人工細胞外マトリックスとしての3次元高分子構造体の作製

北大院理 ◯大倉隆介・西田仁・西村紳一郎
北大電子研 西川和孝・和田成生・狩野猛・西川雄大・下村政嗣

【目的】

 3次元的な構造体を基板として用いた細胞培養は、組織工学の分野などにおいて極めて重要であり、既に多くの試みがなされている。これに関連して我々は最近、両親媒性ポリマーを高湿度下でキャストして作製したハニカム状マイクロパターンを有するフィルム[1]を、3次元的に加工する方法を見い出した。
 また、O/Wエマルションにアルギン酸ナトリウム水溶液を混合し、それをゲル化させることにより、内部に数十マイクロメートルの空孔を有するハイドロゲルを得ることができた。さらに、エマルション中の界面活性剤の濃度やゲルの成形法を変えることによって、ゲル中の空孔の大きさや密度を変化させることに成功した。

【実験】

1. シャーレに純水を入れてガラス管(外径 5 mm)を沈めておき、その水面上に両親媒性ポリマーよりパターン化フィルムを作製した。ガラス管を静かに引き上げてフィルムを付着させ、光学顕微鏡で観察した。
2. SDS水溶液(0.03 %)またはTween 20水溶液(6 %)10 mlにトルエン10 mlを加え、超音波照射してO/Wエマルションとした。さらにアルギン酸ナトリウム(4 %)水溶液を約 20 ml加え、均一になるまで攪拌した。この溶液をガラス管表面に塗布し、過剰量のCaCl2水溶液(5 %)中に浸漬してチューブ状のゲルを得た。また、注射器(内径 2 mm)を用いてCaCl2水溶液中に押し出し、表面がゲル化したところで取り出しこれをエタノール・水で洗浄することにより、チューブ状のゲルを得た。それぞれのチューブの外側と内側の表面を光学顕微鏡で観察した。

【結果】

 パターン化フィルムはその構造を保ったままゲル上に転写された。さらにこのフィルムを穴の空いた基板に移し取ることにより、基板のない自己支持性のハニカムパターン化フィルムを得ることもできた。
 また、O/Wエマルションから調製したゲルの空孔の径は界面活性剤の濃度変化によって制御することができ、また壁の外側よりも内側の方が大きかった。これは、外側はゲル化が急速に起こり構造が保持されたのに対し、内側はカルシウムイオンが浸透によって供給されるためゲル化がゆっくりと進行し、その間にエマルションがイオンとの接触によって不安定となり油相が融合したためであると考えられる。これにより、壁の外側と内側でサイズの異なる空孔を有するチューブを作製できることが示唆された。

【参考文献】

[1] N. Maruyama, T. Koito, J. Nishida, T. Sawadaishi, X. Cieren, K. Ijiro, O. Karthaus and M. Shimomura; Thin Solid Films, 327-329, 854 (1998)

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