男だったら、一つにかける
かけて、4択 謎を解く、
誰が呼んだか、誰が呼んだか 点筆でんちゃん。
華の国試は4択問題
今日も決め手の、今日も決め手の、点筆が飛ぶ!
(注、点筆とは、点じを書く時に使う物です。)
「親分!親分!てえへんだぁ!」
朝食を取り終え、一服ついているところへ手したのホーリーが戸を
突き破るほどの勢いで飛び込んできやがった。
「おぉ、ホーリー、朝早くからどうしたんでぇい。」
「たっ大変なんでさぁ!すぐ来てくだせい!」
「おいおい、ちょったあ落ち着かねぇか、なにがあったのか言わねぇと
判りもしねぇじゃねぇか。」
「あらあら、ホーリーさん、まぁお水を//。」
何ごとかと奥から覗いていた女房が、水を持ってきやがった。
いつもの事だが、気の効くやつだ。
「あっ、おかみさん、すみません・・・ゴクゴクゴク・・・フゥーーー。」
水を飲み終え、一息ついた所を見計らって、
「でっ、どうしたてぇんだい。」
「親分!よっよっ4択が、4択が出やがったんでぇい!」
「なんだと!それを早く言わねぇかい!」
なぜこいつは、そんな大事な事をさっさと言わねんだろう!
十手を腰に捻じ込みながら框に降り、
おう、ちょっくら行ってくらぁ。」
女房の奴に声をかけるのは、忘れねぇんだよなぁ。
「お前さんちょっとお待ちを、魔よけを・・・。」
「おう、気がきくねぇ、早えとこやってくんな。」
火打石を手に、戸口に立つおいらの元へトタトタと近づき、
肩の辺りでカチッカチッと火花を散らしている。
カチッカチッ・・・ポッ
「いいねぇ、なんだか体がポカポカしてくるみてえだぜ。」
ボボボッ
いや、本当に熱くなってきやがった。
それに焦げ臭いような・・・。
「うぁあ、あちちちちちちちちちちちちちちち!」
「おっ親分、待っておくんなせい!
流石は熱血 親分だ、背中から火を吹き上げながら行っちまったよ!」
既に小さくなって行く二人の姿を見送りながら、
「お前さん気を着けてねぇ。」
と愉しげに手を振る女房であった。
人の背中に火を着けておいてこいつは全く!
「クスクス・・・。」
「おいらじゃねぇ、おいらじゃねぇ!」
「やかましい、ジタバタせずに神妙にしやがれ!
人込みの中で男の怒声が響き渡っている。
その中をかき分け、背中からぷすぷすと薄い煙を上げながら でん が
二人の男に近寄ってきた。
「おうおう、路をあけねぇか。」
その目に飛び込んできたのは、一人の男に縄をかけ引きたてようとしているHI親分の姿である。
「おっ、HIの親分、一体なにがあったんですかい?」
「んっ点筆 じゃねぇか。 へっへっへっ今頃ノコノコと現われてもおそいぜ!
下手人はほれこの通り俺が召し取ったぜ! 」
そう言うと、両手を縄で締め上げられ地面に項垂れる男を見せびらかすように
グイッとでんの前に突き出した。
精も根も尽き果てた男の目がゆっくりと開き、でんの姿を捉えたかと思った瞬間
その目が光りを取り戻した。
「あぁ!点筆の親分さん! おっおいらじゃねぇ!おいらじゃねぇえんです!」
縄に縛られたままでん目指して走り始めた。
「うぉぉお!
その勢いにHIが大きく姿勢を崩し、クルリとキレイに回りドスンと尻を
地面に叩きつけた。
「いてててて!ちくしょう、なにしやがる!」
HIの罵声にも振り向かず男はでんの足下に崩れるように座り込むと再び声を張り上げ
「親分、おいらじゃねぇんです、もう一度調べてくだせぇ。」
と頭を上げ訴え始めた。
男の額には不思議な事に「三」の数字が書かれている。
しかし、そんな事は期にも止めずに、
「おう、判った判った・・・、判ったからとりあえず大人しくしな。」
男の目線に姿勢を下げ、その肩を両手で軽く叩くと、尻を撫ぜながら
手下の李に手を借りて立ち上がるHIに視線を移した。
「HIの親分、あっしにもちょっくら問題を見せてもらえやせんか。」
「いててて、ふん、下手人はそいつに違いねぇんだ、今更なにを言ってやがる!
それともワシが間違っているとでも言うのけぇ!点筆よぉ!」
ギョロリとでんを睨むが、でんはどこ吹く風とでも言うかのように
「あっし如きがHIの親分に文句を付けるなんてとんでもねぇ。
ただ、あっしも4択にゃぁいつも酷い目に合わされていやすから、
親分の目立てを聞けりゃぁ勉強になるかと思いやしてね。
「ヘッヘッヘッヘッ、お前にもようやくワシの凄さが判ってきたようだな。
いいだろう、耳の穴をかっぽじいてよぉく聞くこった。
点筆のぉ、こっちへきな。」
HIが李を従えて伊勢屋と書かれた店の戸を開け入って行くが、
どうやらあの店で問題が出たようだ。
「おっ親分さん・・・」
立ちあがった男が縄を握り、歩き始めたでんに縋るように目を向けているが、
「とにかく問題を見てみねぇ事にはなぁ、先ずはそれからだ。」
「点筆のぉ、こいつが今回の問題でぇ。」
HIの示す足下に筵を被せられた問題が倒れていた。
伊勢屋は、この界隈でも、大きなお店(オタナ)で、この店先だけでも
でんの家がすっぽり納まってしまいそうだ。
全くある所にはあるものだ。
「おう、見せてやんな。」
李が筵をサット捲ると問題がその姿をあらわした。
「こりゃ酷ぇ・・・。」
多くの4択問題を見てきた でん だが、この問題はそれらの中でも5本の指に
入るかも知れない。
「キャァ!」
戸口から覗いていた野次馬達の中から急に悲鳴が上がったようだが、
どうやら問題を見た女がその酷さに気を失ったらしい。
「おいホーリー、戸を閉めてくんな、喧しくってしかたがねぇ。」
ホーリーが戸口から顔を突き出している野次馬達をグイグイと押し出し、
「おうおう、下がった下がったっ」
「なんでぇ、いいじゃねぇか!」
罵声が幾らか聞こえたが、そんな事は気にも止めず戸を閉めると周囲は
多少 薄暗くなったが、静けさが戻ってきた。
「親分、これが今回の問題ですかい。」
その筵の下からは焦点の合っていない目を虚空に向け、血の気を失った膚を
晒している男が横たわっていた。
その額には
「問題53 女性の全身に紫斑が発生した時に考えられる疾病として
適切でないのはどれか。」
と書かれている。
「おうよ、ひでえもんだろ、」
HIが化け物を見るような目つきで問題をねめつけながら吐き捨てるように言い放った。
「ふぅん、面白ぇ。」
問題を覗き込んだでんがニヤリと口元を歪め
「で、4択はどうなっているんでさぁ。」
「おう、連れて来てやんな。」
HIが顎をしゃくると、縄で縛り上げられている男とは別の3人が
連れてこられた。
男が二人と女が一人、、それぞれの額には「一」「二」「四」の数字が書かれている。
「そいつと合わせて、こいつらが4択でぇ。」
憮然とした表情でHIが顎で示した。
この男はなぜこうも高慢な態度を取れるんだろう?。
「じゃ、とりあえず話しを聞こうか。」
先ずは「一」と書かれたひょろっと背の高い、いかにも2枚目の男に目を向けた。
どうも二枚目って言うのはいけねぇ、さっきの「3」の男より顔がいい。
HIの親分には申し訳ねぇが、きっとこいつが下手人に違いねぇ。
そうだ、そうに違いない!
などと、一人ごちていると「一」が話し始めやがった。
いけねぇいけねぇ、つい自分の世界に入っちまったぜ。
「へぇ、私は、特発性血小板減少性紫斑病でございまして、ここ伊勢屋の番頭を
させて戴いております。」
「特発性血小板減少性紫斑病? あまりきかねぇ名前だなぁ。」
おいらが首を捻っていると、HIが特異万面で
「紫斑病って言うぐらいだから全身に紫斑があってもおかしくねぇだろう。」
と解説を入れてきやがった。
そんな事ぐらい子供にだって判るだろうにとちょっとカチンッと来たが
今は他の選択肢を聞いてしまうのが先決と、
「他の奴はどうなんでさぁ。」
と水を向けてやった。
「ヘッヘッヘッヘッ、おう全員話してやんな。」
おいらの独り言を判らねぇものと勘違いしたのか、更に得意気に顎を突き出してやがる。
全く嫌な奴だ。
「へぇ、あっしは蝋燭の担ぎ売りをしておりやす血友病でございます。」
額に「二」と書かれた小柄のガッシリした男だ。
いかにも担ぎ売りで外を歩き回っていると言う風情で、日焼けした膚と
太い眉毛が特徴的だ。
次ぎに三番の男だが、こいつはさっきHIに引っ立てられていた男だ。
当たり前だが縄で縛られ、縄の端は李に握られたままである。
「あっあっしは、敗血症で、伊勢やさんにご奉公にあがらせてもらっております。
信じてください、あっしじゃあっしじゃねぇんです!」
また喚き始めたが、李がグイッと縄を引っ張ると、無だだと思ったのか、
ヘナヘナと再び座り込んでしまった。
最後に四番の女が話し始めた。
なかなかに色っぽい女だが、伊勢屋にはちょっと似つかわしくねぇなぁ。
「あたしゃ、三味線の手習いをしています、アレルギー性紫斑病でありんす。
こちらの若旦那に呼ばれて三味線のお稽古に来ただけで、こんな事に
巻き込まれるなんて、あぁいやだいやだ・・・。
でも点筆の親分がお相手してくれるんならなんだってしちゃうんだけど
さぁあ〜。」
妙に体をクネクネと動かしていやがるが、どこか悪いんじゃねぇか?
深川の妙庵先生を紹介してやろうか?と親切に言ってやったら、途端に
ふくれっ面になってそっぽを向きやがった。
まったく女ってのは何を考えているのかよくわからねぇ。
「どうでぇ、おめぇにわかるけぇ。」
四人が話し終わると、HIが十手で肩を叩きながらおいらの顔をニヤニヤと
覗き込んできやがる。
「ヘッヘッヘッヘッ、いいか、耳の穴をかっぽじいてよぉぉぉく聞いときな。」
先ずは全身に紫斑が現われる病気だが、名前からならどれも血液に関係のある
奴 ばかりだよなぁ、
てぇ事は、名前からじゃ判断できねぇ。
しかし、こいつらの中に下手人がいる事は間違いがねぇんだ。」
確かにそのとおりだ。
軽く相槌を打ってやると、それを合図に再び口が開いた。
「だとすると、消去法で行くしかあんめぇ。
一番の奴だが、特発性血小板減少性紫斑病こいつは名前から判断すると
血小板が減少するために紫斑が出現するんだろうなぁ。
知っているたぁ思うが、血小板って言う奴は止血作用がある。
その血小板が少なくなるんだから身体の部分的な紫斑(出血)で済む訳もないだろう。
すると、全身への紫斑が現われてもおかしくねぇな。
こいつは四番のアレルギー性紫斑病にも言えることだ。
アレルギーも全身症状を引き起こすからなぁ。」
ちらりと四番の三味線の師匠に流し目をしてやがるが、鼻の下が三尺ほど伸びて
いやがるぜ。
「って事はだな、二番と三番が残った訳だ。
ここまで来たらもう考えるまでもねぇなぁ。
二番の血友病は血液凝固因子の第8因子か第9因子の活性が低下しているため
出血傾向にある奴だって言うのは有名な話しだ。
だとするってぇと、三番の敗血症以外に考えらんねぇなぁ・・・。」
全員の目が三番に集中した。
ビクンッと身体を痙攣させ、ゆっくりと三番の頭が上がってきたが、ゆるゆると
頭を左右に振っているが、もはや声を出す気力もなくなっているようだ。
「おいらじゃねぇ・・・おいらじゃねぇ・・・。」
絞り出すような微かな声が でん の耳に届いたが、その目は別の奴を
捉えていた。
そう、そいつの口元が微かに綻んだのを見逃してはいなかったのだ。
「まぁ、だからこいつが下手人に間違いはねぇって事だな、なぁ点筆のぉ!」
勝ち誇ったようにポンポンと十手で肩を叩きながら顎をしゃくり でん の
返答を待っているようである。
「確かにHIの親分のおっしゃる通りかも知れねぇなぁ。」
「ほへぇほへぇほへぇ、そうだろうそうだろう!」
どうすればこんな笑い声を出せるのか、今度ゆっくりと聞いてみたいものだ。
「けど、ちょっと引っかかる事があるんでさぁ。」
「なっなんだと!ワシの見立てが間違っているとでも言うのけぇ!!」
「いえ、大方は親分のおっしゃる通りで、あっしも一番と四番は確かに
下手人からは外していいと思いやす。
二番も親分のおっしゃる通りでしょう。
しかし、三番の敗血症、こいつは白血病の時に流血注に菌が増殖し
重篤な全身症状を呈したものを言うんですよね。」
「あぁ、そっそうだったかな・・・、いや、そうだよ・・・それぐらいワシも
知っているぞ!」
慌てたように答えるHIには見向きもせずに、
「だとしたら、白血病の症状には出血傾向ってものもありやしたから
この三番も全身の紫斑が出現してもおかしくねぇんじゃねぇんですかい。」
でんの一言で緊張の糸が再び張り詰めた。
「ぐっ、じゃっじゃぁなにかい、下手人はいねぇとでも言うのかい! まさか、
ワシが下手人だなんて言うんじゃねぇだろうな。」
「ふぅぅ、そうだったらいいんだけど・・・。」
「なんだとぉ!」
真っ赤になって口をパクパクさせるHIを気にも背ズ、
「冗談ですよ、下手人はちゃぁんとこの四人の中にいやすぜ。
確かに全身の紫斑と言うだけじゃ四人とも症状が出ても可笑しくねぇ。
だが、もう一度 問題をよぉく読んでみましょうや。」
問題53 女性の全身に紫斑が発生した時に考えられる疾病として適切でないのはどれか。
「そう、女性の全身だと書いているじゃねぇですか。
女性に現われる紫斑で適切でないもの・・・。 言い変えるなら男性特有の
疾患を探せば」
そう言うと、でんは四人に背を向け、静かに呟いた。
「どうでぇ、このまま自分から白状しちまわねぇかい。
どんな理由があったかは知らねぇが、ちったぁ罪も軽くなるかもしれねぇぜ。」
しかし、その言葉に反応する者は一人もいなかった。
いや、一人の額からツツゥーと一筋の汗が流れた。
20を数えるほども待っただろうか、諦めたようにでんの口が開いた。
「しかたがねぇか・・・、血友病は、性染色体のX染色体に異常のある疾患だ、
つまり女性ならXX、男性ならXYとなり、女性のX染色体に異常があったとしても、
片方のX染色体に異常がなければ発症しないが、男性の場合ならX染色体に
異常があれば必ず発症するよなぁ。
つまり、この四人の中で女性の全身に紫斑が発生しない(しにくい)と言えば、
二番、おめぇしかいねぇんだよ!」
ビシッと十手を付きつけた先には、にがにがしく口元を引きつらせた
二番の血友病の顔があった。
「チクショウ!」
脱兎の如く駆け出した血友病の前には、ポカンと口を開けて立ち尽くしている
HIがいた。
「ギャッ」
突き飛ばされドスンと尻を打ちつけたHIが情けない声を張り上げるのを
尻目に、戸を蹴り倒して外に飛び出していく。
「キャーーー」
「うわぁ、なんでぇ!」
外にはまだ野次馬達がいたようで、戸が倒れたかと思うと凄まじい形相で
飛び出してきた血友病に何人かが突き倒されたが、男はそんな事には気にもかけず
走り去っていく。
「待ちやがれ!」
遅れて飛び出してきたホーリーが後を追いかけているが、相手の方が足が速い。
「えぇい、往生際の悪い!」
続けて飛び出してきた でん が腰の点筆を外し、大きく振り被った。
「出た!点筆親分の投げ筆だ!」
「えぇぇえい!」
気合とともに点筆がうなりを上げて飛んで行く。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!」
血友病が前につんのめったかと思うと、そのまま頭から倒れて行った。
「ちくしょう観念しやがれ!」
追い着いたホーリーが腕をねじ上げ縄をかけていく。
ようやく伊勢屋の壊れた入口から尻を摩りながら李を伴って出てきたHIが、
「おう 点筆のぉ、今回はおめぇに一本取られちまったが、いい気に
なるんじゃねぇぞ!」
地面に唾を吐き捨て、顔を歪めている。
HIに気付いた でんが、顔だけを横に向け、
「いやいや、今回はHIの親分がほとんど目立てをなさっていやしたから、
あっし一人じゃどうなっていた事か・・・。」
「へっ、判ってんじゃねぇか、てめぇ一人じゃ解決できなかっただろうなぁ!
まぁ、このHIによぉく感謝するこった。
おうおう、どいたどいた、サッサと家に帰りやがれ!」
野次馬達を押しのけ、ノッシノッシと歩き去っていくHIの後姿を見ながら、
「親分・・・、いいんですかい、あんな事を言わせといて・・・。」
いつやってきたのか、ホーリーがでんの傍に立っていた。
「わぁっ!びっくりするじゃねぇか。
いいんだよ、おいらが我慢すりゃいい事さね。
ところで奴はどうしたい。」
「その事なんですが・・・。」
「どうしたい、ハッキリいわねぇか。」
言いにくそうにしていたホーリーだが、声を潜め、
「実は、親分の点筆が・・・奴の・・・盆の窪(うなじの中央のくぼんでいるところ)を
貫いていやして・・・、絶命していやす・・・。」
注)このドラマはフィクションであり、ドラマ内の人物・団体等は架空の
ものであり、実在される人物・団体等には一切関係はありません。