私服警官
交番勤務を自分の人生の誇りとしている、赤司直輝はその日も、いつもと同じ時刻に巡回にでた。
これから彼が巡回すべく街は、ここ最近続いている長雨のせいで特異な静けさを醸し出していた。
彼は雨が大嫌いだったため、そんな雨が彼をいらつかせていた。彼の雨嫌いは湿気で髪の毛が広がることからきていてた。いつもきれいにセットしても雨のせいで乱れてしまうのが許せなかった。そんな日はいつもにもまして何度もトイレに立ち、鏡の前で髪型をチェックするのだ。しかし、巡回の時間は待ってはくれない。気に食わない髪型で巡回に行かねばならないことが今、彼の最大の悩みであるだろう。いつものコースをいつもの時間通りに巡回する。
だが、その日はいつもと違うことが待ち受けていたある細い路地に入ったところで一人の男が小便をしていたのだ!
「立小便は国の恥」とは言うけれどもそんなやつは実際に見たことなんてありませんという彼はその男を見てあっけにとられていた。と同時に軽蔑の念が彼の中でわいてきた。だが彼は警官でもあり、一応軽犯罪に相当するわけなのだから、注意せずにはいられない。警官であることを誇りに思っている人間なのだから。一方雨でいらいらしている自分もいる。そこで彼は注意がてら相手をなじってやることにした。自転車を降りてその男に近づく。
「はずかしいなぁ〜。おまえはぁ〜」
男は一瞬驚いたような顔をしたがすぐに小便をやめて、彼のほうに向いた。制服を着ているのだから警官だとわかるのに、彼はわざわざ警察手帳だそうと胸ポケットを探っていて、その男から目をはなした。(彼はつねづね、警察手帳を出す刑事に憧れていた。)
その瞬間、彼の太腿に鋭い痛みが走った。
「ぎゃぁぁー!!」
自分の太腿に手をふれてみるとふれた右手に生ぬるいべとついたものにさわることができた。
その右手を見た彼はお約束のように「なんじゃこりゃー!」
と叫ぶと、それが彼の最後の言葉であるかのように卒倒していった。その瞬間彼の目には赤い蛇柄のブーツが目に入った。
「かっこいい・・・。」そう思うと彼は眼を閉じた。