ちょっと怖い体験談



第四話:「帰宅・(二)」


祖父のお通夜の後のことです。
通夜・告別式の会場は、祖父の家に近い自治会の会館で行われました。
祖父は伯父の家族と暮らしていて、私の小さいいとこもいます。
家と会館が近いため、父や伯父達は通夜の式の後、会館で夜通し過ごし、母や私達は伯父の家で寝ることにしました。
他にも遠方から来られた親戚の人が泊まったので部屋も布団も足りなくなり、私は小さいいとこの部屋にいたのですが眠れず、
居間のソファーで夜中テレビを見ていました。
すると突然、伯父の家で飼われている犬のミックが吠えたのです。
ミックはもうかなりの年寄り犬でおとなしく、今まで吠えた声を聞いた事があったかなと思うくらい吠えない犬なんです。
その日も、多くのお客さんで家中がごった返し、どれだけの人が出入りしても吠えなかったミックが吠えた。
私はとっさに、泥棒だと思いました。
お通夜で夜になっても人が出入りするため、玄関に鍵をかけていなくて、それを知った泥棒がどさくさに忍び込んできたのではないかと。

玄関へ出て辺りを見回したけど誰もいず、犬小屋へ近づきました。
「ミック、どうしたの?」となでてやると、ミックは異常に震えています。
確かに冬でしたが、もっと寒い日でも、こんなに震えていたことはありません。
雑種だしおじいさんだけど寒さには強いんだよと伯母さんが言ってたし。
しばらくミックをなでていたら、
「ワアアッ!!!」と後ろでいきなり叫び声がしました。
「うわああ!!!」と私もびっくりして立ち上がり振り向くと、そこに立っていたのは叔母さんでした。
祖父の娘(父の妹)である叔母さんは、今まで遺体のそばにいたけど、やっぱり疲れて来たからこっちで寝ようと戻ってきたらしい。
「も〜〜びっくりした〜〜〜、こんな時間に何してたの?」と聞かれたので、私はミックが吠えたからと説明しました。
「ふうん、どうしてだろうね、私が来たからかな。」と叔母さんは言い、家の中へ入って行きました。
私もその後へ続き、叔母さんが階段を上がって行ったのを見ながら、1階の居間へ入ろうとした時です。

ビシッ!バキッバキッバキッ! パンッ!パンッ! ダンダンダンダン!

玄関から正面の階段にかけてものすごい音がしました。

家鳴りという現象は知っています。
気温や湿度などの変化によって家屋の木材がきしみ、音をたて、
ラップ音といわれる心霊現象の多くはこの家鳴りなのだそうです。
けれども今の音は、私が今まで聞いた事も無いくらいのすさまじい音でした。
そして最後のダンダンダンという音は、まるで乱暴に階段を上がっていくような音だったのです。
大きな音だったので、今上がったばかりの叔母さんも気が付いたかなと思ったけど、誰も降りて来ないし
その後はしんと静かになりミックももう吠える気配もありません。
あまりの音に少しドキっとしましたが、私もそのまま居間で朝を迎えました。

あくる朝、起きてきた叔母さんにあの物音の事を聞きましたが、叔母さんは少しも気付かなかったと言います。
叔母さんが上がってすぐの事だし階段を上がるような音もしたのに何も聞こえなかったそうなんです。
変だなと思っていた私に、話しを聞いていたその家の伯母さんが言いました。
「それ、きっとおじいちゃんね。おじいちゃんが○○さんについて家に帰ってきたんでしょう。 
ミックね、吠えない犬なんだけど、どうしてかおじいちゃんだけには遠くからでも吠えてたの。
ミックが子犬の時から厳しくしつけてたからおじいちゃんを怖がって、おじいちゃんが近づくと吠えてね。
それをおじいちゃんがまた叱るから、おじいちゃんを見ると震えちゃって。」

やはりあれは祖父だったのでしょう。
普段、遠方に嫁いただめなかなか会えないで居た叔母さんについて家に入ってきたのだと思います。
犬や猫など、動物は敏感に気配を察知するといいますから。 たとえ実体がなくても。
時々、誰もいない空間に向かってシッポを振っていることだってありますよね。



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