私服刑事2

コーヒーをこよなく愛する福田嘉徳は夜勤明けで疲れた体をタバコと缶コーヒーでさらに虐めていた。そうやって自分を虐めることで、夜勤が終わったことを身体に再認識させるのが彼の習慣でもあった。そんな彼の携帯が署内に鳴り響く。が、彼はお構いなしに帰宅する準備を整える。もう一度、同じ相手から電話がかかってくるころにはすでに北越署を一歩外に出たところだった。ため息をつきながら通話ボタンを押す。

「もしもし」

「一回目で出ろよ〜、もうパチンコ屋行ってるかと思ったじゃん」

「今日はなんだか疲れたから行かないよ、マカロニは今日休みだよね?行ってるのかい?」

「それがさぁ〜デカ長から電話かかってきて休みが台無しなんよ〜。」

「へぇ、珍しいね、どんな用件で?」

「それで、電話したんだけど、警察学校のころの友達が刺された。今、意識不明っぽい。」

「それで?」

「できることなら力を貸してほしいんだけど・・・・。やだ?」

「やだって言ったら?」

「通ってることをデカ長に報告します。」

「わかった。とりあえずこれから署に戻る。それでいいだろ?」

「恩にきるよ〜、革ジャン。」

「何かわかったら連絡する。またな。」

またため息をつきながらやっぱり電話に出なければ良かったと思いつつ署の中に戻る。
署内はいつものように事件の多さに忙殺された雰囲気が漂っていた。
とりあえずマカロニに力になってやると言ってしまった以上、手を抜くわけにはいかない。あのことをデカ長に報告されるのは絶対に避けなければ。
自分の机に戻った福田は見慣れない奴がいることに気が付いた。
北越署の刑事にしてはしっかりとした格好をしている・・・。全身ブラックスーツに白のワイシャツ、黒のレザータイ。
葬式帰りか?
配属されて以来、革ジャンにジーパン、おまけにウエスタンブーツというスタイルを貫き通している彼にとっては、サラリーマンにしか見えない。

「デカ長、あそこの葬式帰りみたいな奴、誰ですか?」

「あぁ、お前には紹介がまだだったな。今日から北越署に配属になった五十嵐君だ。葬式じゃなくて、FBI帰りだそうだ」と、五十嵐を呼びつつも紹介してもらう。

「五十嵐 聖だ。よろしく。向こうではマティーニと呼ばれたので、そう呼んでくれ。」

「俺は福田嘉徳。革ジャンと呼んで・・・。」と、言ったころには五十嵐は自分の席のノートパソコンに向かっていた。

なんかいけ好かない奴だなと思いつつ、デカ長にマカロニから聞いた事件について聞いてみる。

「あぁ、あの事件な。どうやら、手違いでうちの管轄外になるらしい。だから、あんまり手を出すなよ。」

どう手違えれば管轄外になんだよと言いたかったが、夜勤明けの革ジャンはこれ以上深入りせずに、家に帰ることとした。
が、マティーニの態度が癪に障ったので、パチンコに行くことにした。ちょうど今日新装開店のチラシを先程拾ったばっかりだ。
道に落ちているゴミは拾う。なぜなら彼は自然をこよなく愛しているからだ。

パチンコ屋につくと、爆音だらけの店内を貫く怒鳴り声が聞こえた。

「ぜんぜんでねぇーぞ!!!」

・・・・・なんだか聞き覚えのある声だ。
店内を探すと見覚えのある格好をした男が店員にからんでいる。やっぱりあいつか・・・・。

なおも、もめている奴と店員との間に割って入って奴を一発殴る。
我に返ったマカロニがはっとした表情で言う。

「なんで革ジャンがここにいるんだよ!? 署で情報収集してんじゃなかったの?」

「それはこっちのセリフだ」と言い放つとマカロニのすぐ隣の台に座り新台を打つ。下を見ると吸殻ばかりが散らばっている。
マカロニが灰皿が取り付けられているのに床に捨てているからだ。自分が出ていないとき、マカロニはいつもこうゆうしょうもないイヤガラセをする。
その床に落ちた吸殻を一つ一つ拾い上げ灰皿に戻す革ジャン。

「今日はちゃんと拳銃を携帯しているか?」と革ジャンは何気なく聞いた。マカロニは一度の拳銃携帯を怠り、死にかけている。
その時にマカロニの命を救ったのが革ジャンで、彼らはそれ以来、こうやってプライベートでも遊ぶ仲間になった。

「えーっ!!!?」店内がうるさくて聞こえないらしい。

「拳銃持ってるか?」

「あぁ、今日は急ぎなんで家に忘れてきた。」

学ばない男だと思いながらもスーパーリーチに興奮する革ジャン。

2時間後、二人はパチンコ屋に貯金したと自分に言い聞かせながらも店を後にした。

マカロニと別れた後、今日が夜勤明けだということをすっかり忘れていた革ジャンはパチンコで負けたこともあり、週末の夜を有意義に過ごすため、行き過ぎて常連になってしまったフィリピンパブへとその棒になった足を進ませるのだった。

 

次いってみよ〜