あの人は、今・・・

昔の話
。その頃の俺は、とあるホールに良く通っていた。
そのホールのパチスロのシマの通路は
とっても狭くて
人と人とが擦れ違うのも厳しいほどだった。

そんなホールに、
ほとんどの客から嫌われていた店員がいた。

何故嫌われていたのかと言うと、
彼の身長は
180cm以上で、体型も中肉って感じかな?
そんな
格闘家の卵ような体格にも関わらず、
彼は、まるで
反復横とびのように通路を移動し、
コイン補給などが終わると、まるで
体前屈のようにお辞儀をする。
もう1度書いとこうか。その通路は
とっても狭いのだ。

そんな通路を飛び跳ねるように移動したら、
パチスロを打ってる客の
背中やイスにぶつかるし、
そんな通路で深々とお辞儀をされたら、
背面の客の背中にも
彼のでん部がぶつかる事になる。

おりしもその頃は、いわゆる
技術介入系マシンが主流の時代。
ほとんどの客は、通常時は小役を
取りこぼさないよう神経を使い、
BIG中は
1枚でも多いコインの獲得に専念していた。
そんな中、集中して打っている客にぶつかる店員など、
嫌われても、というか非常識と言っても過言ではなかった。

俺は心の中で、その一連の行動から
彼を
身体測定と名付けて、皆と同様に嫌っていた。

そんなある日。俺はいつものようにそのホールへ行った。
するとすぐに、
反復横とびをしてる身体測定の姿が見えた。
「あー、いやがったよ。」この時点で
ちょっぴりへコんでしまう。

その日に選んだ機種は、岡崎産業の
コアという機種。
このホールへは、この機種を打ちたくて通ってるようなもの。
いつぶつかってくるかわからない
身体測定の影に怯えながらも、
その日は好調にコインを増やしていた。

今日の勝利が堅いと安心したところで、トイレタイム。
トイレに向う途中、コアのシマの隅でチーフらしき店員に
良く見かける常連が、何やら
激しめな口調で話をしていた。
いやらしいとは思いつつも、少しだけ聞き耳を立ててみる。

「・・・・、とか・・てよ!・・・で、ぶつかるし!」
ほとんど断片的にしか聞き取れなかったけど、
はっきりと聞き取れた唯一の言葉は、
「ぶつかるし」
この言葉で話の内容は何となく理解出来た。
恐らく、その常連は例の
身体測定の苦情を伝えてたんだろう。
この時、
常連さん、ありがとう!!って心の底から感謝した。

トイレから戻り、身体測定の姿を探すも
見当たらず
そういえば、チーフの姿も
見当たらない
身体測定のヤロー、怒られてんだ!ザマーみやがれ!!

2人が戻って来るのは遅かった。あれから
20分後くらいかな。
戻ってきた身体測定に注目してみる。
何と!普通に通路を移動してる!!飛んで無い!!!
初めて見た!何だよ、やりゃ出来るんじゃん。
やっぱり、チーフから
何かしらの注意をされたんだろう。
今日のところは、身体測定に怯えずに済みそうだな。

そんな安心感も手伝ってか、その後もコインを出し続け
最終的には、何と
3000枚オーバーの大勝利!!
2つのドル箱を抱え持ち、ホクホク気分でカウンターへ向う。

カウンターには、
身体測定が。ホクホク気分に少し水をさされる
慣れた手つきでコインをカウンターに流す身体測定。
全てのコインを流し終わると、急に彼が俺の方を向き、
「すごいですね!僕、こんなに出した事ありませんよ!」
と、
笑顔で話しかけてきた。この不意の出来事に思わず
「あ、はい。ありがとうございます。」と返事をする俺。
嫌ってる身体測定にお礼を言うなんて、
ちょっと複雑な気分だな。

それから
数日後。またそのホールへ行ってみる。
その日、身体測定の姿は
見当たらなかった。休みだったのか?
でも、その後も何度かそのホールに足を運んでみたけど、
身体測定の姿を
見る事は無かった

散々嫌ってきた身体測定。でも、最後に見た彼は
通路を普通に歩き笑顔で接客する姿だった。
今思い出しても、彼の事は好きにはなれないけど、
最後に言葉を交わせて良かったかな?とは思ってるんだよね。