気がつけばいつの間にか眠っていた。





「ん・・・」





 身体を動かしてみて、初めて自分が椅子に座った状態ではなく、横になっていた事に気付く。そんな筈は、と思ったが、その側らに彼女を労わったらしい人物が寝息を立てていた。





「あ・・・わざわざ様子を見に来て下さって・・・」





 彼女は微笑すると、自分の毛布を1枚彼にかけると、再び横になり目を閉じた。




















「あら、ニヒト様・・・お仕事は・・・?」





 彼女は目を覚ましリビング行くなり、先客にそう声をかけた。





「いや、そろそろ交代の時期かと思いましてね、引継ぎで今は特に何もしていないのですよ」
「そうだったんですか・・・」
「だから、今日は昨夜から無理をしているようなお嬢さんの世話でも致そうかと思いましてね」
「やだ、皮肉ですか」





 あはは、と明るい笑い声を響かせながら、彼は火にかけていたミルクパンの湯をポットに移す。





「紅茶で宜しかったですか?」
「はい、有難うございます」





 彼は手際よく紅茶を2人分煎れると、彼女の向かい側に座った。そして早速と言わんばかりに、口を開く。





「一体、何があったのですか?私が帰宅してazusa殿の部屋を覗けば、貴女は酷く魘<うな>されていました。しかも、アルシャークの名を、呼びながら・・・」





 彼女は動揺の色を、少しだけ見せた。
 ここで何かあったことを話していいものか、悪いものか。





 今、目の前にいる人。【ニヒト・ダーザイン】





 嘗てより今尚思いを馳せる人。【アルシャーク】





 どちらかを選べば、どちらかを失う事になる。
 どちらも彼女にとっては大切な存在で、どちらかを選ぶ事なんて、到底無理な話。
 しかし、彼は彼女を誘惑した。





 アルシャークは、蘇る





 と。





「本当に何も・・・何もないですよ、」





 苦笑では何かあったのだと言っているようなものなのに、彼は何も言わなかった。
 彼女は熱が失われゆく紅茶を飲み干すと、いつもの笑顔で立ち上がり、口を開く。





「そろそろ王宮に行きますね、そろそろ呪竜対策について本格的に取り組まないといけない時期なので」





 そそくさと立ち上がり、カップを流しに下げようと彼の横を通ったその時、彼の手がカップを持つ手に重なった。






 どき、と鼓動が聞こえた気がして。





「ニ・ニヒト様、私・・・」
「お気をつけて、いってらっしゃい・・・」





 彼は彼女の手を軽く握ると、そっとカップを抜き取った。
 彼女は頬を赤く染め、何も言わずに彼に背を向け、部屋を早急に出かけていった。





「私もそろそろ・・・・・・」





 彼は自嘲気味に笑うと、自身のカップに残っていた紅茶を一気に呷った。




















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