ったとき、店の主人が「フランスの流行だ」と言って「五色の酒」を差し出した。大いに感激したこの女性は、それを「五色につぎ分けたお酒をむぎわらの管で飲んだ」と記事にした。世の男性達をしり目にした「青鞜社」である。その彼女達が五色の酒を飲んだ、女だてらに酒を飲んだ−と大騒ぎになったという。
クレームドカカオの上にクリームまたはミルクを浮かす。
2/3ドライジン、卵白1個分、グレナディンシロップ茶さじ1杯。
このカクテルは1912年英国ロンドン生まれの名前に似ず強いカクテルである。この年「ピンク・レディ」というドラマが上映され大ヒット。その最後の夜、関係者は大盛況の打ち上げパーティーを開いた。その時、このドラマのヒロインを演じたヘイルズ・ドーン嬢にささげるために創作されたカクテルである。女性の好みそうな名前がついているので、下心のある男性がよく注文するカクテルでもある。
1/3ドライジン、1/3ウオッカ、1/3クレームドカカオ。
2/3ブランデー、1/3コアントロー、レモンジュース1/2個分。
第一次世界大戦で敗色濃厚なドイツ軍がフランスの片田舎を敗走中のことである。サイドカーに乗った兵隊の一軍が砂煙を上げて走っていた。疲労しきってどこかで一服と思いつつ行くうちに、とある修道院らしい所にたどり着き、どかどかと入っていった。彼らはブランデー一瓶を持っていたが人数が多いので少量ずつしか飲めない。その頃修道院ではコアントローという甘い酒を作っていたので、それをブランデーの中に入れ量を増やした。ついでに、そばに積まれていたレモンを片っ端から搾り入れてやっとグラス一杯ずつの混成飲料を作り、のどを潤すことができた。このカクテルが非常にうまくて彼らが気に入り、「何かいい名前を付けよう」ということになり、彼らの乗ってきた車にちなんで「サイドカー」と名付けられた。今では世界中で最もよく飲まれるカクテルに数えられている。ちなみにコアントローの代わりにホアイトキュラソーを使うこともある。
タンブラーにドライジン30ml、ライムジュースまたはレモンジュース1/2個分を入れ氷を加えソーダウォーターで満たす。ドライジンをウオッカに代えるとウオッカ・リッキーになる。
本物は生のライムを半分に切ったものを使用する。このライムがくせ者で、ただ入れればいいのではなく、少々手を加えなくてはならないため非常に気を使う。この、手の加え方によって独特の苦味と酸味が出て、サッパリとした飲み物になり、特に夏場の清涼感は特別である。我が国では、鹿鳴館時代に一部で愛飲されていたという記録があるから、相当古くから飲まれていたようである。
1/2ドライジン、1/2コアントロー、レモンジュース1個分。これに卵白1個分を加える作り方もある。
貴婦人を思い出させるようなネーミングのカクテルである。その名のとおり真っ白に仕上がり、爽やかな出で立ちである。しかし、簡単には真っ白に仕上がらないからバーテンダーには腕の見せ所。普通につくると無色に近く、多少濁った仕上がりになってしまう。純白にするには少々コツがいる。英国はロンドンの「シローズクラブ」のチーフバーテンダー・マッケルホーン氏の創作と言われている。最初はホワイトペパーミントが使われていたが、途中でベースがドライジンに変更されたという。それから世界に広まり、今では全世界で愛飲されている。ネーミングから女性の注文が多いが、「少々度数が高いので」と一言付け加えておいた方が無難である。
2/3ブランデー、1/3ホワイトペパーミント。
ドライジン30ml、砂糖茶さじ1杯、レモンジュース1/2個分に氷を加え、ソーダウォーターで満たす。
フィズとは「シュー」という炭酸水の音を意味したのが語源と言われている。一般的にジンをベースに甘味、酸味を加えてシェークし、ソーダ水で割って8オンスタンブラーに入れて供する。甘味には砂糖を、酸味にはレモンジュースを用いるのが普通である。チェリーなどの飾りは入れないのが本来のスタイルだが、我が国ではチェリーを入れることが多いようである。このジン・フィズが実は非常に難しいカクテルである。バーテンダーになるための卒業論文でもある。これの美味い店は、他のカクテルも大体うまく作ってくれると思って間違いない。
このカクテルは1888年、アメリカ・ニューオーリンズのインペリアル・キャビネット・サロンのチーフバーテンダー、ヘンリー・ラモス氏によって世に出されたと言われている。このラモス氏は研究熱心なバーテンダーで、他にも数々のカクテルを創作しているが、中でも「ラモス・ジン・フィズ」というのはすごい人気で、夏場のニューオーリンズの店には35人のアルバイトを投入してこのカクテルを作るほどの盛況ぶりだった。現在では、幻のカクテルと言われ、このカクテルを作れる店はほとんどないと言われている。真っ白な仕上がりに甘い香りはまさにサマーカクテルの逸品である。
ブランデーを冷やしたジンジャーエールで割る。
ジンフィズに卵白1個分を加えたもの。
ドライジン30mlを冷やしたトニックウォーターで割る。ライム輪切り1片を加える。
このカクテルに使われるトニックウォーターという炭酸飲料は甘味と苦味が少しあり、ジンやウオッカなどとよく合う。苦味は少量の規那皮(アカネ科の常緑高木の総称・解熱剤に使用)が加えてあるためである。このトニックウォーターは英国がインドを植民地としていた時代にマラリアの流行に手を焼き、その薬として規那皮を用いたが、何とか飲みやすくしようと少量の甘味を加え、ミネラルウォーターの中に溶け込ませたのが始まりである。英国人が持ち込んだジンをこれで割って飲んだところ、大変口当たりがよく美味かったために、今では世界中に広まった。解熱剤もとんだところで名を成したものである。このようにカクテルに使われる飲料には、酒も含めてもともと薬用として使われたものが多くある。ちなみにカクテルの香料に使われるビターなども元は腹痛の薬で、日本語に訳して「健胃苦味酒」と書く場合もある。
ジンフィズにバイオレットリキュールを10ml加える。
ジンフィズにアプリコットリキュールを10ml加える。同様にしてカカオフィズ、コアントローフィズ、メロンフィズ、ミントフィズなど各種のリキュールを加えて多様なロングドリンクをつくることができる。
シルバーフィズの卵白の変わりに卵黄を用いたもの。
よく飲まれるカクテルで酸味の強い爽やかな飲み物である。一般的には蒸留酒をベースにしてレモンジュースと少量の砂糖を加えて作り、サワーグラスに入れて供されるが時によってはカクテルグラスを用いることもある。このカクテルはどこの店でも作られるごく一般的なカクテルだが、今のバーテンダーは全く別のカクテルにする人がほとんどだ。例えばウィスキーサワーがジョンコリンまがいになったり、ジンサワーがジンフィズまがいになったりしてしまう。このサワーはなかなかくせもので、シェーカーの振り方が非常に難しい。暑い季節には欠かせないカクテルの一つである。
カンパリを好きになるには三回飲めという言葉があるが、これからカンパリを飲むならカンパリオレンジを最初に飲むといい。カンパリ1に対してオレンジジュース2の割合で注ぎ、氷を入れてよくかき混ぜるだけの簡単なカクテル。オレンジジュースの代わりにグレープフルーツジュースやクランベリージュースで割ってみるのも美味しい飲み方の一つだ。第二はカンパリソーダ。氷を入れたタンブラーにカンパリを注ぎ、ソーダを加える。1対1の割合がよいがカンパリの量は好みによって増減すればよい。ここまできたら次はオンザロックだ。カンパリのオンザロックはシェーカーを使うといい。よくシェークするのがコツだ。ピンクの泡のようになるまで強くシェークしてストレーナーを返してグラスに注ぐと丸みがでて美味い。
ゴルファーにとってホール・イン・ワンは夢。そこでせめてその夢をバーのカウンターの上のグラスの中で実現させてみようということでホール・イン・ワンというカクテルがゴルフの最も盛んなアメリカで創作された。ウィスキーベースにベルモットで味を引き締め、レモンジュースとオレンジジュースを少量配して香りを付けソフトにしたものだ。ゴルフ好きの方に一度は口にしてもらいたいカクテルである。
ギブソンは数あるカクテルの中でも唯一禁酒主義者が考え出したカクテルという伝説めいた飲み物である。ある国へアメリカの大使として着任したギブソン氏は酒を1滴も飲まない禁酒主義者であったが、着任の歓迎カクテルパーティーに出席しなくてはならなかった。彼は酒も飲めないつきあいの悪い男だと思われたくなかったし、そんなことで大切な外交問題がこじれてもいけないと思案の末、一計をめぐらした。ギブソン氏はパーティーの席でウェイターにカクテルグラスに水を入れるように命じ、目印にパールオニオンをつまようじに2個さしてもってこさせ、さもカクテルを飲んでいるかのように振る舞った。現在ではドライマティーニと並んでカクテルパーティーの主役を務めるジンベースの強いカクテルである。
このカクテルは一昔前に女性を酔わせるためのカクテルとしてあまりにも有名になった。ウオッカをオレンジジュースで割ったカクテルでねじ回しという意味。ウオッカは無味無臭に近い強い酒だからジュースなどに入れると酒の味が消えてしまい、しかも強い。女性を酔わせるにはもってこいというわけだが、最近の女性はこんなことは先刻ご承知だ。女性の酒飲み人口は急上昇している。いまどき、女性連れでバーに来て「スクリュー・ドライバーを」などと言うと何と古い人かと笑われるのがオチ。このカクテルはオレンジジュースをそのまま飲むのは味気ないとウオッカを入れ、さてかき混ぜようとしたが道具がないので側に置いてあったドライバーで混ぜ合わせた。それを見た友人が「それ何」と飲み物のことを聞いたのを勘違いして「スクリュー・ドライバー」と答えたことからこの名前が付けられた。カクテルの名称にはこうした勘違いの名前が多々ある。
日本酒を使ったカクテルは最近、随分普及してきたようだが、まだまだ一般的ではない。最近の若い女性の飲酒の好みをみると冷酒を飲むと答えた人が多く見られる。しかし、日本酒の麹の臭いがどうも苦手という声もある。この香りは日本酒のよさでもあり欠点でもあるようだ。そこで登場してきたのが日本酒をベースにしたカクテルだ。サムライロックもその一つだが何のことはない、日本酒のオンザロックに、臭いを消すためにライムをしぼり込むだけのものである。このほんの少しのライム果汁によって日本酒が全く別の飲み物に変わってしまう。最近では外国人にも喜ばれているカクテルである。
このカクテルは日本酒をベースにしたものである。マティーニで使うドライベルモットを清酒に代えるだけのことだが、ジンのもつあの独特の香りと清酒の香りがほどよくマッチしてしているユニークなカクテルだ。デコレーションにはオリーブを入れるが、オンザロックスタイルにして青梅を入れると和風スタイルとなり一風変わった感覚で楽しめる。
カマアイナとはポリネシア語で「土地っ子」という意味。このカクテルは処方が非常に難しくバーテンダーの腕の見せ所である。普通のシェークの技術ではとてもできない。下手をするとカクテルが分離して見た目にも味の面でもとても飲めたものではない。レモンジュースに牛乳を入れて混ぜると牛乳が分離してしまうのは誰でもご存じ。カマアイナはドライジン、ホワイトキュラソー、レモンジュース、ココナツミルクをシェークして炭酸飲料で満たす。ココナツミルクが手に入らなければ牛乳を少し加工すればほとんど同じように出来上がるが、相当に自信のあるバーテンダーでもきれいに仕上げるのは難しいカクテルである。
第二次世界大戦中の日本の神風特攻隊から付けられた名前だが、苦味が舌に残るかなり辛口のカクテルである。ウオッカをベースにホワイトキュラソーを少し注ぎ甘味を隠し味程度にしてライムで味を引き締め手早くシェークしてロックグラスに氷と一緒に豪快に注ぎ込むと出来上がり。鋭い切れ味が楽しめる。その切れ味の鋭さが特攻「カミカゼ」の鋭さを思い出させるのかもしれない。このカクテルは日本製ではないのが愉快だ。太平洋戦争中に日本の特攻隊によって散々痛めつけられたアメリカ兵が作りだして命名した。日本の特攻「カミカゼ」の鋭い攻撃がよほど頭にこびりついたのだろう。
このカクテルは黙って出されたらどうやって飲むのかわからないだろう。小さなグラスの中にブランデーを入れて、グラスの上にレモンの輪切りを乗せてその上に砂糖が山盛り。お客は自分の口の中にまず砂糖が乗ったレモンスライスをほうりこみ、強くかみしめて砂糖の甘さとレモンの酸味がほどよく感じたところを見計らって一気にブランデーを流し込み、口の中でぐるっと回せば出来上がり。そのまま胃袋へ直行というカクテルだ。味はサイドカーに似ているが、このカクテル専用の小さなブランデーグラスまで用意されている。
1920年1月17日午前零時以降14年間、アメリカは禁酒法の時代に入った。それまで酒場のカウンターを守ってきたバーテンダーは失業の憂き目に遭ったが、かえって世界中にバーテンダーが職を求めて飛びだし、アメリカで発達したカクテルが全世界に広がる結果になった。この禁酒法の時代にピッツバーグ市のバーテンダー、ビリー・マロイによって創作されたカクテルにオレンジ・ブロッサムというのがある。当時の粗悪な密造ジンは臭いがひどかったからこれを消すために考えられたのが始まりだ。このカクテルをオレンジジュースだとごまかして禁酒法をかいくぐろうとした、民衆の知恵から生まれたカクテルだ。
二日酔いの防止法としては、飲む前にチーズやバターを食べるとか、肉類や豆類のようにタンパク質を多くとるとよいようだ。また飲み始めたらハチミツや甘い果物などで糖分を多くとることも体のためにはよいようだ。こうした条件を全て含んだ飲み物がこのカクテルだ。ウオッカをベースにキュラソーを少々、それに糖分をたっぷり含んだパインジュースを加える。さらに高タンパクの卵白を加える。これを強くシェークしてグラスに注げばできあがりだが、シェークを十分にしないとうまくできない。このカクテルはアフリカのガーナで創作された。アンバサダーホテルのチーフバーテンダーのダスターブ・ミンクという人の作と言われている。
このカクテルは第一次世界大戦中にフランス・パリのあるバーで作られたといわれている。その当時、フランス軍に威力が強くドイツ軍を散々に悩ませた口径75ミリの大砲があったが、その大砲の名前がこのフレンチ75である。勇ましい名前が付けられているが、当時のフランスでは救世主的な大砲だったために大いに受けたようだ。ジンフィズの代わりにスパークリングワインを使ったものと思えばよい。よく似たカクテルにダイヤモンド・フィズというのがあるが作り方がほんの少し違っている。このカクテルが出た後「フレンチ95」が創作されたが、これはバーボンウィスキーがベースになっている。さらにブランデーベースの「フレンチ125」が創り出された。
創作者は究極のカクテルの意味で作ったのだろう。このカクテルはホワイトラム1/2、ホワイトキュラソー1/4、レモンジュース1/4をシェークしてカクテルグラスに注いだものだが、分量を間違えると別のカクテルになってしまう。ホワイトラム2/3、ホワイトキュラソー1/3、それにレモンジュースをバースプーン1杯加えてシェークすると「マイアミ」というカクテルになる。ちなみに「マイアミビーチ」はウィスキーをベースにした全く別物のカクテルである。
タンブラーの口にレモンの切り口を当てて回して湿らせ、塩を広げた皿の上に伏せて塩を付ける。いわゆるスノースタイルにしたグラスに氷を入れてウオッカを注ぎグレープフルーツジュースで満たし軽くステアして出来上がり。このソルティ・ドッグという名前は、イギリスで船の甲板員をさすスラング。彼らはいつも波のしぶきを浴びて働いているから体に塩気を帯びており「しょっぱい奴ら」と呼ばれていた。最初イギリスではジンをベースにして作られていたが、アメリカに渡ってからはウオッカをベースにしてつくられるようになった。アメリカではソルティ・ドッグというのはプレイボーイという意味にも使われるらしい。
マリリン・モンローの並ではないお尻の振り方のモンロー・ウオークは有名である。これには、彼女のハイヒールのかかとに秘密があったという説がある。片方のかかとが高くなっていたためだという。酔っぱらったような感じのする歩き方だった。このモンロー・ウオークから考え出された「マリリン・モンロー」というカクテルがある。ウオッカ・マティーニに色つけしたカンパリを入れたピンク色の強いカクテルである。あまりの強さに1杯飲めば「モンロー・ウオーク」よろしく歩くことになるようだ。
何となく古いイメージのするカクテルだが一番ポピュラーなものである。ウィスキーをソーダ水またはジンジャーエール、サイダー、水などで割ったものだ。我々が飲む「水割り」もハイボールの1種である。日本でハイボールを注文するとウィスキーのソーダ割りにレモンスライスを入れて出す店がほとんどだが、イギリス人はスコッチウィスキーの特徴ある香りや味を殺さないために水割りを、アメリカ人はソーダ割りを好む。調整は普通、まず氷をグラスに入れ、次にウィスキー、ソーダ水または水の順に注ぐ。バースプーンでかき混ぜないで自然に混ざるようにするのが基本だがバースプーンを用いるときはスプーンを入れてグラスの底を軽くたたく程度にとどめるのがよい。レモンスライスなどはベースのウィスキーの味を殺すので用いないのが原則である。このハイボールという名称の由来は諸説あるが、代表的なものは、昔イギリスのゴルフクラブでウィスキーを飲んでいるところへゴルフボールが飛び込んだところから付けられたという説。また、バーでこれを飲むと値が高くぼられるので「ハイぼる」それが転じて「ハイボール」になったというまことしやかな説もある。かつてはよく注文された飲み物だが最近では注文もめっきり減り、「水割り」が主流となった。
南国のオレンジ色に染まった夜明け。まさに太陽が昇ろうとしている光景から名付けられたのがテキーラ・サンライズ。足の付いた細長いフルート形のグラスにテキーラとオレンジジュースを入れて軽く混ぜ合わせてから静かにグレナデン・シロップを注ぐと比重の重いシロップが底に沈む。上部はオレンジ色で下の方は真っ赤。まさにサンライズである。このカクテルはメキシコで考えられたもの。このカクテルが世界的に有名になったのはイギリスのロックグループ、ローリングストーンズがメキシコ巡業中にこのカクテルを知り、大変気に入ったのがきっかけ。その後、ローリングストーンズが行く先々のバーでこのカクテルを注文、世界中に広がった。現在ではマルガリータとともにテキーラベースのカクテルの代表格の席をキープするまでに普及した。
このカクテルは白ワインとクレームドカシスというリキュールを混ぜ合わせたものだが最近になって白ワインの代わりにスパークリングワインを使用したキール・ロワイヤルというカクテルが有名になった。このキールという名前はフランスの代表的なワインの産地ブルゴーニュ地方の中心都市ディジョン市の市長だったキャノン・フェリックス・キール氏の名前にちなんでそう呼ばれるようになった。このディジョン市は白ワインの他にカシスの特産地でもある。キール市長はこの両特産品を世界に広めようと考え、このカクテルを作った。ディジョン市で行われる公式のレセプションには必ず提供されることになり、今では思惑とおり世界中に広まった。
アイリッシュウィスキーを入れたホットコーヒーでこれも一種のカクテル。発案者はアイルランドの首都ダブリンのシャノン空港ラウンジのバーテンダー。ダブリンは北緯45度あたりで冬季は厳しい。このバーテンダーがホットコーヒーに特産のアイリッシュウィスキーをいれてサービスしたところ大変に喜ばれ大西洋横断便の乗客がアメリカに持ち込みそこから世界中に広まった。使用する砂糖は赤ザラメと決められている。もちろんアイリッシュウィスキーを使用、量も30ccと決まっている。
真っ赤なカクテルとして有名になったこの飲み物。ほろ苦さにジンの爽やかさがミックスされた見た目に鮮やかなカクテルである。氷を入れたロックグラスにスイートベルモット、カンパリ、ドライジンを注ぎステアしてオレンジスライスを飾れば出来上がりだ。このネグローニというのはイタリアの名門カミーノ・ネグローニ伯爵に由来している。この紳士は岐阜市と深い友好関係にあるフィレンツェのあるレストランの常連でこのカクテルアペリティフとして愛飲、この店のバーテンダーによく作らせていた。そこでこのバーテンダーは、このカクテルをネグローニと命名し、伯爵の許しを得て1962年世界に発表、一躍有名になった。
A・1という言葉は最高とか超一流とかの意味に使われる。第一等級の船舶という意味で使われることもある。こうしたA・1の船上パーティーで飲むために創作されたカクテルがA・1。このカクテルの名前は全世界のカクテルブックの最初に必ず出てくる栄冠を勝ち取ったという意味で大したものである。
トロピカルカクテルの一つである。大きめのブランデーグラスに乳白色のカクテルをいっぱいに注ぐ。チ・チの本来の意味は「気取った振る舞い」「上品」「おしゃれ」という意味のようだが、ハワイでは「ガヤガヤ騒ぐ」というような意味でも使われているようだ。ココナッツミルクにパインジュースで甘味を加え、ウオッカをベースにしてつくる案外強いカクテルである。ウオッカを入れないただのジュースをバージンチ・チという。
カクテルグラスの縁に砂糖をスノースタイルという手法でまぶして「雪」を表現し、淡いグリーン色の中にグリーンチェリーといわれる緑色に着色されたサクランボを入れて作る。見た目にも楽しい爽やかな味のカクテルである。かの文豪川端康成が小説「雪国」でノーベル文学賞を受賞した時に考え出されたカクテルである。
熱い酒にバターを入れてよくかき混ぜた白色のカクテルである。寒い日にケーキ作りの職人が体を温めるために考え出したものであろう。冷え切った体を温めるにはもってこいのカクテルである。
先ごろ、国立ロシア民族オーケストラが来日。この演奏会で特に目だった楽器があった。木製の扁平三角形の胴に響孔があり、三画ギターのような格好をした三弦の楽器だ。これが有名なロシアの楽器バラライカである。ウオッカの国にふさわしい音色だ。バラライカはもともと農民の歌舞伴奏用だったというからウオッカを飲みながら弾いて歌い、踊り、村祭りを盛り立てたことだろう。こうした風情を思い出すカクテルにバラライカというのがある。ウオッカにレモンを搾ホワイトキュラソーでまろみをつけた真っ白の爽やかなカクテルだ。
一派的には大きな氷を入れたパンチボウルに大量に作って各種のパーティーなどでパンチグラスによって飲まれることが多い。このパンチという混成飲料は古代、インドから始まったと言われている。サンスクリット語のパンチャから出たもので数字の五という意味である。現在でもヒンズー語で五のことをパンシュという。言葉の意味のように五つの材料を混ぜ合わせたカクテルである。原形はスピリッツ、水、砂糖、レモンジュース、スパイスなどをミックスして作られることが多いが、現在では五種に限定せず作り方は多様である。豪華なガラス製のパンチボウルの回りを花で飾り、テーブルにセットされた飲み物をスプーンでパンチグラスに注ぎ入れて飲むムードはパーティーにはなくてはならない華やかな彩り。主催者の演出方法として欠かせない。
ミントというのはハッカのことだが、シソ科の植物で世界中に多くの種類が自生している。口の中に広がる清涼感はどなたでもご存じのとおり。このミントの葉を飾ったカクテルがミント・ジュレップである。ジュレップというのは昔、ペルシャあたりで飲みにくい薬の補助に使用されていた甘い飲料のことをいうのだが、これがアメリカに渡って気分を爽快にする飲み物の名前に使用されるようになった。それがカクテルにも使われだしミント・ジュレップになった。
ジュレップはカクテルの元祖的な混成飲料の一種で、三百年以上の歴史があり、現在でも世界各国の有名ホテルやレストランで珍重されている。普通はウィスキーミストといわれる飲み物にミントの若葉を使用して作られるが、アメリカなどでは、ウィスキー、ブランデー、その他のスピリッツを混ぜ合わせ砂糖で甘味を加えて作られることが多い。所定のグラスにクラッシュドアイスを入れ、別のグラスで調製したジュレップを入れて作る。
このカクテルは、普通飲まれる鼻にアルコールの臭いがつんとくる湯割りウィスキーではない。このカクテルはバランスの難しい飲み物で上手に作ると鼻につくあのつんとした刺激臭はなくまろやかな香りにほのかな甘味がミックスされたまさに冬のカクテルの王様といえる。
日本名が付けられ、世界中にその名が知られているカクテルである。しかし、日本のバーで創作されたものではないらしい。横浜に寄港する外国の客船のバーで創作された思われる。ドライジンとウオッカ、それにアブサンを少々注ぎオレンジジュースで味を調え、グレナデンシロップで色つけし、カクテルグラスに注ぐ。赤みがかったオレンジ色の飲み物は遠い異国の港町横浜にぴったりのイメージである。
このカクテルは戦後いち早く日本に上陸したもので、当時の米軍兵士たちが好んで飲んだものだ。元来のスリングというカクテルはホットとコールドがある。かつて飲まれたのは上にナツメッグを浮かせたホットに限られていたが、戦後はコールドが一般的になってきた。蒸留酒にグレナディンシロップやチェリーブランデーなどで甘味を加え、水で割ってタンブラーにレモンを搾りかけて飲むのが一般的だったが、現在では水の代わりに炭酸水などを用いるようになった。シンガポール建設の父とも言われるサー・トーマス・S・ラッフルズの名前から付けられたというラッフルズホテルで制作されたシンガポール・スリングが一番有名だ。ジンフィズにチェリーブランデーを入れたきれいなカクテルである。
ブランデーをベースにホワイトラム、ホワイトキュラソーでほんのり甘味を加え、レモンジュースで酸味と香りをほのかに付けたもの。ネーミングのよさから人気がある。しかし、この名前どこで誰が何を意図して付けたのかは定かではない。
このカクテルの名前はスペイン語で、英語ではザ・プレジデント。このカクテルはメキシコにあるエル・プレジデンテ・ホテルのオリジナルカクテルとして作られた。今では世界中で飲まれるようになったが、同じネーミングのカクテルがフランスはパリのクーボール・バーからも出ている。前者はオレンジジュースを使ってフルーティーに仕上げられているが、クーボール・バーはパリジャン好みにさっぱりとまたほんのりと赤みがかかったなかなかおしゃれな仕上がりである。このカクテルは1993年には日本で一番多く作られたはずである。なぜなら、日本バーテンダー協会のカクテル競技・技術部門の指定カクテルとなったためである。
あまりにも悲しい恋の物語。その無念さを一杯のカクテルに託したのがかの名作マルガリータ。テキーラベースのマルガリータは1949年の全米カクテルコンテストでロサンゼルスのレストラン「テール・オ・コック」の名バーテンダー、ジャン・デュレッサーが発表した創作カクテルで、これによって同氏は見事優勝した。このデュレッサー氏の若き日の思いで。ある日、狩猟好きの彼女と二人で鴨撃ちに出かけた。不幸なことに彼女は流れ弾にあたり、デュレッサー君の腕の中で息絶えた。彼女の名前はマルガリータ。彼女を思う一念から創作カクテルに命名、そしてキング・オブ・カクテルの座をマティーニから奪った。メキシコの片田舎の地酒に過ぎなかったテキーラもマルガリータによって世界的な名酒に高められた。
第二次世界大戦後、日本で開発されたリキュールにメロンリキュールというのがある。果物の王様マスクメロンから作られるリキュールで不思議なことにこれが純日本製だから面白い話だ。メロンの色と香りをスピリッツに移した色・香り・味の三つがそろった甘口のとても美味しい酒だ。このリキュールの出現でカクテルの幅は大きく広がったようだ。このメロンリキュールはサントリーがアメリカで「ミドリ」という商品名で発売、人気リキュールとなった。全米カクテルコンテストで一席になったカクテルにこの「ミドリ」を使って作られた「ミドリ・マルガリータ」という素晴らしいカクテルがある。マルガリータのバリエーションカクテルだが、面白いことにアメリカでは「ミドリ・マルガリータ」と言われるのに対して、日本では「グリーン・マルガリータ」という。
梅の花が香り、桜の季節へと春の足音が聞こえてくる頃、三寒四温の例えのように、時ならぬ寒さに体が縮こまる日がある。せっかく芽吹いた木々にうっすらとかかる春の雪。そんな風情をイメージして創作されたのがこのカクテル「春の雪」である。四季がはっきりしている日本ならではの味わいである。ベースには日本酒が配されている珍しいカクテルだ。その上、日本を代表するリキュール「グリーンティー」が風味を引き出している。淡い緑色のカクテルの上に、春の雪よろしく白い泡立ちがよくマッチしている。サントリースクールの花崎一夫専任講師のオリジナルカクテルだが、今では日本中にその処方が紹介されている。清酒50%、ドライジン30%にグリーンティーリキュール、レモンジュースを足し、手早くシェークするとクリーミーな泡がきれいに浮き上がる。
ミモザはこの世で一番贅沢で一番美味しいオレンジジュースと言われているシャンパンを使ったカクテルである。出来上がりがきれいなミモザの花の色に似ているところから名付けられた飲み物である。シャンパンとオレンジジュースを半々に大型のワイングラスに入れれば出来上がり。もともとはフランスあたりの上流階級で愛飲されていたものだ。フランス語で「シャンパン・ロ・ランジェ」と呼ばれ、英語では「バックス・フィズ」と呼ばれることもある。
英国のパブなどで大いにうけているビールのカクテルである。ビールとジンジャーエールを半々に混ぜ合わせたものである。またサイダーのような炭酸飲料を使うとパナッシュ、トマトジュースで割ればレッド・アイという。
サントリーが開発したリキュールに春の王様・桜の色香をそのままそっくりうつしとった「クレーム・ド・サクラ」というのがあるが、このリキュールを使った「早春譜」というネーミングもぴったりのカクテルである。まずオンザロック用のグラスに氷を入れる。ドライジン30ccとサクラリキュール30ccを注ぎ入れて、バー・スプーンでよくかき混ぜて出来上がり。桜の色とその香りを楽しむために、桜の花びらを2〜3片浮かせてみるのも面白い。
ウィスキーをベースにしたリキュールの中で、最も歴史の古いものにドランブイという有名な酒がある。はちみつと種々の薬草を使って製造されるらしいが、製法は極秘になっている。このカクテルはこのドランブイとウィスキーをミックスしたものだ。ウィスキー40cc、ドランブイ20ccを氷を入れたロックグラスに入れてバー・スプーンで混ぜれば出来上がり。このカクテルにオレンジビターを2滴落としミキシンググラスで混ぜ合わせてカクテルグラスに注ぎ、レモンの一片を指でつまんで搾り入れればスコッチ・キルトというカクテルに変身する。スコッチ・キルトというのはスコットランド人の男性用礼装スカートのことである。ちなみにラスティ・ネールとは英語で「古びた」という意味である。
アメリカ映画「風と共に去りぬ」のビビアンリーの演ずる少々強気の娘がスカーレット・オハラだ。この娘さんの名前を冠したカクテルである。アメリカ生まれのサザンカムフォートというリキュールをベースにした淡赤色の鮮やかな美しいカクテルでサザンカムフォートにクランベリージュースの味がよくマッチしている。甘口だけに女性ファンが多い。サザンカムフォートの製法もこの種のリキュールの製法が秘法となっているように明らかにされていないが、バーボンウィスキーがベースになっているようだ。
カルーアコーヒーリキュール45cc、生クリーム15ccを準備し、氷を入れたロックグラスの中にカルーアを注ぎ生クリームを静かにフロートする。若い女性の間でかなり人気が高いカクテルである。コーヒー牛乳を思わせる甘く懐かしい風味で飲み口がよく、アルコール度が簡単に調節ができるため人気が高いのかもしれない。牛乳は家庭でも常備されていることが多いので、気軽に作ってみることをお勧めする。女性殺しカクテルの代表格でもあり、アルコール度数は低めながら、このおいしさにつられてコーヒー牛乳と同じライトな感覚で飲んでいると、席を立ったときに足がぐらつくかも。