世界民族音楽の旅 フラメンコ/情熱あふれる魂の賛歌(Aug.5 2001)


 「世界民族音楽の旅」というのは、私がよく利用している劇場の オリジナル企画で、今回は今年の第1回目、4夜連続企画の第1夜です。
この企画の良いところは、ただ音楽を聴かせたり舞踊を見せたりするだけでなく、 その道に精通している方による、音楽の時代背景や楽器・歌などの説明が事前に 行われることです。私のような、何も知らない初心者でも、その舞台芸術の世界が より深く楽しめます。
 今日は開演前にフラメンコ関連雑誌の編集者によるプレトーク、第1部がギタリスト、 歌手、舞踊家による実演を含めたレクチャー、第2部がフラメンコライブ、という 構成でした。
メモを取っていたわけではなく、あくまでも覚書ですので、間違っていたらこっそり メールで教えてください。

プレトーク  講師 西脇美絵子

 フラメンコは、スペインのアンダルシア地方に育った民俗芸能です。 
インドからの流浪の民「ヒターノ」が、イスラム文化やキリスト教文化を 取りこみながら育んできた舞踊や音楽が、アンダルシアの土着の文化と一体化して、 フラメンコという形になりました。
 フラメンコはもともと、人々の生活に密着した民族芸能です。
ヒターノたちが、その迫害の歴史の中で、日々の暮らしの中の苦しみや悲しみ、 喜びを唄ったり踊ったり奏でたりしていたものです。
それが、19世紀から20世紀初めにかけて、舞台で演じられる、「見せるための 芸能」に変化し「カフェ・カンタンテ」と呼ばれる酒場のような場所で、 観客のために演じられるようになりました。(現在でも、名前は忘れましたが お酒を飲んだり食事をしたりしながらフラメンコ鑑賞ができるお店が、 スペインにはたくさんあるそうです)
 フラメンコ、というとまず、情熱的な舞踊を連想する人が多いようですが、 本来フラメンコというものは、ギター、カンテ(歌)、バイレ(踊り)が三位一体と なった芸術です。この3つの要素が、エネルギーを交換し合って哀切と命、魂を 表現するのがフラメンコです。
 フラメンコの舞台では、それぞれのアーティストが、即興で思いを表現していきます。 その際に、不可欠なものが「コンパス」と呼ばれるリズムの刻みです。 2拍子のリズムと、3拍子のリズムとがあります。 「コンパス」が統一されることにより、それぞれの即興が統一性を持つようになります。
 日本では、最近、フラメンコがとても盛んです。アマチュア人口はスペインよりも 多いかもしれません。情報収集しようと思えば、日本にいても、かなり本格的なものが 見られたり習えたりします。フラメンコは精神で感じるものです、 楽しんで、その世界に触れてください。

おおむねこんな内容でした。

第1部 フラメンコレクチャー

舞踊 草野櫻子 高野美智子 関口京子 吉成侯子 川崎裕子
ギター 原田和彦 鈴木淳弘  カンテ 鞍掛和子  カホン 吉田紀子


「セビジャーナス」という作品で、とりあえずフラメンコの実物を観るところから始まります。
5人の舞踊家が、それぞれ違う動きをしているのに、キメるところではビシッと統一の 動きをします。それがさっきのプレトークのところで触れた、「即興の統一」ということかな。 ギターと歌、踊りの三位一体か…と、実物を見て少し理解できました。
 次に、ギタリストにフラメンコギターの特徴について聞きます。
フラメンコギターがクラシックギターやフォークギターと一番違うところは、胴の部分がすべて同じ材質で できているところだそうです。クラシックギターやフォークギターの音が、どちらかというと 前方に響くのに対して、フラメンコギターの音は横に広がる特徴があるそうです。  なぜかというと、マイクがなかった時代、フラメンコを演じている時、奏者や歌手、舞踊家 同志で、音が聞えないと困るからだそうです。(これも、即興を多用する音楽だからですね)
演奏のしかたの特徴は、指で弾くほかに、ギターの胴を叩いて音を出すことだそうです。
 その次に、歌手にフラメンコの歌の特徴を聞きます。
 フラメンコのカンテは、地声で搾り出すような発声法が特徴です。歌詞の内容としては、 日常生活のアレコレを唄ったものが多いそうです。ちなみに、今日出演の歌手の方が 一番好きな歌は、「俺はジプシーの中のジプシー、惚れるんじゃないぜ」みたいな歌詞 だそうです。
 次は、フラメンコのリズム(さっきの話に出てきた、「コンパス」というものです) についてです。フラメンコ舞踊につきものの手拍子を「パルマ」と呼びます。
 観客も一緒に、基本のコンパスでパルマを叩いてみることになりました。
基本の2拍子のパルマは「手拍子大きくポン、小さくポン、もいちど大きくポン、足拍子トン」 です。
「ポンポンポントン ポンポンポントン  ポンポンポントン…」
基本の3拍子(というか、6拍2回で12拍)のパルマは 「足拍子トン、手拍子大きくポン、小さくポン、大きい手拍子と足拍子同時でトン、やや小さめの 手拍子2回ポンポン」です。
「トンポンポントンポンポン  トンポンポントンポンポン…」 正直、3拍子パルマはついていけません…。
 観客が打つパルマに、ギターと舞踊を合わせてくれます。本格的に見えるから不思議。
 最後に、サパテアード(靴音)に関するレクチャーです。
フラメンコ舞踊に使う靴は、タップダンスのような専用靴ではありません。普通の少しヒールの ついた靴に、2箇所釘が打ってあるだけだそうです。 靴音は5種ないし6種あります。指の付け根あたりで出す音、かかとで出す音、つま先で出す音 、足裏全体で出す音です。(かかとで出す音は2種あり、つま先で出す音は靴の打ち方によって 名前が違うことがあるそうです)
 単純なサパテアードと、複雑で熟練したサパテアードのデモンストレーションがありました。

第2部 フラメンコ ライブ
オベルトゥーラ(序章)

 舞踊家全員が、色とりどりの衣装で表れます。どちらかというと明るめのギターに 歌詞のないスキャットのような歌が入ります。
さっき、レクチャーで話のあった、2拍子のパルマと3拍子のパルマが、絡み合いながら 繰り返されます。「あぁ、コレのことか。」と、レクチャーの内容を復習しているようです。 タラント  バイレ 高野美智子
 ソロのバイレの演目です。真っ赤なドレスの舞踊家がひとりで踊ります。
歌詞のついた歌ですが、 スペイン語のため、内容はわかりません。
印象としては「内に秘めた情熱」
好きなのに言い出せない恋心の悩みや甘さ…のような気がしましたが、真相はわかりません。
アレグリアス  バイレ 草野櫻子
 これもソロのバイレです。白っぽいドレスの舞踊家です。
イントロのギターが、何とも晴れやかで清々しくて、アンダルシアの青空が頭に浮かびました。 …って、アンダルシアの青空を見たことはないんですが…。
緩急、強弱、動と静がキビキビと繰り返されます。情熱的なのは他の演目と同じですが、 その中に何か、たおやかさのような、大きく包み込む優しさのようなものを感じました。
フィナ―ル (終章)
 また、舞踊家全員によるバイレです。
今度はひとりひとりソロで踊り、他の舞踊家はパルマのリズムで踊りを支えます。 自己顕示をするような、キレのいいサパテアードの応酬が爽快です。 いつか、スペインの酒場で演じられるフラメンコを見たいものだと思いました。   


今日の評価
☆☆☆です。キチンと訓練した人の舞台はいいものです。
入門編としては、申し分ないでしょう。

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