私服刑事

 

「いつまで寝てるんだ? ばかもんっ!!」

黒電話の向こうから聞こえてくる怒声と罵声に満ちた刑事長(デカチョウ)の声が一発で目を覚まさせた。

「今日は非番なんっすけど・・・。」 一応言ってみることにした。

「大ばかもんっ!!」

「新越谷病院だ。早く行け!!」  そう言うと電話は一方的に切られた。

眠い眼をこすりながらも藤田飛沙史はぶつぶつ文句をいいながら準備を始めた。

「つーか、今日は俺、休みじゃん・・・。はぁ〜めんどくせぇな〜。」

いつもどおり髪の毛を立てて、お気に入りのレザーパンツに足を通すころには電話から30分が経過していた。

病院に行けと言われただけで詳しいことは何一つ聞いていないが、やはり事件なのだろう。そう思いながらママチャリをこぐ事、10分で病院に到着した。

受付で、北越署の者だと名乗るが、格好で判断されたのか、信じてもらえず、警察手帳を見せ付けてやる。するとすんなり看護婦が病室に案内してくれることになった。警察手帳の威力に驚きながらも、手帳を見せなければ信用されない自分に凹んだ。病室まで案内してくれた看護婦は若く愛想のいい看護婦だったので、藤田は危うく一目惚れしかけたが、案内された病室の名前が彼を現実に戻した。

赤司直輝様

赤司と藤田は警察学校からの友人だった。警察の仕事に関する考え方は違っていたが、不思議と気が合う友人の一人だった。

急いでドアを開けて中に入ると、パイプだらけの赤司がそこに横たわっていた。

話によるとお約束のように今夜がヤマらしい。

そんな状態なら集中治療室に入れやれよと内心思った。つーか、その看護婦に言ってやった。

帰ってきた答えはこうだ。

「あいにく、集中治療室は満席です。」

ホテルか?ここは・・・。

今夜がヤマなのに面会謝絶でないということは、医者のドッキリかもしくはもう長くないのだろう。などと勝手なよそうをしながら赤司に近づく。

「・・・・・のブーツ」  

言葉にならない言葉で赤司はうわごとのようにそう言った。

「今、何つった?」

「へ・・び・・・・・。あ・・かのブーツ。かっ・・・こよ・・か・・・った。」

「そいつが犯人なんだな?」  今にも死にそうな赤司を目の前ににして冷静な藤田。

赤司はうなずくと、ちょっと笑って眼を閉じた。

「あかしー!!起きろよー!!!」  

涙声になりながら藤田は叫んでいた。

 

 

 

 

 

「な・・んだよ・・・・。」と赤司。

 

 

 

「・・・・・・。・・・なんだ。死んでないのか、うん。じゃあ、俺は行くわ。」

先程まで涙ぐんでいたのがまるで嘘かのように藤田はそう言うとあっさり病室を出て行った。

家に帰って残りの休暇を満喫するために・・・・。

 

 

 

 

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