タバコを吸い始めたのは意外に遅くて、19の時だ。
その頃のオレは、大学の受験に「予定通り」失敗し、華麗なる浪人時代に突入していた。日本一不謹慎な浪人生であったかも知れない。例によってその夜も、自宅に友達を召還し大酒を食らったワケだが、雑巾のような体勢で目覚めた翌朝、その視線の先に、何故かマルボロの箱がおっこっていたのである。女友達の一人が忘れていったその2本のマルボロが、オレのヘビーな喫煙人生が始まるきっかけの全てだった。
この、マルボロ赤というヤツを入り口にタバコを吸い始めるというのは、結構珍しいケースと言える。それなりにタールとニコチンを含んでいて、初心者には偉くキッツいからだ。 さきっちょ真っピンクの童貞くんと、百戦錬磨のベテランソープ嬢というカップリングはそれなりに趣深いものだが、それはお姉さまの方に優しくリードしてくれる「懐」があるからであって、無機物であるタバコにそういった人情の機微を求めるのは言うまでもなくムダだ。記念すべきバージンスモークの一瞬後、無双山とガチンコで立ち合ったちびっこ力士の如く、オレは悶絶して転げ回るハメになった。
ところが、転げ回った先はどうやら急な坂道だったようで、一服吸うゴトにせき込み、脂汗を流して涙目になっていた可愛らしい少年は、緑のザクよろしく空き箱を量産する、立派なヘビースモーカーへと瞬く間に成長するのだった。
そんなわけで今では、一日平均2箱が楽勝で空になる。
どうやったらタバコを辞められるだろうか。
確信するが、発ガン性なんて悠長なことを言われてもまずダメだ。タバコを吸うヤツは脳細胞が端から壊死していってるので想像力が足りない。 では、大好きな恋人に、「あなたの体が心配なの。あなたがガンで死んじゃったらあたしだって生きてけないよ……お願いだからタバコ辞めてよ…」なんて、涙ながらに懇願されたらどうだろうか。 「そんなにオレのことを……」と言ってしばし絶句、しかる後に泣きじゃくる彼女の肩を優しく抱き寄せ、 「…バカだな、オマエ一人残してオレが死ぬわけないだろ。やめるよ、タバコなんか……ずっと一緒にいような」と囁いて熱いキスを交わした上で、隠れて吸う。
唯一有効な手段だと思われるのは、「何かとひきかえにする」というものだ。 例えば、酒かタバコか、という選択を迫られたなら、間違いなく酒を選ぶ。酒自体はそんなに好きというワケではないが、友人との飲み会なんかに出席できなくなるのは耐え難いハナシだ。キャバクラでお姉ちゃんにきゃあきゃあ言われることができないなら、そんな将来にナンの魅力もない。 或いは、大好きな彼女のFカップのおっぱいに特殊な爆弾が埋め込まれ、例えどんなに離れた場所にいようとも、オレがタバコに火を点けた瞬間に吹っ飛ぶ、とかだったらきっと辞められるだろう。
しかしいずれにせよそれには、オレという人間の行動を完全に規定できる「上位者」の存在が必須であり、今のところオレにはちょっとそういう心当たりが無いため、タバコも辞められそうにない。
我ながら困ったモノなので一応、繰り返しておく。
オレにタバコを辞めさせるのに必要なもの。
1:タバコの煙を関知する特殊な爆弾を開発できるだけの技術力を持った悪の組織(一組)
2:Fカップのおっぱい(2フサ)
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