宇宙戦艦ヤマト「真田風雲録」

 久しぶりの非番で艦内を歩いていると後ろから来た人物に声を
かけられた。
その人物ははっきり言って、艦長の私より有名いや、もしかしたら
ガルマン・ガミラスを始め各星系国家で最注意人物とされていても
不思議ではないのだ。
彼自身に自覚があるかどうかは判らないが、もし彼がいなければ第一次
ガミラス大戦(ガミラス側呼称、帝星大戦、)で地球は滅亡していたで
あろうし、その後の、彗星帝国戦役、暗黒星団帝国大戦などでも
勝利を収められたのは偏に彼の功績だと言ってよい。
だが、そんな功績を誇ることなく、艦長である私を本当の弟のように
影に日向にと助けてくれる。
「真田さん、どうかされたのですか。」
ヤマト技師長 真田司郎は小走りにヤマト艦長 古代 進に向かって
にこやかに走ってきたのであった。

「やぁ古代、こんなところにいたのか。」
「ええ久しぶりの非番ですので、コスモゼロの点検をしておこうかと
思いまして。」
やはり自分の乗機は整備班まかせにせず、自らの手で調整しておかないと
機体の状態を把握できないからだ。
「真田さんこそ、どうされたのですか、急いでおられるようですけど。」
「ああ、お前に見せておきたい装備があってな。」
真田さんが新装備を事前に教えてくれるとは、よほど画期的な装備
なのだろう。
いつもなら、戦闘中に「こんなこともあろうかと」と言いつつ、いつ備え
付けたのかというほどのものを出してくるのだから。
「えっ、新装備っ、これでヤマトもまた強くなりますね。」
「えっ、ヤマト?」
私の言葉にちょっと意表を突かれたようである。
「いやっ、今日はヤマトじゃない、俺がヤマトの新装備を事前に
教えるはずないだろう。」
それもそうだ。
「きょうはな、俺の装備だ。」
口許を歪め微笑んでいるようだが、眉毛のない顔でこれをされると
ちょっと怖い。
まぁ、それは本人には罪のないことなのだが・・・。
「とりあえず見てくれ。」
と言われても、なにも持っているようには見えないし、別の場所に
置いてあるのだろうか。
「どこにあるんですか・・・。」
と口を開けかけたところで、彼は自分の腕を肘の辺りから外し始めた。
彼の両手両足が爆弾なのは有名な話なのである。
が、左上腕が白の乗務員服の袖から抜けた時、なにもないはずのそこに
とあるものが突き出てことに気が付いた。
例え艦内勤務だとは言え軍人であるのならば誰もが見慣れたもの。
銃口が覗いていたのだ。
「まさか私をっ」
チラリとそんな考えが脳裏を走ったが、動揺を表に出すことはない。
私とて数々の戦闘で場数を踏んでいるのだ。
彼の前では、その程度のことは霞んで見えるだろうが、地球連邦の軍人の
中で私の軍歴に比肩すると言えば、沖田艦長、土方艦長、そして島、加藤を
始めヤマトのクルーぐらいだ。
だが、彼はひょいと腕を持ち上げ肘の辺りまで袖をまくり上げた。
そこには肘の上辺りから上腕に接続されたガンメタルの鈍い光沢を湛えた
マシンガンともライフルとも形容しがたい銃が繋がっていたのである。
「サイコガンだ。」
「サイコガン?」
オウム返しに尋ねたもののそんな兵器は聞いたことがない。
まぁ、そんなこと日常茶飯事だから驚くことでもないのだが・・・。
「精神力をエネルギーに変換して打ち出すものなんだ。
朝、昔の漫画を読んでいてその主人公が使っていたものだがな。
面白そうだったから作ってみたんだが、試射をしてみたら、なかなかの
威力だったぞ。」
実に嬉しそうである。
「サイコガン・・・ですか・・・。」
「これだけじゃないぞ。」
そう言って、今度は右手にはめているグローブを外したのである。
グローブの下からはこちらも左手に負けず劣らずメカニカルな手が現れた。
「こちらは五連マシンガンだ。
手首には電磁ムチを収納してあるので、白兵戦もバッチリだ。
精神力を使うサイコガンは威力はあるが、そうそう多くは使えないからな、
それでこちらのマシンガンで蹴散らしサイコガンでとどめを刺す戦法を
とることにした。」
「マシンガンですか・・・。」
「それだけじゃないぞ。」
とついとしゃがむと、左膝に付いていたジッパーを右手で開けようと
しているが、流石の真田さんでも、サイコガンのままの左手は使えない
ようで、ズボンがズれるため開けにくそうである。
見ていてもよかったが、情けは人のためならずとも言うから手伝って
あげることにした。
「すまんな、このズボンも改良の余地があるようだ。」
「いや、こんなものを付けているのは真田さんだけでしょう。」
と心の中で突っ込んでおくことにした。
私だって、寝ている間に改造人間にでもされては雪に合わせる顔がない。
ジッパーを開けると、そこには彼の膝が・・・あるはずなのだが、
こちらも膝の上辺りからパカッと口を開け、先の丸まった筒状のものが
覗いていた。
「あの・・・、ひょっとしてミサイルですか・・・。」
「よく判ったな。」
私は諦め顔で上目遣いにみたのだが、逆に真田さんはとても嬉しそう
だった。
「テレザート星で使っただろ、多弾連装砲を小型化したものだ。
さすがに威力は落ちるが、戦車の数個大隊ぐらいならこれで殲滅できる。」
無表情に彼の膝を見つめる私を、きっと感心しているものと思ったの
だろうか、ミサイルの構造を説明し始めてくれたが、私の耳には入って
いなかったことは明記させてもらおう。
「で、右足は、なんですか?波動カートリッジ弾ですか。」
その問いに彼は笑い声を立てた。
「安心しろ、時限爆弾のままだ。」
それはそれで問題がありそうなのだが、笑いを止めた彼が呟くのが
聞こえてきた。
「そういう手があったか。」
藪から蛇を出してしまったようだ。
「なかなかスゴイ装備ですね、ちょっとさっきから気になっているんですけど
そのお尻から垂れ下がっているものはなんなのですか。
電気のコードのようにも見えますけど。」
膝のジッパーを戻すのを手伝いながら、しゃがんだ彼の後ろで揺れている
ものに目をやりながら聞いてみた。
「実は俺自身がパワードスーツなんだ。」
などと言いながら背中を割って真田さんが現れたとしても、驚かない。
もうそのぐらいの耐性はできている。
「気が付いたか、まぁまて、その前にこれを見てくれ。」
彼が左腕をハメて指差した先には、ヤマト艦内通路に取り付けられた
コンセントがあった。
「この前新たに取り付けられたものですね。」
「なんだ知っていたのか。」
ちょっと悔しそうな顔を見せたが、ひょっとしてこれも新装備の一つだとでも
言うのだろうか。
「そりゃ艦長ですし、技術班の連中がそこら中でやっていれば気が
つきもします。
でなんなのですか。」
後ろに垂れ下がっていたコードを手にコンセントに近寄ると、先のプラグを
それに差し込んだのである。
「こうすれば、ヤマトの波動エンジンから私の身体に取り付けた波動砲に
直接エネルギーを注入できる。」
これには流石の私も驚きを隠せなかった。
「身体に波動砲って、そんなものどこにっ。
まっまさかっ・・・。」
視線が真田さんの顔から徐々に股間に下がってしまった。
「そう口だ。」
「えっ、口?」
「そう、口だ。
驚いただろう。」
いやっ、逆にホッとしていたのだが。
「なんだ、あまり驚いていないようだな。
信じていないのか、なんなら一度撃ってみようか。」
口を開けた彼の口中に向かってホタルのような光が吸い込まれ始めた。
どこからともなく、低周波の振動もが伝わってくる。
「ちょっちょっと待ってください、艦内で撃つつもりですかっ。」
慌てて顎を押さえ、無理やりに口を閉じさせる。
モガモガと言いながら私の手を振りほどいた彼が顎を抑え痛そうに
しているが、その手が左手を外そうとしていたことに私が気づかない
はずはなかった。
「古代、冗談だよ冗談。
こんなところで撃つはずないじゃないか。」
笑ってはいるが、確か目が真剣だったぞ。
とりあえず愛想笑いをしておくことにした。
「でも真田さん、そのコンセントで、波動エンジンと直結させるにしても、
艦内にあったんじゃ意味がないんじゃないですか。」
「安心しろ古代、こんなこともあろうかとハイパーバッテリーを開発して
おいたんだ。」
ポケットに突っ込みひょいと取り出したその手にはトランプの箱ほどの
黒い箱が握られていた。
「これは波動バッテリー、基本的には波動カートリッジ弾と同じだが
従来の10倍の要領があり、ハイスピードチャージャー機能搭載だから
ヤマトの波動砲の1/3の時間でエネルギーチャージができる。」
「それ、ヤマトに付けてください。
でも、だとしたらこの艦内各所に付けられたコンセントは無駄になるんじゃ
ないですか?」
「いや、そんなことはない、ここでハイパーバッテリーのチャージも
できるからな。」
「そんなことわざわざ通路でやらなくても、自分の部屋で・・・。」
思わず言葉を詰まらせてしまう。
物凄い目で睨まれてしまったからである。
「さすがは技師長、いつのまにこんなものを。」
とりあえず、真田さん避けの呪文を唱えておく。
ヤマトクルー内では、彼の怒りを沈める呪文として多様されているものだ。
「まあよかろう。」
よかった、効果はあったようだ。
いつもの静かな目に戻った真田さんが、改めて真顔の表情でこちらに
向き直ると、硬い口調で語り始めた。
「なぁ古代、俺は最近考えるんだが、ガミラスを滅ぼし、白色彗星を撃滅し
二重銀河までもを消滅させたと言うのに、地球いや、宇宙に平和は
やってこなかったな。」
そうなのである、毎年毎年、新たな敵が地球に攻め込み、今でも宇宙の
我々の知らない場所で国家の存亡をかけた戦いが無数に行われているのだ。
「確かに戦いは避けねばならないが、あの戦いを放棄した
シャルバート星でさえ宇宙に平和を与えることはできなかった。
戦いは悪だが、それもより平和を求めるものが宇宙を統一すれば
どうだろうか。
少なくとも、より平和に近い時代が、一分でも長い平和が維持できるんじゃ
ないかな。
俺はそう思うようになってきたんだ。」
宇宙の平和、忘れたことはない。
宇宙戦士訓練学校を卒業して、いやもっと以前からそれだけがヤマトの、
地球の全ての人々の念願だったのだから。
「そうですね、私達は、平和を求めて苦しい戦いを潜り抜け、多くの仲間が
命を失ってきたのですから。」
ゆっくりと彼が頷いている。
「だからだ、俺はこの俺の頭脳をもっと積極的に宇宙の平和のために
使おうと決心したんだ。
そこでだ古代。」
「どこですか?」
「お前に俺の片腕になって欲しい。」
「サイコガンにでもなれと。」
「わっはっはっはっはっ面白いことを言うじゃないか。
今度改造してやるよ。」
「お断りします。」
「だろうな、片腕と言うのは私に協力して欲しいと言うことだ。」
いやなことを考えてしまったが、表情にはでなかっただろうか。
「俺は決心した、宇宙を制覇すると。」
やはりそうきたか。
「判っている、未だかつてそんなことを成し遂げた人物はおろか国家さえ
ない。
だが、俺ならできる。
手始めだが、ガルマン・ガミラスの了承は取り付けてある。」
今日何度目の驚きだったであろうか。
「まさか、あのデスラーがっ。
よくそんなことに了承をっ。」
「彼も一代で国を建てたほどの男だ。
心をこめ腹を割って話せば判ってくれたよ。
ちょっとデスラーパレスで実演するハメにはなったがな。」
「撃ったんですね。」
彼は少し口許に笑みを浮かべ頬を指で掻いていた。
「デスラーパレスで波動砲を・・・。」
照れくさそうに頷く彼であった。
やっぱりさっきのは本気だったんだ。
我が好敵手であり、親友でもあるデスラー・・・、君の未来に幸あれ。

西暦21XX年、銀河を平定した銀河連邦(地球連邦を改名」は、白色彗星帝国が
支配するアンドロメダ銀河に向けて遠征艦隊を発信させるのであった。

−完−
2006年2月25日(土)                
オフィス アカンデミー配給 全国映画館にて公開中


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「表紙」に戻る。