ちょっと怖い体験談
第一話:「あれは誰?」
それは私が中学1年生の夏、地区子供会主催による1泊2日のキャンプに参加したときのことです。
世話役や付き添いの大人達、手伝いの大学生が何人か、そして中学生と小学2年生以上の総勢50人ほどの一行は、
バスで現地近くまで行き、ハイキングをかねてゾロゾロ歩いてキャンプ地に着きました。
荷物をほどき、お昼を済ませたあとは少し離れた県営のプール場へ。
2時間位泳がせてもらって、また歩いてキャンプ地まで戻り、飯ごう炊さん。みんなでご飯を炊き、カレーを作り、
ワイワイと日は暮れてゆきました。
普通、夏のキャンプの夜に行うのは「肝試し」ということになっています。(と、一緒に来た大学生は張り切っていました。)
どうやらプランを練ってある様子で、それなら乗ってあげましょうと、私たち中学生がそれぞれリーダーとなり、
小さい子供達何人かずつと組んで回ることにしました。
実は怖がりだった私は、小学生の子に「大丈夫、怖くないよ。」と声をかけることで自分を安心させてもいたのでした。
歩くコースはキャンプ地後ろの山手にさしかかった所。左側が山、右側が林にはさまれたなだらかな坂道を歩いて行き、
少し急なカーブになった手前の窪地の奥にある祠(たぶんお地蔵様)でカネを鳴らしてお参りし、戻ってくるというものでした。
中には半ベソかいてる女の子もいましたが、道は単純で、所々にひそんでいたお化け役の大学生が「ワーーッ!」と
飛び出してくるのが逆に面白く、スムーズに肝試しはすすんでいきました。
お地蔵様のカネを鳴らしたとたん現われたのには驚きましたが、「蚊にくわれたあ〜〜。」と体中掻いてる姿に大笑いしたものでした。
そしてなごやかに肝試しやその後の花火大会も終わり、割り当てられたテントに入り就寝の時間になるのですが、
興奮していて寝れるものではありません。
外へ出ると大人の人に怒られるので、寝転んだまま友達と話続けます。
すると友達が、「あの消防士さん、カッコイイよねー。」と言い出しました。
キャンプに参加している大学生が、消防士をしているという友達を連れて来ていて、その人がちょっとカッコよかったんです。
「うんうん、私もそう思う〜。あの人、お地蔵様の後ろにいて、蚊にいっぱいくわれたーって叫んでたねー。」
「面白かったねえ、顔出した時はびっくりしたけど。」
「うん、あんなとこにいると思わなかったしね。」
「他にもあちこちに隠れてたね。」
「出てすぐの草むらでしょ〜。次のカーブのとこに一人と〜。」
「うん、それと右の林からも出てきた。」
「それから大きな岩の後ろと〜。」
私達はそうやって驚かせ役をやってた人を数え始めました。
「・・・あれ?」
「どうしたの?」
「一人多い・・・。」
「何言ってんの、数え間違いだよ。いい?草むらと、カーブと、林と、岩と、土手の上と、最後のカーブの奥と、
お地蔵様と・・・手前に一人・・・あれ?」
「ね、8人になるよね?7人のはずなのに。」
「・・・誰かが移動してるんだよー。」
「ううん、だったらすぐ分かってたよー。」
「待って、え〜最初のがTさんて人で、次がOさん、林からがJ君で・・・。」
「・・・それと〜あのカーブの奥が分からないな。お地蔵様が消防士さんで、最後がUさん。」
「それだけじゃん。」
「え?」
「来てる人、みんな名前言ったよ。」
私達は、何回も来てる人の名前と、その人がいた場所を確認しました。
そして何回照らし合わせても、最後お地蔵様から左手の山道へのびたカーブの奥にいた人が分からなかったのです。
「明日、聞いてみよ。大人の人が誰かやってたのかも。」
「うん・・・。」
そしてあくる日、大学生や、肝試しに行った他の子にも聞いてみたけれど、誰も分からないと言います。
確かに他の子も、あそこに一人いた、と言うのですが、大学生の人達は誰もそんなとこに立たなかったと言うんです。
あんな奥に立っても意味ないし、と。そして大人の人も行ってないと。
ましてあの時間、通りかかる人もないだろうし、偶然歩いてたとしても、暗い山道にずーっと立っているなんて変です。
じゃああれは誰だったんだろうと、皆が騒ぎ出したのを大人の人にたしなめられ、怖くなってきたのもあって、
もうその話題には触れないでおこうと皆で話しました。
さて、その日は再びプールで遊んで帰る予定だったので、歩いて昨日の県営プールまで行きました。
すると入り口に人が集まっています。
どうやら中に入れない様子。
大人の人にくっついて前まで話しを聞きに行き、私達はショックを受けました。
昨日私たちが帰った後すぐ、一人の男の子がプールの底に沈んでいるのが発見されたそうです。
私たちが泳いでいた時、ひょっとしたら横で溺れて助けを求めていたのかもしれません。
私たち一行はかなり大声で騒いでいたので、誰にも気付かれなかったのでしょうか。
子供の水死事故があったためその日は遊泳禁止になり、私達もショックを受けたままキャンプ地に戻りました。
予期しない出来事だったので、そのまま帰る時間まで自由行動ということになりました。
私達は大学生のグループに話をしに行きました。
ひょっとしたらあの時の人影は、そのプールで溺れた子供だったのかもしれない。と誰かが言い、
その時一番近くの場所であるお地蔵様のところにいた消防士さんに、何か気がついたか聞いてみました。
彼はずっと考え込んでるふうでしたが、
「あの時、そこの道には何も見なかったし、誰かがいたとかも分からなかったけど・・・、隠れてて、一度足音とベソかいたような声がしたから、来た来たと思ってみんなにやったみたいに顔出したんだよ。でも、誰もいなかったんだ。 あれ?と思ったけどすぐ次のグループが来たからタイミング間違えたなーって思っただけで。でも・・・よく考えたらその足音と声、前の方からじゃなくて横の方からだったような気がする・・・。」
その後、夏の体験談として他の何人かの友達に話しましたが、結構よくあるパターンとして片付けられてしまいます。
今でもあのカーブに立っていた人影を思い出すことができるし、私一人だけじゃなく、大勢が体験したケースとして第一話目にもってきました。
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