北海道日記PART5
五稜郭公園の入り口にて激しい戦いの結果、大物アザラシをしとめたことで、我々はとりあえずそれまでのビミョーなテンションをなんとか上げることに成功し、いよいよ五稜郭公園の敷地内へと入っていった。
敷地内をとりあえず、てきとうに歩いていったのだが、いま思い出してみると我々は何を目的として、歩いていったのか分からない。アザラシをしとめたハイテンションの勢いだけで、目的もないまま歩き出していたのだった。
「とりあえず進んでいけば、何か見物するものがあるだろう」という軽い気持ちで我々はひたすら奥へと進んでいく。しかし、敷地内を歩き始めてかなり経つのに何も見つからない。あたり一面、真っ白な雪が広がっているだけだ。それどころか、我々以外の見物客を全く見かけない。「そういえば、さっきタワーの展望台からここを見た時に誰も人がいなかったような気がする・・・。」という不安をごまかしつつ、さらに奥へ奥へと進んでいくうちに、歩いてきた道がわからなくなるという初歩的なミスを犯す。早い話が迷子である。しかも、あたり一面雪の中での迷子ということで,まるで遭難したかのような気を起こさせる。我々は「せっかく遭難したのだから・・・」というよく分からない理由で、一枚の記念写真を撮った。
つい最近、その写真を見たのだが、疲れきった様子の皆の中で、FとHの首から上が写ってない・・・・。かなり不気味な写真だ。写真から推測すると、写したA石のミスのようだが、こんな心霊写真のできそこないのようなものをもらっても嬉しくない、ほとんどイヤガラセに近い気がする。特に首なし人間にされてしまったFとHは、どんな気持ちでこの写真をもっていればいいのだろう?この写真を撮ったA石に小一時間ほど問い詰めたい。
後で知ったことだが、五稜郭公園は現在は桜の名所として知られ、5月上旬〜中旬には約180本の桜が咲き誇るそうだ。つまり、その時期以外は、あまり見所がないということである。我々は、何の見所もない五稜郭公園を必死に歩き回っていたのである。タワーの展望台から我々の様子を見ていた人がいたら、アザラシ狩りをしたり、何もない公園内をひたすらアリのようにうろうろ歩き回る我々を見て、かなりの不信感を抱いたことだろう。
結局、遭難者となってから一時間ほど歩き回った末、なんとか公園内から抜け出したのだが、その頃には時計の針はすでに一時を回っており、歩き回ったせいもあって、みんなかなり空腹な状態だった。とりあえず、我々は昼食をとるためラッキーピエロという店に入ったのだった。 ラッキーピエロとは、函館で絶大な支持を受けているファーストフード店である。あのGLAYのメンバーもよく利用していたらしい。特にJIROは常連だったとのことだ。10種類以上のハンバーガーの1番人気は、甘く味付けされたチキンのから揚げをサンドしたチャイニーズチキンバーガー300円。その他のサイドメニューも充実している。函館に行くことがあれば一度は訪れてみるといいだろう。まるでラッキーピエロの宣伝部のような説明になってしまったが、気にしないでほしい。
そんなラッキーピエロに入り、各々がゆっくりと食事を始めた時だった。いつもちょっと遠いところを見ているようなA石の目が、珍しく、じーっとある一点を見つめている。見つめる先は女子高生だった。あまり知られていないが、A石は、暑い時も寒い時も、そして悲しい時も切ない時もミニスカでルーズという格好の女子高生が大スキ!という隠れ女子高生ジャンキーである。そんな彼は、店内にいる女子高生の中で一番の上玉を麻薬犬のような嗅覚で素早く発見していたのだった。 彼が見つめるその女子高生は確かにかなり可愛い、そしてミニスカから伸びる見事な美脚を惜しげもなくさらしていた。彼はその娘をかなりの時間見つめているはずだったが、一向に視線をそらす気配がない。それどころか、さらに熱すぎる視線を送りつづけている。はっきり言って、視姦状態だ!そして我々が少し心配になった頃だった。
彼は「カワイイよなぁ、あの脚をなめてでもつきあいてぇ〜!いや、踏まれてもいいな・・・」と、甘くかすれた、ちょっとヤバいようなうっとりした声をあげたのだった。女子高生を見る彼の目は、すでにいくらか潤んでいた。しかし、おそらくその女子高生はA石がたとえ脚をなめたとしても、100%つきあわない。付き合うどころか、確実に警察に通報するだろう。我々はA石がハァハァしすぎて逮捕されないことを祈りつつ、静かに食事へと戻るのだった。
食事も終わりに近づき、我々はタバコを吸ったり、トイレに行ったり、女子高生にしつこく視線を送り続けたりと基本的に平和な時間を過ごしていた。函館は、やはり寒いからだろうか、みんなトイレに頻繁に行くようになっていた。この時も食事が終わり、トイレへと向かったKとHがトイレから戻ってきて、二人はこんなことを言った。「ここのトイレなんだか変わった造りになってるよ。一度行ってみるといいよ。」と。二人がトイレから戻ってきたので、トイレに向かおうとしていたFは、「どんなトイレだろう?」と、気になりながらもとりあえずトイレへと向かって行った。
実際にFがトイレに行ってみると、そこは確かに変わった造りのトイレであった。普通のトイレは、大と小のスペースを仕切っているものだが、この店のトイレは、そのように仕切っていない。せっかく大と小の便器を用意しているのに、このように丸見えでは実質一人用のトイレと変わらない。(詳しくは下の図参照、「余計にわかりにくいよ、これ。」とかは言わない)


このトイレの設計者の意図がよく分からないまま、とりあえずFはカギをかけ、大の方へと進み、ジーンズをひざまで下ろし便座へと腰掛けるのだった。その時、ドアの方からなにやら音がするのを彼は耳にした。どうやら、誰かトイレを使用しに来たらしい。しかし、ドアにはカギをかけたので入ることは出来ない。入って来れないはずだった。
しかし、Fは、何気なくドアの方に眼を向けた時に驚愕した。かけたはずの回転式のカギがゆっくりと開の方向へと戻り始めているではないか!どうやら、カギがきちんとかかっていなかったらしい。一気にパニックに陥るF。ジーンズをはき直さずに、急いでドアまで行けば再びカギをかけられるかもしれない。しかし、それでは間に合わなかった時に、ジーンズが下がりっぱなしでパンツ丸見えのマヌケな姿をさらすことになる。
迷っているうちにカギは今にも開きそうだった。
Fの頭のなかに住み着いているゴン中山が「あきらめるな!まだロスタイムがある!!」と叫んでいた。
「運命とは自分で切り開くものだ」という人がたまにいるが、人生にはどうしようもない抜き差しならない状況というのが確実に存在します。その時がそうだった。カギが完全に開の方向へと戻りきってしまったのだ!距離にしてわずか数メートルだが、カギをかけ直すにはもはや物理的に不可能な距離となっていた。そしてゆっくりとドアは開いていった。
「!!!」 Σ(´Д`;)ドアを開けられたFが見た人物は、彼がよく知る人物だった。Fは、その人物を見て「ウギャー!!」と、特撮ヒーロー物の下級戦闘員のような悲鳴をあげた。
「!!」 Σ( ̄□ ̄; そこには、唖然とした表情のA紀がドアノブを握ったまま立っていた。
顔を見合わせる2人。ただでさえ気まずい状況なのに、互いが知り合いなので気まずさは3倍増である。Fは自分の大事な場所を隠して、ちょっと前かがみのような姿勢だ。A紀は、状況が飲み込めずまだ唖然とした表情だ。時間にすれば、わずか数秒足らずだが、この2人には非常に長い時間に感じられた。
「あははは。」と笑いながら、急いでドアを閉めようとするA紀。巨人軍の原監督のような爽やかさだったが、笑い声は乾ききっていた。やはり、人間、こういう状況では笑ってごまかそうとするらしい。実に日本人らしい対応である。
あとに残されたFは、しばし愕然とすることしかできなかったが、何とか立ち直り、とりあえずカギをかけなおすのだった。そして、今度は異常なまでにカギのかかり具合を確かめるのだった。
17世紀のイスラムの哲学者、タジーフ・サシーヒによると、人は人生で大きな3つの屈辱を受けるという。
一.自分の容姿について侮辱された時
二.自分の信念を否定された時
そして、三番目が、自分のトイレ姿(大)を他人に見られた時、であるという。
その三番目の屈辱を受けてしまったFの心は、気まずさ、羞恥、喪失感で満たされていた・・・。
トイレから出てきた彼は、このトイレの設計者にどういうつもりでこのような設計をしたのか、小一時間問い詰めたかった。激しく問い詰めたかった!しかし、ここにいない人間に怒りをぶつけることはできず、とりあえず、八つ当たり気味にA紀に怒りをぶつけるのだった。
無論、怒りをぶつけられたA紀も「カギをちゃんとかけなかったFが悪いんだよ!」と言い返し、お互いに自分の非を決して認めようとしない。不毛すぎる議論は平行線をたどり、二人の間には、気まずく、重い空気が流れるのだった。
えー、個人的な見解を言わせてもらうと、開けてしまった人は気まずい思いをするだけですみますが、
開けられた人は気まずいだけでなく、羞恥、悲しみ、屈辱などその他さまざまな感情にさいなまされます。
そして、人として何か大切なものを失ったような気になります。泣きたいような気持ちになります。
泣きますよ?ええ、はっきりって泣きますよ・・・・・(つд`;) 。
争いに決着のつかぬまま店を出て、函館駅へと我々は歩を進めたのだが、その間もFとA紀は、会話は交わすものの、互いに目を合わせないという気まずさを漂わせていたのだった。
そして、この旅行中にこの2人が一緒にトイレに行くことは二度となかった。こうして、FとA紀にとっては苦すぎる思い出を函館につくり、札幌へ向かうために函館駅へと我々は歩を進めたのだった。
追記
つい最近、作者が弟にこのトイレ事件を話したところ、「トイレの最中にドアを開けられるという、あの伝説の大技が炸裂するなんて!!! すごいや!ラピュタはほんとうにあったんだ!!」って大感動していました。
でも、検索してみると意外に珍しくないみたいです。→ http://www.google.co.jp/search?hl=ja&inlang=ja&ie=Shift_JIS&q=?g?C???I?h?A?@?@?J? ̄?c?e&btnG=Google+???o&lr=
写メールを持ってると600万人が励ましてくれるそうですが、同じ経験をしたこの約100人にFくんは励まされているとかいないとか。
しかし、これはつまり、ラピュタは意外にどあっとたくさん飛んでるということでしょうか?(えー)
それとも、実は青い鳥はチルチルとミチルの家にいたのです!山ほど!って感じなのでしょうか?(ええー)
ひょっとしてひょっとして、三千里のたびを経たところにはお母さんが三千人くらいいた、って感じなのでしょうか(しつこい)。
というわけで、よい子向けのタメになるお話は置いといて(えー)、再開したばかりのこの企画ですが、あっという間に作者がやる気を失っています。続きはいつ書くか分かりません。どうしても続きが読みたい人は、また掲示板で催促してください。