「ふぅ・・・暇とは言っても楽じゃないわ・・・」





 薄暗くなった道を、帰る家に向かって足早に進んでいる少女。彼女は今は、派遣領主と共にウマリー島へ勤務しており、毎日遠距離を移動魔法陣で通勤していた。そんな、帰り道。





「あら・・・」
「久しぶりだな、azusa」





 家の前には、見慣れた紅い髪の男が立っていた。





「聖神邪様、今日はどのような御用事で?折角ですから中に入られたら、ニヒト様もいらっしゃるのに」





 しかし彼は、首を縦には振らなかった。





「ニヒトは魔皇軍狩りで犠牲になったアルシャークのホムンクルスだからな・・・」
「そう言えばそうでしたね、」





 2人は苦笑しあった。そして暫し、沈黙が流れる。
 数分後、それを破ったのは聖神邪だった。





「お前も無用心だな、俺なんかを入れるだなんて」
「いいえ、もしニヒト様に危害を加えようものなら、私がお相手致します。というか、貴方に彼がやられる訳無いわ」





 しかし彼は高らかに笑い声をあげると、皮肉にもこう言った。





「倒してから来いと?それなら俺に殺られたアルシャークはどうだ?それに俺はもう・・・あの日からもう、魔皇軍狩りは止めたんだ・・・多くの仲間を失い、自暴自棄になっていたあの頃とはもう・・・訳が違う」





 最後は暗い調子で締めくくったが、彼の瞳は死んでいなかった。最後の1人になった今でも、反乱軍という誇りは失っていない証拠だった。





「しかし、ニヒトはどうだかな。俺とは最高の友であり、最高のライバルだった。それが今、アルシャークが封印されている今、俺の今の生きがいは奴と、ニヒトと再び剣を交える日を待ち望んでいる事なのかもしれない・・・」





 彼は自嘲気味に微笑むと、azusaの顔を見た。彼女は彼が自分の敵だということを思い出すと、計り知れない怒りが彼女を支配していた。それを見て彼は、一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐにいつもの戦いを好むものの顔をした。





「azusa、俺が憎いならいつでも相手になるぜ」
「いえ・・・貴方はとても憎い。けれど、敵であると同時に古き良き友でもある。そんな存在の貴方を、どうしていとも簡単に殺す事ができるのでしょうか・・・」





 彼女は苦しそうな表情をした。





「なァazusa、【B・A】の存在は知ってるよな?」
「あ、ええ。ニヒト様といつも一緒にいる赤い猫ですね」
「あれなァ、【Backup-Alshark】の略だって説明はしたよな?」
「・・・ええ、・・・」





 彼は含み笑いを浮かべると、更に話を続ける。





「俺の中にある【片闇】の能力・・・かつて俺が死んで奴が蘇生してくれた時に、俺の中にも生まれた奴の能力・・・これがあればニヒトがやろうとしているアルシャークの蘇生もうまくいくかもな?どうだ?俺を倒して【片闇】を奪ってみるか???」





 彼女は驚愕の事実のあまり、言葉が出なくなった。
 そうして彼は、逃げも隠れもしないからいつでも挑んで来いとだけ言い残すと、魔法でその場を去った。





「・・・アルシャーク様・・・・・・」





















 azusaはぼんやりと家の扉を開けると、そこからは先ほどまでの緊迫した空気を思わせなかった。





「ただいま、です・・・」





 しかし、返事は無い。どうやらニヒトはまだ、仕事で出掛けたままのようだった。仕方なく彼女は自室に戻り、これからの事を考える事にした。





















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