でんちゃんの「かめはめはぁん♪」

 浪々と流れるアナウンスの中、役員の方に手引きされて私は指定の場所に
向かいました。
意識をしないようにしているのですが、どうしてもテンションは上がっていきます。
頭から考えが流れ出て行くようで、もう頭の中は真っ白状態です。
「落ち着いて!落ち着いて!」
片隅で、ちっちゃなちっちゃな私が必死に声をかけているようなのですが
その声は考えとともに流れて行ってしまいました。
「・・・・〜でんちゃん。」
私の名前がコールされ、ついに出番がやってきたのです。
あぁもうなぁんにも考えていられません。
ゆっくりと右手を挙げ、必死に落ち着こうとするのですが、もう自分が
どこにいるのかさえ定かでなくなってきました。
それでも不思議なもので、自然と動作は身に付いているものなんですね。
「宣誓!私達選手一同はぁ・・・」
そうなのです、選手宣誓なのです。
時を遡る事1ヶ月前、今大会の主催者であるスポーツ振興会のKさんから
連絡がありました。
「実は、でんちゃんに選手宣誓をお願いしたいのですが・・・。」
選手宣誓、そんな大役を私がしてもいいのか!と少々とまどいながらも
私の今までの活躍が認められたんだなぁとちょっとご満悦に浸ったのですが、
Kさんの言葉は続きました。
「毎年傷害区分で宣誓を持ち回っているのですが、今回は視覚障害の番なので、
でんちゃんにお願いしたいのですが、どうでしょうか?」
・・・そうなんですか、持ち回りで順番なのですか・・・、そうでしょう
そうでしょう、そんなところでしょう・・・。
と言った事情で私の選手宣誓となったのです。
いや、そう言う事なら、しっかりこの大役を果たし笑いを取らなければ
いけません!
コスプレにしようか・・・。
これは荷物が多くなりすぎるし、事前にバレてしまうので取り押さえられる
可能性がありますので却下。
では、視覚障害を利用してプールに落ちると言うのはどうであろうか。
これはこれで面白いかも知れないが進行を妨げてしまう恐れと、ジャージを
着用しているはずなので、後で自分が辛い事になりそうなので却下。
やはり簡単に、宣誓の内容で笑いを取る事にしましょう。
まぁ、これもあまり過激になり過ぎても不興を買う事になりそうですから
一言だけ入れるようにしました。

「 宣誓、私達選手一同は 心から水泳を楽しむとともに
力一杯泳ぎ切る事を誓います!
平成15年8月31日、いつの間にか 選手代表 ででんのでんちゃん!」

実は、宣誓の間、先にも書きましたように頭真っ白状態でしたので、
このように喋れたのかどうか覚えていないのです。
セリフが終わった後に、横の方でクスクスと笑いが漏れていましたので、
なんとか成功したのではないかと・・・。
ただ、考えのまとまらない頭で唯一考えていたのが、左手に杖、右手を高く
上げた姿勢って、「カメハメハ大王」ってこんな姿勢だったのではと
言う事でしたぁ。:汗:

こうして私の2003年京都水泳大会は幕を閉じたのでした。

 幕を閉じたかったのですが、やはりこれから試合が始まりますので
続けなければなりません。:涙:

 さて、今回の出場種目は「25m背泳」と「50m平泳ぎ」そしてクラブ対抗の
「100mリレー」の3種目。
いずれも予定では昼からの種目となっているため昼までの時間をどう
過ごすかが問題ですです。
それでも2時間ばかしなので、なぁんにもせずにあっちへブラブラ、こっちへ
ブラブラとたまにストレッチをしながら過ごす事になってしまいました。。

今回も昨年同様に「記録を作ろう!」がキャッチフレーズ:笑:なのですが、
ここで問題が一つ、果たして自分がどれだけのタイムで泳げるのか、他の人の
記録の情報が全くないと言う事実なのです。
いやぁ、目標がないと言うのもなにか頼り無いものですぅ。
そんな事には全く関係なく、プログラムは進み、やがて背泳25mの召集、
出場とどんすかどんすか進んでいきます。
いよいよ私の組が回ってきました。
水浴びをして、選手コールを待っている時に、
「えっと、飛び込みやね。」
と役員の方が一言・・・。
「?、いえ違いますけど。」
これを聞いてちょっと怪訝そうな声で
「水中スタートなの?・・・。」
まぁ、水中スタートには違いはありませんがと思っていると、隣のコースの
役員さんから助け船がでました。
「あっはっはっはっ、背泳じゃ飛び込みはできないよね。」
えへへ、別の種目と勘違いされていたようですです。
飛び込みできれば、かなりタイムは縮まりますです。
さてさて、そんな事を考えているうちに、
「第○コース、でんちゃん」
とコールされ、ホイッスルとともにいざ水の中へ。
両手でコース台のバーを握り、ぶら下がるようにして次の合図を待ちます。
「用意」の号令でググッと身体を引きつけ体中の筋肉をギュゥゥと収縮させると
いつでもスタートはOKですです!
ドックン、ドックン・・・。
きっと数秒も経っていないはずですが、長い時間、この姿勢で待って
いるようにさえ感じます。
まるで脱皮前のセミの幼虫になった気分です。
って実際にセミの幼虫になった事はありませんから、定かではありませんが。
そしてついにスタートの合図が!
バーを突き放すように両手を斜め上方に突き放し、身体を大きく反らせながら
壁を蹴り出しました!
気持ち的には、陸上種目の走り高跳びの背面跳びのような感じですが
外から見れば、背中で水を押し退けるように見えているかもかも。
しかし、どのように見えていようとも、私はこの瞬間が一番好きなのです。
泳ぐと言うより空を飛ぶ感覚に近いのです。
ゆっくりとした時間の中で、やがて手、頭、身体が水に触れ、水中へと
突き進んで行きます。
足先まで水に入った時点で、バサロキック(バルセロナオリンピックで
鈴木 大地さんが金メダルを取った時の逆ドルフィンキックです。)を始めます。
が!なんとした事でしょう、蹴り上げた足が水上に飛び出してしまったでは
ないですか!
どうやら思っていたより浅い位置にいるようです。
まぁ、もともと見えずにバサロキックを続ける事は、下手をすると
隣のコースに行ってしまう恐れがあるため、それほど続けるつもりは
なかったのですが、まさか最初から足が飛び出してしまうとは。
とにかくバサロキックを打ち切り、プル(腕の動きです)を使い水面に浮上。
ザンッザンッザンッザンッザンッザンッザンッザンッザンッザンッ!
左肩に痛みを感じながらも(五十肩ですぅ。)ローリング(左右の身体の揺れ)を
大きくする事で負担を軽くし、一路ゴールへ。
恐れていたコースロープへの引っかかりもそれほど起こらず、何度か接触する程度!
自分でもビックリクリクリクリックリ!(笑)
と思ったのも束の間、とても息苦しくなってきました。
背泳の場合、呼吸のタイミングは前方に伸ばした手賀書き始めに息を吸い、
プッシュで吐く、もしくは片手の動きで吸い、反対の手の動きで吐くの
2種類がありますが、私は後者の右手のかきで吸い、左手の動きで吐くで
行っているのです。
いつもはそれほど気にもせずに呼吸を行っているのに、今回はなぜか吸気時に
水を被りがちになってしまっていて、充分な吸気が得られていないのです。
少し慌てながらも、左手の突っ込みを大きくし、その反動を利用して水面に
浮上するように変更。
身体の縦揺れが大きくなってしまいますが、背に腹は換えられません。
呼吸が安定して一安心♪
その時になにかが当たったような気がしたのですが、気にも留めなかったの
ですが、合図棒で叩かれたと気づくのに時間はかかりませんでした。
どうやら波を被っている時に叩かれたようで、水がクッションになって判らなかったようです。
すぐさまエントリーしている手を頭の前に!
タッチィ!!!
肘を曲げた状態でのゴールタッチ、あやうく頭突きゴールするところで
ございました。::汗
身体を起こし、タイムを聞くと・・・。
「19秒65です。」
19秒・・・。
うーーーん、ここで問題が。
このタイムどうなのでしょうかねぇ・・・?
早いのか遅いのか・・・。:爆:
ほとんど背泳のタイムなぞ計った事もなく、他の人が泳がれているタイムなど
気にもした事がないのですぅ。
とりあえず20秒を切ったと言う事で、よし!としておきましょう。えへへ

プールから上がり、手引きをしてもらって戻る途中で、後ろからなにやら話声が聞こえてきました。
「もろ顔面に入ったね。」
「でも、合図が判らないより、思いっきり叩いてくれって。」
どうやら合図してくれたIさんと、役員の方が私の顔面に合図棒が当たったと
言う話をされているようです。
うん、じぇんじぇん大丈夫でしたよぉん♪なにかが身体に触った程度にしか
感じていませんでしたから。:笑:


 ようやく1種目が終わり、次の50m平泳ぎまで2時間と言ったところです。
召集を含めると1時間30分と言ったところでしょうか。
食事を取るつもりはありませんでしたが、どうしようかなぁ?
やはりギリギリになってしまうのも嫌ですので、自動販売機のカロリーメイト
(ドリンクタイプ、ココア味)で済ます事にしました。
どうせなら、コーヒー味が好きなんですけど、他の種類がないんですぅ。:泣:
腰に手を当て、足はやや開きぎみにしてアゴの角度は45度の正しい姿勢で
ゴキュゴキュと一揆に飲み干して、トイレも済ましブラブラしているのですが、
また遅れるのも嫌ですので(実はさきほどは、トイレに行っている間に
召集がかかっていて、探し回られていましたですです。)、予定時間より
早い目に場所で待っているようにしました。
まだかな?まだかな?
する事もないので、気になる左肩をマッサージしながら、10分、20分・・・。
ようやく召集がかかったのは待ち始める事1時間後。
どうも予定が遅れているようです。
なんと間が悪い。
それでも、1時間もマッサージをすると、さすがに肩も順調に動くように
なってきました。

 予定より、1時間遅れで召集も始まり、プールサイドに移動。
途中で、えらく親しげに声をかけてくれる おじさんがいまして、
「スタートは飛び込みをするのか?合図棒はした事ある?」
などなど方法などを親切に教えてくれました。
どうも選手ではなさそうですです。
すると、別の役員の方が、
「会長、会長、国体出場選手ですよぉ。」
いやはや、話しかけてくれていたのは、スポーツ振興会の会長さんで
ございました。
この大会が初めての出場だと思われていたようで、やはり私はマイナーな
存在だったと言う事を認識してしまいましたです。 シクシク 

「○コース、でんちゃん!」
コース紹介が始まり、ドキドキの50m平泳ぎです。
この平泳ぎも、タイムを計った事はなく、全力で50mを泳いだ事も
ありません。:爆:
ただ、練習で泳いだ限りでは、折り返した辺りでキック力がガクンと
落ちてしまいますので、ピッチを上げて泳ぐより、一回ごとのストロークを
長くして、少ない動作回数で泳ぐ事に注意しようと決めていました。
スターターのホイッスルでスタート台に上り、用意でコース台に手を
かけます。
意識を音に集中するだけで、後の事は全く考えていません。
パァーーーーンッ!
コース台を押し、身体全体を使って、空中に躍りだします。
ザッパーーーンッ!
水中で充分に身体を伸ばし、勢いに乗せます。
スピードが落ち始めた所で、両手を大きくかき、一気に腰の横まで押し切り
再び勢いに乗せていきます。
そしてキックとともに両手を前方に伸ばし、ここでも身体を伸ばして浮上
するのです。
ひとかきひとけりって言う奴ですね。
しかぁし、キックが終わり、さらに身体を伸ばそうとした時に、ポカァンと
水面に浮かんでしまったではないですか!
思っていたより浅い位置だったようです。
オヨヨ・・・。
もう少し ひとかきひとけりで距離を稼いでおきたかったのですが、浮かんで
しまった以上はいつまでも伸びている訳にはいきません。
ザバッザバッザバッザバッザバッザバッ
いつものようにピッチを上げて泳ぎ始めます。
ピッチを上げて・・・、そうなのです、伸びを使って回数を減らすのが予定
だったじゃないですかぁ!
またまた、ちっちゃな私がどこかで大声で叫んでいます。
幸いな事に今回はちゃんと耳に入ってきました。
ストローク(手の動きね。)を大き目にして、キックの後の伸びを長めに
しますが、どうもややもすると手の動きが早くなってしまいがちですです。
それでも伸び伸びしながら泳いでいくと、合図棒がコツンと!
ようやくターンですです。
でも、タッチしようと両手を伸ばすと、手賀伸びきる前に壁にタッチ!
ちょっと合図棒のタイミングが遅かったようです。
いえいえ、壁に激突しなかっただけでも幸いですぅ。
軽く壁を押し向きを変え、再び ひとかきひとけり の水中泳法。
しかし、今度は、あまり長く潜っていると、低酸素状態になる恐れが
ありますので(後半がとても苦しくなるんですです)早々に浮上。
残り半分だよ!
またまた ちっちゃな私が叫んでいます。
後どのぐらいでしょうか?
かいてもかいてもゴールに辿り着きません。:泣:
「まだかな・・・まだかな・・・。」
心拍数、呼吸の回数も増える一方ですが、反面もう力が出なくなっています。
キックも足が動いているだけで、水を蹴っている感じがしなくなって
いました。
ポコンッ
唐突に合図棒が頭に。
思い切って両手を伸ばしゴールイン!
長かった50mを泳ぎ切りましたですぅ。
記録は・・・、記録は・・・、49秒77でした。
う〜ん、このタイムはどうなのかなぁ?
とりあえず、私の区分では記録がなかったので大会新です!バンザ〜イ! \(^▼^)/
でも視覚障害の別の区分で、38秒や48秒の記録がありますからあまり
威張れた記録でもないんですよぉ。えへへ。
プールから上がると、先ほどの会長さんが話かけてくれてきまして、
スタートは上手かったとか、なかなか早かったなどと誉めてもらったですぅ。
キャ〜ッ、照れるですぅぅ♪ (/o/) 

 いつもなら2種目が終わった所で終了となるのですが、今回は後リレーが
残っています。
1時間ぐらいは時間があるだろうと更衣室に向かい着替えようとしたところ
「あっいたいた、でんちゃんリレーの召集に行くよ。」
ガ〜〜〜ン!今泳いだところじゃないですかぁ・・・。
ズルズルと引っ張られてそのまま召集場に・・・。
途中帽子とゴーグルを忘れている事に気付き、役員さんに取ってきてもらう
ハプニングがありましたが、無事に召集も終わり、いよいよリレーです。
このリレーは100mで4人が25mずつ泳ぐのです。
私は唯一の視覚障害と言う事で第1艘です。
プールの両端に二人ずつ分かれてコースに付きます。
団体競技は、個人で泳ぐのとは違った緊張感がありまする。
ドッキンドッキン
コース台に上がり、セット完了。
シーーーンと静まった会場の中をスタートの合図が響き、私の身体は
空中に飛び出しました。
もうピッチを上げて泳ぐしかありませんが、すぐに力を抜くと楽だよねぇ。
と悪魔の囁きが聞こえてきました。
だめだよ!まだまだ泳げるよ!
またちっちゃな私の励ます声が。
危ういところで、ピッチを維持しながら泳ぎ続けます。
不思議な事に、いつもの左肩の痛みはそれほど気にならない程度に
収まっていました。
バシャバシャバシャバシャバシャ
幸いな事に、コースロープへの接触も触る程度で、一気にゴール目指して
泳ぎ続けます。
そろそろじゃないかな?と思っていると、コンッともう感じ慣れた合図棒の感触!
叩きつけるように壁にタッチすると、少しの間があってザッパーーーンと
後方で飛び込む音がしました。
無事に繋がったようです。
ふぅと一息ついてからプールサイドに上がり、後は2・3・4艘が泳ぎ
切られるのを待つだけです。
果たして私の泳ぎはどうだったのだろうか?
ラップタイムを取ってくれないので、どうだったかはよく判らないです。
周囲の音を聞いていると、3艘目が泳いでいる時には、かなりの差を付けて
一位になってはいるようです。
そして4艘目がゴール!
手引きをしてもらってプールサイドをよたよたと歩いている時に結果のアナウンスが耳に入りました。
」第1位 ○○○、タイム 1分06秒」
あっ○○○と言うのは伏せ字ですが、私の所属クラブ名ですですぅ。
おぉ、1位だ!
どうやら大会記録ではなかったようですが、それでも満足満足♪
リレーではメダルはない代わりに「文房具セット」をもらいました。
ちゃんとしたケースにホッチキス、ハサミ、セロテープ ノリなどが
10点ほど入っている物で、メダルよりこっちの方がいいかな:笑:。

 これで全ての私の出番は終わりました。
と同時に大会自体も終了となりましたです。

さてさて、次はマラソン大会を間に挟んで全日本大会でございます。
最近どうも目標がぼやけてきているようなので、もう一度気合いを入れて頑張らなければ!


注、プライバシー保護のため、一部地名、人名などを変更させて頂きました。
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