ホタルさんの「源氏物語へのいざない」

 紫式部の源氏物語は、今から千年も前の平安時代の作品です。
時代が移り変わっても、愛されずっと読みつがれてきました。
何人もの名だたる作家が訳しており、その隅々まで研究されています。
一体その魅力は何なのか、読んで確かめてみませんか。
 私が一番お薦めするのは、瀬戸内寂聴訳の「源氏物語」(全10
巻 講談社)です。
とてもわかりやすい文章で、古典文学という堅苦しさがないのです。
かといって現代小説のように、ぶしつけな感じではありません。
初めて読んでもよくわかるのは、主語をうまく補ってくれているからでは
ないかと思います。
原文は主語を省いていることが多く、いちいち名前を出さず、官位で
書かれているので、それぞれが出世して官位が上がると、ますます複雑になっていきます。
瀬戸内寂聴はそれをわかりやすくするために、名前を付け加えたり、元の
官位を説明したりしています。


 それでは、物語の内容に目を向けましょう。
この物語の主人公は、光源氏・その子供の夕霧・薫・孫の匂宮といった
男達です。
彼らは類まれな美貌と能力の持ち主で、その恋模様が中心に描かれています。
しかし、紫式部が本当に書きたかったのは、男によって翻弄され、
行く末までも決められてしまう女達の方ではなかったかと思います。
男の愛と欲情を拒否するのは難しく、女は死ぬか出家するしかなかったのです。
瀬戸内寂聴は自らの経験をふまえ、源氏物語は出家物語だと表現しました。
ここに出てくる女達のほとんどが出家しています。
女三の宮と浮舟は、どちらも二人の男から逃げるために、若く美しい盛りに
あっさりと出家してしまいました。
なんてもったいないと思う反面、ほっとする感があるのは、私が女だから
でしょうか。
光源氏に最も愛されたヒロイン紫の上が、ずっと出家を望みながらも、
死ぬまで彼にそれを許してもらえなかったことも、女はそれすらも自由には
できなかったのかと哀れに思います。
光源氏の年上の恋人である六条の御息所の嫉妬は、物の怪となって、
彼の女達にとりついて殺してしまったりしますが、無理もないかもしれません。
光源氏が好きになった女は10人以上登場するのですから。
高貴な身分の男は、妻以外の女がいてもよかった時代です。
現代の男性が聞くと、羨ましい話ですね。
男の立場で読むか、女の立場で読むかで、面白みが違ってくるでしょう。
また、ほんのちょっとした脇役でも、個性を持たせて書き分けている
紫式部の人物描写も素晴らしいです。


 最後に、源氏物語のゆかりの地を少しご紹介しておきましょう。
紫式部が源氏物語を執筆する前に、7日間篭ったとされるのは、滋賀県の
石山寺です。
篭った部屋は「源氏の間」として今も保存されています。
(JRびわこ線石山駅下車、京阪電車の石山坂本線に乗り換え、
京阪石山寺駅下車、徒歩10分)
 源氏物語の中で玉鬘がお参りした石清水八幡宮は桜の名所で、4月から
男山桜まつりがあります。
(京阪電車八幡市駅下車、男山ケーブル男山山上駅より徒歩5分) 物語の
女達が度々、初瀬の観音参りをしますが、それは奈良の長谷寺のことです。
ここは花の寺としても有名で、4月末からぼたん、梅雨にはあじさいが
見事です。
(近鉄大阪線長谷寺駅下車、徒歩15分) そして、物語の中で重要な
場面に出てくる賀茂の祭とは、葵祭のことです。
毎年5月15日、平安朝の風俗そのままの行列が京の町を練り歩きます。
源氏物語を読む傍ら、お出かけになってみてください。



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