綱吉ホールの思い出

昔、
とある沖スロにハマっていた頃の話。
俺の地元には沖スロ設置店は
ほとんど無く
僅かばかりの沖スロ設置店も、
出来る事ならお金を使いたくない系のホールばかりだった。
「でも、その機種を打てるのなら仕方ない」
そんな
やや自虐的な気持ちで、俺はとあるホールへ通い出した。

通い始めた頃の
ある日。時期的には6月くらいだろうか?
その日は
かなり蒸し暑くて、
俺の服装はTシャツにハーフパンツ姿だった。
そして、いつも通りお目当ての沖スロを打っていた。
その時は、投資がかさんだり、大ハマリを食らったりで、
ちょっとばかしイライラしていたと記憶している。

そんな苛立ちの真っ只中、突然
足首妙な感覚を覚える。
日常生活では
体験した事の無い感覚。これは一体!?
でもその感覚は、時間的には
一瞬
嫌悪感を覚えるまでも無かったのでさほど気にせず、
また
ひたすら続くハマリ道に戻る事にした。

すると、2〜3分後にまた
例の感覚を覚える。しかも、同じ足首に。
今度はさっきよりも
時間的に長く、反射的に足を動かしてしまった。
さすがに気になり、目線を足元に向けてみる。
あれ!?何も無いじゃんよ!?俺の気のせいだったのか!?

と!イスの下で、何やらモップのようなモノがうごめいているッ!!
気になるあの娘に告白してるかのように
見る見る心拍数が上がって行く俺。
その正体を見極めるべくじっくり見てみると・・・

実は
犬!犬だよ犬!!何と、ホールの中に犬がいたんだよ!
さっきの感覚って、この犬に
舐められてた感覚だった訳だ。

ここでひとつ書いておくと、実は俺は
犬が大嫌いなのである。
いや、嫌いというよりも、
犬が恐い気持ちの方が強い
幼少時代に、散歩中の近所の飼い犬に横っ腹を噛まれて以来、
この年齢になる今でも、犬に対する恐怖心が
拭えていない
なので、犬に足首を舐められる経験など、
俺の日常生活では、
まずあり得ない事になる。

さて、話を戻そう。
犬が俺の足元にいる、というこの事実。
しかも、足元は
無防備にもほどがあるハーフパンツだし、
肌に直接犬がくっ付くなんて、考えただけでも
身の毛がよだつ
俺は、恐怖心から
とても打つ気分になれない反面、
その台を
捨て切れない、未練がましい気持ちもあった。
とりあえずその場を離れる為、
行きたくも無いトイレに行き、
飲みたくも無いコーヒーを購入し、更に店外で一服する。

少し頭の中を整理してみる。何故
ホール内に犬がいるのか?
犬がパチスロを打ちに来た!?
ハイ、当然却下
まさか、ホールぐるみで飼っている訳ではないだろうし、
そうすると、
客の中の誰かの飼い犬って説が濃厚だろう。

差し当たりの結論の出た5分後。恐る恐る席に戻ってみると、
俺の席の付近に犬の姿は見えなかったが、
5〜6席離れた席に、あの犬が
ちょこんと座っている光景が!?
えっ!?
やっぱり打ちに来てるの!?ハイ、もう1回却下
その犬の隣には、
飼い主と思われる客の姿が見える。
その客は、周囲の客とも親しげに会話を交わしている。
という事は、その客はきっと
常連なのであろう。それもヘビーな。

でもいくら常連だとしても、飼い犬を連れ込むのは
非常識だろ?
実際、客である俺が
プリップリな不快感を持ってる訳だし。
ホントは店員に言って注意してもらいたいところだったけど、
俺はまだこのホールに
通い始めたばかりの人間
このホールのルールや雰囲気も
把握し切れてなかったし、
今日は
コテンパンにやられたから、
結局その日は何も訴えずに、大人しく帰る事にした。

それから
数日後。そのホールの店内に入るといきなり
パチスロのシマを
元気に駆け回っている例の犬の姿を目撃した。
その日は
何も打つ気になれず、そのまま帰宅した。

帰宅の途中、俺はこんな事を考えていた。
「あのホールには、
生類憐れみの令が発布されてるんだな。」

さようなら、
綱吉ホール