S席9000円のところが6000円になる割引を、職場の厚生会でやっており、
ダメモトで葉書を送ったら当たりました。そういうわけで、あんまり思い入れもない
作品だったんですが…すっごく良かったです。
ストーリー
好奇心旺盛な少女ピコは、「夢の案内人」に誘われて、夜の遊園地へ出かける。そこで、
交通事故で死んだばかりの少女マコに出会う。「天国へ行ってしまう前に、母親にキチンと
別れを告げたいので、1日だけ入れ替わらせて欲しい」、というマコの願いを聞き入れて、
ピコはマコの持っていた「天国行きの真っ白なパスポート」を借りて、天国行きロケットの
待合所へ行く。
待合所でロケットを待つのは、戦乱や飢餓で死んだ子どもたち、後に残した妻が死ぬのを待って、
一緒に天国へ行こうとしている老人などだった。生前、良い行いをしてきた彼らは、まっすぐに
天国へ行き、光になれる「白いパスポート」を持っていた。一方、生前良くない行いも
してきた者は、グレイのパスポートを貰い、パスポートが白くなるまでの期間、待合所で
労役をして過ごすことになっていた。グレイのパスポートを手にしているのは、生前暴走族・
ヤクザ・会社の部長などであったが、その中に受験失敗を苦に自殺した少年、「メソ」がいた。
ピコは、マコに借りたパスポートが入ったバッグをメソに預け、天国行きロケットの見学
をしに行く。メソが白いパスポートを持っているのに気づいて、グレイのパスポートを持つ
者たちは、メソが恩赦を受けたと勘違いする。引っ込みのつかなくなったメソは、ピコから預かった
白いパスポートを自分のものだと偽って、自分のパスポートをピコのバッグに突っ込み、
搭乗手続きを受けてしまう。
見学から戻ったピコがバッグを開けると、真っ白だったはずのパスポートが、地獄行きの
真っ黒なパスポートに変わっている。…このままでは、マコは地獄行きになってしまう。
どうする?ピコ。
感想
感想の前に…この舞台、緞帳が開く前から、始まってるんです。それが凄く新鮮で。
開演前のロビーに、クラウンや小人、大道芸人に扮した俳優が現れて、いろんな場所で
パフォーマンスをしてるんです。私は、ハンドベルを演奏する3人組をずっと見ていたんですが、
ほんと、彼女たちは絵本から出てきた小人のようで、かわいらしくて、演奏も上手で、子供のように
夢中で見てしまいました。他にも、朱鷺の顔のような仮面をつけた俳優さんや、無表情な月の仮面
の俳優さん、ストリートオルガンを奏でるおじいちゃん、マリオネットを操るクラウン…など、
異形の人々がロビーにぞろぞろいて、その人たちがぞろぞろ〜と観客席に入っていくのについて、
観客も客席に入る…そんで、舞台上では別のパフォーマンスが始まって…というオープニングでした。
全然意識してないんだけど、芝居が始まった時には、観客はもう、すっかり非日常の夢の
世界に浸ってるの。ウチの息子は通路側席にいたんだけれど、階段を降りて舞台に向かう異形の
俳優さんに足を出す、という失礼なことをして、そしたら俳優さん、2歩くらい通りすぎたところで
振り返って息子に「ちっちっち」と無言で人差し指を振って見せました。
そういう感じで、冒頭の夜の遊園地の場面に行くのですが、そこでのダンス、ダンスなんだか
サーカスのパフォーマンスなんだか、大道芸なんだか分からない感じで、しまいに「ラート」という
直径2メートルくらいのわっか状のスポーツ器具まで登場するし、ロープにつかまった俳優さんを
ぐるぐる回しちゃうし(これなんか完全にサーカスだよな)劇団四季の俳優って、なんでもできなきゃ
務まらないんだなぁ、と、凄く感心しました。
で、本編の感想ですが。
私、「通過儀礼」って好きなんです。日常から1歩離れて、いろんな事を考えて、一回り
成長して日常に帰っていくという過程。今回の劇は、もろに通過儀礼の劇でした。
(まぁ、「お芝居」ってそれ自体、人工的な通過儀礼なんだよね。日常生活から離れて、芝居の
登場人物と共に泣いたり笑ったりするのが芝居だもん)
主人公ピコは、楽天的で底抜けに明るくて、同情心に厚い、とってもいい子です。初めて
会った人には、大きな声で挨拶します。
そんなピコの性格(自分のことより、他人のことを優先しちゃうようなところ)が、
待合所の役人の心を動かし、待合所にいた全ての者を味方につけ、メソをも救います。
「あなたたちも、本当はいい人なのね♪」と、ピコはグレイのパスポート組の者たちに
笑って見せますが、本当は、それはピコ自身が招いたものです。
結局ピコは、マコの願いも叶え、悲しみに打ちひしがれるマコの母も立ち直らせます。
見ているだけでハッピーな気分になってしまう、ミュージカルでした。
この作品、出発点は「こどもミュージカル」だったそうなのですが、ほんと、こういう作品を
子どもにたくさん見せたいな〜と思いました。
芝居と歌とパフォーマンスと、一粒で三度おいしい、みたいな後味。
夏に観た、「ユタと不思議な仲間たち」はしみじみとした感じでしたが、今回は豪華絢爛
という印象でした。
今日の評価
悪者が一人も出てこない芝居っていうのも、いいもんですねぇ。