ちょっと怖い体験談
第十話:「私じゃない」
私が小学6年生の夏休み中のことでした。
理科係・飼育当番等を兼任していた私は、夏休み中もほぼ毎日学校へ行ってクラスの花壇に水をやったり、
うさぎやニワトリなどにエサをやったりしていました。
たいてい各クラスから一人か二人は出ていたので、学校へ行くといつも何人かの友達に会うことができ、
そのまま校庭で遊んだり職員室へ入って先生にアイスをねだったりして、毎日の当番を楽しんでいました。
学校へ来ると、まず職員室で水やりカレンダーに丸をつけ、ジョウロで花壇に水をまいた後、エサ箱からウサギにやるエサを取って与え、そしてその頃教室で飼っていた金魚等にもエサをやるため先生から教室のカギをもらって4階の教室へ行きます。
今考えると、よく一人で誰もいない4階の教室まで行ってたなと思うのですが、その頃はあまり恐怖心が無かったのか、昼間だし、校庭で他にも来てる友達が大勢いたのもあって、まるで平気だったのです。
教室での仕事を終え、廊下に出た時、廊下の向こうの方でも人の動く気配がして、同じように教室に来てる子がいるんだと思いました。
廊下を歩いている時も、私の足音にかぶって、後から来る足音が聞こえます。
私の足音が反響してるのではなく、私のコツンコツンに対して、コツコツコツという音なので誰かが来てるのだと思ったのです。
知ってる子なら一緒に行こうとしばらく待ちましたが誰も来ません。
違う階段で降りたかなと思い、私は中央階段を降りて行きました。
すると、やはりまだ追いかけてくるように、少し早くコツコツコツと足音が聞こえます。
振り向いても誰も来ないし、ちょっと早足で階段を降りました。
4階から3階へ、3階から2階へ。
途切れ途切れに足音は聞こえてきます。
その頃中央階段の1階から2階の間の踊り場には、片方の壁に、一つの壁一面と言えるほどの大きな鏡がありました。
何年も前の卒業生からの卒業記念品でした。
大きいので、鏡にはかなり広い範囲で後ろが映って見えます。
その鏡の前まで来た時、思わず見た鏡の斜め上の方には、私が今降りてきた3階からの階段の、一番上までが映り、
そこには何か黒っぽい影のような人物が立っていたのです。
階段を降りて回り込んだ所を思わず鏡に映っちゃった、という感じでその黒い人影は立ち止まりました。
そして私が振り向くと、ちょっと困ったように(真っ黒だから顔の表情などは分からないけど)すっと消えてしまいました。
私の影が映っただけなら消えるはずはありません。
今のはなんだったんだろうと思いながら校庭へ出ると、同じように当番で来ていた他のクラスの友達が私を見て
「あれえ〜。」とか「早い〜〜!」とか言います。
「何?どうしたの?」と聞くと
「降りてくるの早いねーー。さっき上で手を振ってたのにねーー。」
私が4階の窓から、校庭にいる彼女達に手を振って彼女達も振り返したらしいのです。
そして顔を引っ込めたと思ったらすぐ降りてきたのでびっくりしたって。
でも私は4階で手なんか振っていないのです。
なのに皆は、あれは絶対私だったと言います。長い髪を三つ編みにしてたし、白いブラウスも同じだったと。
でも私じゃない。
さっき見た人影が私とよく似てた子でその子なんだろう、と思いましたが、4階にあるのは私の学年だけ。
そして 他のクラスで夏休みの当番に当たってる子は、その時皆、校庭に出ていたのです。
4階で手を振ったのは誰だったのか、私が見た人影は誰だったのか、その時は分からず終いでした。
ところが一年後に意外な所から話しが出ます。
それはまた次の話しで・・・・・。
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