| それじゃぁね Spica 長い廊下を突き抜けると 母の病室があった。 癌の疑いがあります 手術します そう先生にいわれて3年 入退院を繰り返し 5回目の長かった手術も ようやく終わった。 何か欲しいものは? 何か辛いことは? と私が母に尋ねても 何もいらないな。 別にないな。 いつも笑って答えた母。 桜吹雪の舞う季節 母は私を病室に呼んで こういった。 それじゃぁね 私そろそろお迎えがきたの あなたも元気でいてね。 最後にそう言って 母は他界した。 病室から見た月が 綺麗な夜だった。 生前母は、よく口ずさんでいた。 春のうららの隅田川 子供の頃 母と手をつないで 連れられた花火大会。 ごめんね。杏里。 おとうさん欲しいだろうねぇ 母は歩きながらそういった。 いらないよ 私。お母さんいるから 私は綿菓子を食べながら そう答えったっけ。 今年の隅田川の花火も 昨日ようやく終わった。 私の目の前で、子供が親に ちぎれるように手を振っていた。 それじゃぁね。 |
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