今回の『おもてなし』は、
《エンジョイ!松葉杖ライフ》です


強烈に痛い・・・ということ
ある晩、両手にいっぱいの荷物を持って
スタスタ歩いていたら、
転んだ。
最初はなにがなんだかわからなくって、
つぎに、
強烈に痛くなった。

強烈に痛いときっつーのは、
体のどこが痛いか認識するまでに、
若干の時間を要するものらしい。

すこし落ち着くと
メインは、左の足首と、右の膝だということがわかった。

強烈に痛いときっつーのは、
声がでないものらしい。

痛いと言えば、思い出されるのは、
テレビで見た陣痛の風景。
ドラマなんかだと、うなっていたりするけれど、
あれは、嘘だ。たぶん・・・
迫真の演技をするなら、声はでないはずである。

なーんてことを考えたのは、
ずいぶんあとになってからだったけど・・・
私と捻挫
私の左足首は、
昔から、何度も捻挫に見舞われている。

体操で着地した瞬間グキッ!
足元に段差があることに気がつかずにグキッ!
雨の日の階段で足をすべらせてグキッ!
ヒールのある靴で闊歩していてかかとが壊れてグキッ!

もう、回数が多すぎて、
いちいち思い出せない。

捻挫は、歳を追うごとに、
なぜか重症になる。
足腰弱っているのか・・・

しかし、なぜだか、
いつもじん帯を痛めるだけ。
見た目に激しく足首がゆがんでいても、
病院へ行くと、先生が笑顔で、
「骨は大丈夫です」
とおっしゃる。
きまって、さわやかな笑顔である。
骨が無事でも、患者は痛いのに、
なぜだか、先生は、笑顔になるのだ。

しかし今回は・・・
「骨にひびって感じですね」

・・・

ついに、やらかしてしまった。
骨を痛めることとじん帯を痛めること
確かに
今までの捻挫の経験と比べてみて、
最初から様子が違っていた。
痛い場所も
腫れ方も
皮膚の色も
そして、痛さそのものも・・・

おまけに熱まで出た。

ちょっとした振動があるだけで、
飛び上がるほど痛い。
しかし、ほんとにそこで飛び上がると、
もっと痛い。
咳をしてもくしゃみをしても
なぜか、左足首が痛い。

痛み止めがないと
寝られない日が数日続いた。

このまま、ずっと続くのかと、嫌気がさし始めた頃、
突然、めきめきと良くなった。
腫れがひき、
痛みも激的に良くなって、
動かせるようになった。

しゅげー!

そして、松葉杖をはずして、
3週間ぶりに
気分良く街を歩いてみた。

また、コケた。

・・・

病院へ行ったら、
「骨は大丈夫です」
と、さわやかな笑顔で言われた。
そして、
「まだ松葉杖はずさないで下さいね」
と念を押された。

今度はお得意の捻挫である。
余裕をかましていたら、
こいつは、手ごわい。
なかなか治らないのである。
あるところまで回復すると、そこから先が
なかなか治らないのである。

以上が、個人的経験に基づく、
骨を痛めた場合と、じん帯を痛めた場合の、
治り方の違いである。
松葉杖のアフォーダンス
少し回復してから、
松葉杖で街に出るようになった。

なんと言っても、天下御免の
右足包帯ぐるぐる巻きの松葉杖姿である。
「私は社会的弱者です!」
とアフォーダンスしまくりの姿のはず。

そうたかをくくっていたのが、
間違いだった。

世の中そんなに甘くない。
っていうか、渡る世間は鬼ばかり・・・である。

だれも、よけてくれない。
だれも、譲ってくれない。
世間って冷たい。

雑踏がなにより怖くなった。
特に、混雑している駅の階段やエスカレーターは、
ホントに怖い。

かけ込み乗車しようとする人に、突き飛ばされたり、
ベビーカーに轢かれたり、
ふざけた子供にタックルされたり、
いちゃつくカップルが、
シルバーシートを譲ってくれなかったり。

一方で、同情して親切にしてくれる人もいる。
その多くは、足を痛めた経験を持つ人たちらしい。

特に、おばあちゃんには、
よく話し掛けられた。
確かに、タックルしてくるガキよりはよっぽど良いが、
炎天下で、
延々そのおばあちゃんの苦労話を聞かされるのは、
それはそれで、体力的にしんどいもの。
立ち話は、できれば、遠慮申し上げたい。
せめて、日陰でお願いしたいものである。

ま、結局、どっちもどっちである。
バリアフリーって・・・
身体が不自由な人のために、
社会的なインフラを整備することを指して
バリアフリーというらしい。

少し前、
韓国から全盲の留学生が、
日本のバリアフリーについて研究するために
日本にやって来たというニュースを見た。
彼女曰く
「韓国と比べると、日本はバリアフリー天国」
だそうだ。
なぜか、その言葉が記憶に残っていた。

ふーん・・・
そうなんだ・・・

ところが、
少なくとも、松葉杖にお世話になりながら、
社会生活を営むのは、
至難の技である。

松葉杖は、少しでも地面にでこぼこがあると、
不安定極まりない。
石畳の歩道も
盲人用の黄色いブロックも
道路工事で掘り返された跡でさえ、
躓きの原因になる。

さらに危険なのが、
幅の狭い階段、
階段の滑り止めのでこぼこ
階段は、危ないので、
エスカレータやエレベータを探すが、
そこまで行くのがまた、遠いのなんのって・・・

エスカレーターも、
のぼりには、設置されていても、
くだりには、ないことが多い。
のぼりとくだり・・・
どちらが、危険かと言われたら、
断然くだりである。
一段踏み外したら、何段落ちるかわからない。
のぼりは、たしかに、大変だけど、
踏み外しても、前にこけるぶんには、
数段落ちれば済む。

だれのためのエスカレーターなんだ?

エスカレーターと言えば、
後ろにぴったりつかれると、降りるときの緊張は
並大抵ではない。
「松葉杖の人がいたら、必ず5段あけてエスカレーターに乗る」
という法律を今すぐ作ってほしい。
サービス業と松葉杖
松葉杖で困るのが、買い物と外食である。

両手がふさがっているから、
レジまで、買いたい商品を持っていくのが大変なのだ。
また、レストランや喫茶店は、通路が狭くて、
店内に段差があったり、
考えるだけで、入るのに躊躇してしまう。

結局、買い物はコンビニ、
外食は、ファミレスが、無難である。

「ビューティフルライフ」というドラマで、
常盤貴子演じる車椅子のヒロインが、
車椅子だとデートはいつもファミレスになっちゃう・・・
と、嘆いていたが、その気持ちがよくわかる。

スペースの問題だけではない。
チェーン店の方が店員の教育が行き届いている。
ドアをあけてくれたり、
エレベータを操作してくれたり、
席につくまで、フォローをしてくれることが多い。
セルフサービスの店でも、
席を確保してくれたり、
頼んだものを運んだりするのにも、
店員さんがすぐに手を貸してくれる。

ありがたいことである。

タクシーの運転手さんも
かなりの確率で、親切な人が多い。
しかし、10人にひとりくらいの割合で、
まだちゃんと乗り込んでないのに、
ドアを閉める輩がいる。
私も2度ほど、
痛い方の足をはさまれたので、
それからは、まず自分が乗り込んで、
杖をあとから乗せるようにした。
杖をはさむと、車が傷つくから、
運転手さんも、気をつけてくれるのである。

段差も、階段もしかたない。
でも、やっぱり、人には温かくしてほしい。
別に、松葉杖じゃなくても、
接客業の皆様は、
思いやりのある態度で客に対応するのがプロとして当たり前。
今回、親切にしてもらったお店には、
これからも通いますぞ。
使う筋肉痩せる筋肉
松葉杖を使って方足でで歩く・・・
これは言うまでも無く重労働である。

私の場合は、まずいきなり
腕、わき腹、背筋、腹筋が筋肉痛になった。
しばらくすると、手のひらにマメができて、
皮がむけた。

そんなことより、一番こまったのは、
左右を均等に使うわけではないので、
やがてひどい腰痛に見舞われた。

整体に通うが、
焼け石に水である。

しかし、明らかに、
二の腕のぷるぷるはなくなった。
わき腹も心なしか引き締まってきた。

歓ぶべきこと・・・である。

だが、最大の問題は、
使わない足の筋肉が著しく衰えることだ。
同じ人間の足とは思えないくらい
細くなってしまうのである。

まあ、前向きに考えれば、
足が細くなるのも、
歓ぶべきことである。
っていうか、それでも、まだ充分太いのが、
大問題だという話もあるが・・・

しかし、冷静に考えて、
このような方法で足が細くなるのは、
やっぱりダメである。
足の筋肉が衰えるというのは、
想像以上に、不安定なものなのだ。

立ったまま、靴下が履けない。
ちょっとよろけても、踏ん張れない。
むくみがひどい。
そして、不思議な事に、すね毛の生え方まで、
左右ばらばらになってしまった。

結論:人間って生ものなのね・・・
総括
総括すると、
松葉杖ライフは楽しくない。
特に真夏の松葉杖ライフは
ただ、暑くて、つらいだけである。

しかし、ふと考えた。
これが、冬だったら・・・
もし、雪国だったら・・・
砂漠だったら・・・
たぶんそっちの方がもっとつらそうである。

冬だったら、もこもこに着込んで、
杖をがしがし使うのは、無理である。
雪が降ったら、スタッドレス松葉杖が必要だ。
砂漠だったら・・・

冗談はともかく、
健康が一番!
ここまで読んでくれたみなさん、
当たり前の結論ですんません。

でも、二本足で歩けるっつーのは、
ほんとに、幸せなことです。

この場を借りて、御心配頂いたみなさん、
いろいろ親切にしてくれたみなさん、
どうもありがとうでした。

もう少しでよくなります。
また、コケなければ・・・ね。

(2002.8.4更新)

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