ちゃんちゃか ちゃかちゃか、ちゃんちゃん、ぷ♪
ちゃんちゃか ちゃかちゃか、ちゃんちゃん、ペ♪
え〜毎度バカバカしいお噺をおひとつ。
日本全国梅雨入りをしましたようで、連日鬱陶しい日が続いております。
しかし、この梅雨を過ぎれば、いよいよ夏がやってくるものでございます。
青い空、白い入道雲と続けば、毎年日本中を沸きに湧かせてくれる高校野球の
季節となります。
夏の暑い中、白い球を追って、力の全てを出しあう高校球児の姿は、
いつ見ましても清々しいものがございますし、またそれを応援する学校の
生徒さん達の姿もなかなかによろしいものでございます。
それだけに、こんな梅雨空の下でも、練習に励んでおられるところなんかを
みますと、心の中でガンバレ!とエールを送ってしまうものでございます。
また、監督やコーチが一人一人に「脇を閉めてっ!」とか「腰を落として!」
などと身振り手振りで教えておられる風景などを目にしますと、選手も
大変ですが、教える方も大変なのでございますなぁと思ってしまいますものでございます。
そうそう、スポーツといいますもの、どんな種目でもそうでございますが
腰と言うものがとても大切になってくるのでございますな。
ちょっと腰を沈めるだけで、見た感じの安定が全く違うものでございまして、
バッターが打つ時は、「腰で打つ」と言いますしピッチャーも「腰で投げる」と
言いますな。
相撲なんかでも、最初の取り組みの時に、いかに腰を落として突進するかが
勝負の分かれ目になるとも聞いたことがございます。
漢字で書きましても「腰」という文字は「月」に「要」と書きますな。
この「月」は「にくづき」と言いまして「人の身体を現しているものなので
ございます。
「にくづき」に「かなめ」と書くぐらいでございますから「腰」と言うものは
昔から特に大切な部分と言われていましたのでございます。
「え〜と、交番・・・交番は・・・と、あったあった。」
一人の男が交番にやってきたようでございます。
交番の奥から、人の良さそうなお巡りさんが出てこられましたのですな。
本来なら警察官と言いますところではございますが、やはりお巡りさんと
言いましたほうが、親しみやすい感じがしますものではございませんで
しょうか。
「はい、どうかされましたか?」
「あっ、お巡りさん、ちょっとお尋ねしたいのですが、落し物は届いて
いませんか。」
「落し物をされたのですか、それはお困りでしょう。
で、何を落とされました。」
「いや〜、うっかりしてまして「こし」を落としてしまいまして。」
普通腰とか言われましても、ピンとくるものはないでございましょうが
このお巡りさん気の回る方のようでございました。
「こし?・・・、あ〜、雷おこし ですか、東京土産のアレですね。」
と、引き出しに閉まってあったノートをペラペラとめくり始めたので
ございます。
するとこの男、怪訝な顔をいたしまして、手を顔の前で振り始めたでは
ございませんか。
「雷おこし?・・・、いえいえ、私が落としたのは腰ですがな。
いえね、私スポーツクラブに通っているんですけどね、姿勢が悪いのか
先生にいつも「腰を落としてっ!腰を落としてっ!」って叱られるんですわ。
で、帰り道でもそのことばっかり考えておりましたら、ついうっかりと
落としてしまいましたんですわ。」
今度はお巡りさんが怪訝な顔をする番でございますな。
「・・・何を・・・?」
「ですから腰を。」
「腰をどうしたと・・・。」
「へぇ〜、落としましたんですがな。」
「何を・・・。」
「腰でんがな、ほらお巡りさんのお尻の上にもありますやろ。
知らはりまへんか?」
お巡りさんはそこで、手に持ったままのノートをゆっくり机に
置かれる訳でございますな。
「・・・あんな、会社とか家庭でストレスが溜まってんのかも知れんけど、
交番で発散させたらあかんがな。
交番も忙しいんや、そんな話は他でしてくれへんか。」
聞くところによりますと、特に繁華街にある交番では、よっぱらいが
絡んできたり、近所のお年寄りが寂しさを紛らわすためにお喋りにきたり
するそうでございますな。
この男も、ストレスを発散させるためか、愚痴を聞いて欲しいがために
やってきたものと考えた訳でございますな。
「へぇ・・・、嘘やおまへんがな、ホンマに落としましたんや。」
「あ〜、わかったさかい、次から気ぃつけるんやで。」
「あっ、信じてくれやはりませんのかいな。」
男がいかにも悲しそうな顔でお巡りさんを上目遣いにみていますが、
それぐらいのことは意にも介してはいないようでございます。
「あんな、何度も言うようやけど、警官もこれでけっこう忙しい仕事なんやで。
どうせやったら、あんたの話を聞いてあげてな、スッキリさせて明日からの
仕事に精を出して欲しいんや。
けどな、それし始めたらあんた一人だけやのうて、他の人らの話も
一人残らず聞かんとあかんようになってしまうんやわ。
そらな、自殺しようとか事件になるかもって話やったら、なにはさておいても
聞かんといかんやろうけど、そないな腰を落としましたってな話を聞いとる
暇はあらへんね。
悪いけど判ってぇな。」
困り顔のお巡りさんの言葉に、男も諦めたのかくるっと背中を向けて
しまいましたのですな。
諦めて出ていくのかと、ちょっとホッとしつつ送り出そうとしたお巡りさんの
前で、何を思ったか、男がベルトを緩め始めたではありませんかっ。
「おいおい、何をしとんのや、そんなとこで脱いだら公然ワイセツ罪で・・・。」
お巡りさんの声に躊躇することなく、男が少しズボンをずり下げましたんですなこれが。
「いや〜、私かていきなり『腰を落としました』なんて言われましても
信じまへんし、お巡りさんが信じやらへんのもしかたがおまへんことですわ。
けど、ほらっこれ、見ておくんなはれ。」
訝しがりながらも、お巡りさんもひょいと男のベルトの辺りを覗き込んだ瞬間
まさに、驚きのあまり目をまん丸に見開れたのでございます。
「あっ、腰があらへんやおまへんかっ!
どないしやはったんやっ!」
それに引き換え男の方は、落ち着いたものでございます。
「せやから、腰を落としましたって言うてますやん。」
ズボンをごそごそと、元に戻しながらも、表情は相変わらず困った顔なので
ございますな。
しばらくは、驚きのあまり声も出せなかったお巡りさんも、次第に落ち着きを
取り戻してこられましたようで、イスニ座り、机の上に置いてあります
すっかり温くなっていますお茶を、一口に飲み干し、大きな息を
吐かれましたのでございます。
「なんとまぁ・・・、これは驚きましたわ。
いや、疑ごうてしもうて えろうすんまへんなぁ・・・。
これは、えらいこってすわ、こんな事件でしたら、私ら警察も重い腰をあげんと
いけまへんわ。」
お巡りさんの目がキラリと光ったのと対象に、今度は男が怪訝そうな顔を
しましたではございませんか。
「はぁ、今なんと・・・。」
「いや、疑ごうてすんまへんと。」
「いえいえ、その後言わはったことですがな。」
「私ら警察も、重い腰をあげんといけまへんわ と。」
すると、男が顔の前で、慌てて手を振りはじめましたのでございますな。
「へぇ、お気持ちはありがたいんですけど、そんな 重い腰 は、いりまへん。」
おあとがよろしいようで。
♪ チャラリン チャラリン ちゃんちゃんチャカチャカドンドン ペンペン ♪