コーヒー

昔は嫌いだったもの。

ふと考えてみた。なぜだ。

俺の親は好きだった。彼らにとって、特に父親にとっては日曜日の朝にコーヒーを作って飲むということが、なにか意味をもっていたのかもしれない。

日曜日の朝、目が覚めそうになるのをずっとこらえて意地でも寝続けようと決心したときに、その音は聞こえる。

コーヒーの豆を砕く音。

人の手によってなされる音ではなく、機械が奏でる不快音。

大嫌いな音。

機械を使ってなかったら違ったのかもしれない。あの音を聞いて10代を過ごしたから、コーヒー=睡眠妨害のように刷り込まれて、いつのまにか嫌いになってた。

それがいま、コーヒー豆を買うようになった。恐る恐る、大学の前にある、人のよさそうなマスターのいる店で買ってみた。豆の知識などなくマスターに苦いやつをくださいと。彼が勧めたのはフレンチローストという豆だった。

いままで飲んだコーヒーとはまったく違う飲み物のように感じた。また、作りたい。

部屋の空気が一瞬で変わった。

これだったのか。