ピーターパン ホリプロ(July.21.2002)
出演 笹本玲奈 芳本美代子 鶴見辰吾 比企理恵 他


 古くは榊原郁恵、沖本姉妹がピーター役で出ていた、あのピーターパンです。
職場の厚生会で、破格の値段でチケットの斡旋があったので飛びつきました。丁度その数日前にブロードウエイのオリジナル版をテレビで見て…「あぁ、これを生で見たいな〜」と思ったばかりだったのです。
 破格のチケットだっただけに、3階席の一番後ろ(つまり、全劇場の一番後ろ)の席でした。舞台からはだいぶ遠かったけれど、それでもとても楽しめました。一緒に行ったSHUも大喜び。子供向けに作られた、しかも質の良い劇を見せるの久しぶりだもんね。(いつもあたしの趣味につき合わせてばかりでごめんよ)

ストーリー
 ダーリング家の両親は、今日はパーティのために、子どもたちが眠った後2人でお出かけ。いつもは子ども部屋で乳母代わりに世話をしてくれる犬のナナを、ダーリング氏は、ちょっとしたことで部屋から追い出し、裏庭につないでしまう。
「ナナがいなくて大丈夫かしら?」というダーリング夫人の予感は的中。夜中に子ども部屋にピーターパンが現れる。
 自分の影を探しに来た彼は、子ども部屋でそれを見つけるが、くっつける事ができなくて泣き出してしまう。それに気づいたダーリング家の長女のウエンディが「縫いつけてあげましょうか?」と、申し出る。
 友達になったウエンディに、ピーターは「ネバーランドにいるぼくの仲間たちのお母さんになってくれる?お話を聞かせたり、ポケットを作ったりして欲しいんだ。」と頼む。快諾のウエンディ。2人の弟、ジョンとマイケルも一緒に、ネバーランドに出発。

 ネバーランドには、ピーターの仲間の迷子たち、ピーターの敵の海賊フックとその手下たち、迷子たちの喧嘩友達(?)のタイガーリリーと勇者たち(原作ではインディアンだったけど、この表現は不適切なのかな)など、個性的な面々が暮らしている。
迷子たちに熱烈歓迎を受けるウエンディ、実はお母さんが欲しい海賊たち、迷子たちに敵対する勇者たち…

感想
 既に「大人」になってしまった私たちと、現役の「子ども」たちでは、受ける印象が随分違う作品なのではないかと思いました。自分が大人になるなんて信じられなくて、ずっとずっと子どもでいられるような気がした頃が、誰の中にでもあるのではないかと思います。
 ウエンディは作品中で、ピーターに恋をします。大人の恋とは違う、おままごとの延長のような淡い恋です。迷子たちの「お母さん」に対応する「お父さん」の役をピーターに求めます。けれどピーターの考える自分のポジションは、いつでも子ども。「お母さん」が欲しいとは思っても、誰かの恋人や、誰かを守り、導く存在にはなろうとはしません。(迷子たちのリーダーではあるけれど、それは「ガキ大将」であって「父性」ではありません)「女の子って、どうしていつもそうなんだ?ティンカーベルも、ぼくの『何か』になろうとしてるけれど、ぼくにはそれが何のことだかちっともわからない。」永遠少年のピーターは、挫折も恋も失恋も知ることなく、自信にあふれて自由と冒険に満ちる世界で暮らしています。
 大人になってしまった私は、そんな彼を、すこし眩しいような、切ないような、もう2度と手に入らないような宝物をみるような気持ちで見ていました。だけど、大人になった私は、ピーターに言うかもしれません。「君にはつまらなく見えるかもしれないけれど、大人になるのも、そんなに悪い事ではないよ。」って。
 最後の場面で、大人になったウエンディを、もうネバーランドに連れていけないと知ったピーターは泣きますが、すぐにウエンディの娘のジェーンと友達になり、今度は彼女をネバーランドに連れていきます。「あたしも一緒に行きたかったわ」と寂しげに言うウエンディに、ピーターは「ダメだよ。だって君はもう大人じゃないか。」と言い放ちます。「大人」がセンチメンタルに惜しむ割には、「子ども時代」はそんな大人の感傷はどうでもいいと感じている。そうだよなぁ、そんなもんだよなぁと思いました。

 達者な役者さんが揃った舞台で、安心して(?)楽しめました。特にタイガーリリーの体の動きは白眉です。ダーリング氏と2役のフック船長も、仇役ながら憎めない存在でした。ナナとワニの着ぐるみで最後まで顔を明かさなかった女優さんも、人間とは思えない体の動きでした。ダンスナンバーは第2幕の「アガ・ワグ」が絶品。(ただ、すんごく個人的に残念だったのが、テレビで見たオリジナル版のダンスと、ちょっと違ってたの。オリジナル版のマイケルのソロがすんごくかわいくて、「アレが生で見られるのね。わくわく。」と思ってたの。)
 カーテンコールで客席上空まで飛び出したピーターが、客席にも妖精の粉を振りまいて行きました。今晩あたり、夢の中でネバーランドに飛んでいく子どもは多いかもしれません。