人工細胞外マトリックスとしての多孔性高分子構造体の作製

北大院理 ◯大倉隆介・西田仁・西村紳一郎
北大電子研 西川和孝・和田成生・狩野猛・西川雄大・下村政嗣

【目的】

 我々はこれまでに、両親媒性ポリマー溶液を固体基板上に高湿度下でキャストすると、多孔性のポリマーフィルムが形成されることを見い出してきた。この方法は従来の多孔性フィルム形成法に比べ、コストが低くかつ簡便である。また近年、マイクロパターン化された接着ドメインや、マイクロメータースケールの規則的な表面形状を有する基板に対する、細胞の接着性や応答に関する研究が注目を集めている。このことから、先の多孔性フィルムを細胞培養基板として用いることができれば、ポリマーの種類や空孔の形・大きさの制御により、その上に接着した細胞の応答を制御できる可能性がある。
 これまでの研究により、様々な両親媒性ポリマーから上記の多孔性フィルムが作製可能であることがわかっている。また、キャスト時の条件によってフィルムの構造を様々に変化させることができることも明らかになった。しかし、このフィルムにより高い汎用性を付与するためには、より多種類の物質からそれを作製できることが望ましい。そこで本研究では、疎水性ポリマーと少量の両親媒性ポリマーをブレンドすることにより、前者を主成分とした多孔性フィルムの作製を試みた。

【実験】

 ポリ乳酸(PLLA、平均分子量85000-160000)のクロロホルム溶液(10 mg/ml)と、両親媒性ポリマーのベンゼン溶液(1.0 mg/ml)を調製した。これらの溶液を様々な体積比で混合し、高湿度下でキャストして多孔性フィルムとした。また、ポリ乳酸溶液の代わりにポリスチレン(PS、平均分子量45000)のベンゼン溶液を用いて同様の実験を行った。

【結果】

 PLLAのみのベンゼン溶液からは多孔性フィルムは形成されなかった。これに対し、PLLA溶液に両親媒性ポリマー溶液を少量混合することにより多孔性フィルムが形成された。このとき、両親媒性ポリマーがフィルムの形態を形成し、PLLAがそれを維持していると考えられる。PLLAの代わりにPSを用いた系でも、同様のパターン化フィルムを作製することが可能であった。以上より、少量の両親媒性ポリマーを添加することにより、様々な種類のポリマーを多孔性フィルムとすることができる可能性が示された。

【参考文献】

[1] N. Maruyama, T. Koito, J. Nishida, T. Sawadaishi, X. Cieren, K. Ijiro, O. Karthaus and M. Shimomura; Thin Solid Films, 327-329, 854 (1998)

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