聖神邪の奥底に眠りし【片闇】の能力。 能力とはいえ、闇は闇。 主の負の心を源とし生きる闇。 ・・・それは、いつ暴走してもおかしくない闇の力・・・ だからこそ、闇に負けない精神力がなければならない。 しかし・・・ 聖神邪の心は壊れたガラス細工の様に粉々になり、修復する事さえ困難な状態だった。 その隙をついて主人格を呑み込もうとする【片闇】。 もはや、聖神邪にそれを止める力は残ってなかった・・・ 『フッフッフ・・・やっとこの時が・・・』 廃人の様に部屋の天井を見上げている聖神邪の心に直接語りかける闇の声。 「誰だ・・・」 咄嗟に立ち上がり、近くにあった槍を手に取り周りを見渡す。 『何を今更・・・長年共に生きてきた仲じゃねぇか・・・』 理解不能な言葉に警戒心を強める聖神邪。 『我は【片闇】。汝が蘇生した時に生まれた闇さ・・・汝は特殊能力の様に使っていたが、それは我が汝に力を貸していただけの事。我は汝の負の心を源とし、心の奥底で生きてきた。だが、汝はもう生きた屍 同然、御仕舞いだ』 「御仕舞い?・・・ふ・・・ふざけるな・・・オレは・・・オレは・・・」 的確な言葉に動揺し、手を滑らせ持っていた槍を落とす。 『我は汝の心で生きてた。全て御見通しだ・・・』 追い討ちの言葉に、聖神邪は言葉が出ない。 しばらくして、聖神邪は逆に問い始めた。 「で・・・どうしたいのだ?・・・主、アルシャークの元へ帰りたいのか?」 『アルシャーク? あぁ・・・確か、同じ【片闇】を持つ者だな。しかし、我は汝の中に生まれし【片闇】。汝の闇の人格とでも言うべきか?』 予想外の返答に困惑し始める。 自分の持っている【片闇】の能力とB・A、そしてニヒト・ダーザインが居ればアルシャークの復活ができるかもしれないと思い込んでいただけに、今の【片闇】が、アルシャークの【片闇】では無く、自分オリジナルの【片闇】であるとこは、大きな誤算であった。 『それでだ・・・我が望み・・・それは・・・汝の肉体を手に入れることだ!』 突然、牙を向き始めた片闇は、聖神邪の脳へ侵食を始める。 真紅の髪は逆立ち、右目が光りだすと、 漆黒の闘気が身体を包み宙に浮く。 かち割れる様な頭痛に、血管が浮き、大きな叫び声をあげる。 そして、不適な笑い声が脳裏に木霊す度に、聖神邪の主人格の意識はどんどん薄くなる。 「・・・すまねぇ・・・みんな・・・」 その想いを最期に、聖神邪の主人格は、【片闇】によって乗っ取られた。 「はぁ〜やっとこれで我が思いのままに動ける。闇の血を持つ者たちとの決戦・・・始めるとするか」 そう言いながら、首の骨を鳴らし、両手を上げ身体を伸ばす。 大きな叫び声とただならぬ闘気に、同居している弟のラシェ と 友人 シャウラが部屋へ飛び込んできた。 が、聖神邪であって聖神邪じゃない姿に、2人は硬直する。 その2人に、不適な笑みを浮かべると、漆黒の羽根を具現化させ、窓ガラスを突き破り、何処かへ飛んで行った。 「あ・・・兄・・・」 弟は、飛び去る姿を目で追うことしかできなかった・・・。 next