ストレスを克服し実力を発揮するために
〜人間の気持ちと音楽〜

本論文の構成


序 章 はじめに
第1章 ストレス
第2章 脳波と人間の生理・心理状況
第3章 音楽の効果
第4章 音楽効果の実態
第5章 リラックス商品
(1)既存の商品
(2)これから求められる商品
第6章 ストレス克服による実力の発揮

第1章 ストレス

 ストレスという言葉はもともと工学、物理学の領域で使われ始めた言葉であり、ある物体に外から力が加わった時に生じるひずみという意味であった。例えば、ゴムボールを指で強く押すと、そこはへこみ、ゴムボールは押された瞬間から元の球体へ戻ろうとする。この状態の時、ボールが外からの力で押された状態をストレスといい、指で押す力、つまり加えられる刺激をストレッサーという。このストレスとストレッサーの関係を生体において適用し、初めて生物学的、医学的な面でストレスという言葉を用いたのはキャノン(注1)である。
 キャノンは「犬をけしかけて猫に吠えさせる」という実験をして、そのとき猫に何が起こるかを調べた。もちろん、猫は毛をさかだてて息を荒くし、血圧は上がり心臓はドキドキと鼓動が早くなる。そこでキャノンは「これは、猫が逃げるために必要なからだの準備なのだ。」と考えた。それからキャノンは、この変化は犬に吠えられたときだけではなくて、極端に寒いときや高いところから落ちそうなときなど、いろいろなピンチで同じように起こることを発見した。そこから導き出された彼の結論は、「感情やカラダが刺激を受けるとその種類に関係なく共通の変化が起こる」というもので、「人間も大きな刺激が与えられると、たとえそれがマンモスに襲われることであってもコンピュータの前に座らされることであっても、私たちのカラダには同じようなある変化が生まれ、しかもそれは、私たちが生き延びていくために必要な変化である」というものだった。どんな刺激に対しても、カラダにはある一定の変化が起きるという結論で、この現象のことを、キャノンはストレスと呼び、ストレスはそもそも、私たちにとって役に立つ良いものだったのだ。
 そして、このストレスという言葉はカナダのハンス・セリエ博士(注2)が、1936年、ネイチャー誌注3に『ジェネラル・アダプテーション・シンドローム』注4を発表したことから一般に広まった。これは、生理・病理学説で、要約すると、生体はストレス(緊張・ひずみ)が加わると脳下垂体・副腎皮質ホルモンを分泌し刺激に対応しようとするが、これが過度に加わると病気の原因となるという学説であった。
 その後研究は進み、アメリカ人のホームズ博士らが日常生活をしていく上で遭遇する出来事をストレッサーとして分析し、数量化した。

≪資料1≫ ストレスの数量化(社会適応スケール)

出典 『能力革命(STRESS克服から願望実現まで)』


 四十三の出来事をストレッサーとしてあげ、それらと遭遇した時に最適応までにどれくらいの時間がかかるかを調べ数量化したものであり、ホームズ博士らは、一年間の合計が300点を超えた場合その翌年に79%、200点〜299点の場合51%、150点〜199点の場合37%の人が身体疾患注3を訴えている事も報告している。 ここで注目すべきは、結婚や妊娠という嬉しい出来事が上位にあることだ。結婚していない人にわかりやすく旅行を例として挙げてみる。例えば、旅行というものは行く時には楽しみで喜んで出かけるものだが、家に帰ってきた時『やっぱり家が落ち着く』とほっとしたり、『ああ疲れた』とため息をついたりする。このことから考えれば、人によって図に示された順位は異なるものの、確かに嬉しい事や楽しい事がストレスにつながると言えるのである。  現在、ストレスは一般に使われる場合、ストレスとストレッサーを共にストレスといい厳密には分けておらず、「暑さ、寒さ、騒音に代表される物理化学的なストレッサーによるストレス」「過労、感染などに代表される生理的ストレッサーによるストレス」「職場や学校などでの人間関係、不満、失望、挫折感、老後への不安などに代表される社会的・心理的ストレス」の3つに分類される。 しかし、地球の環境破壊やエイズに代表される感染、過労死などに集約される働きすぎなど、どのストレスが特に問題という事もなく複雑に組み合わさり、人々に襲いかかっていることは言うまでもない。 このように、ストレスは単なる反応という考えから病気の原因と認識され、更にはストレスの数量化という形で原因の分析、分類にまで至った。 第2章では、ストレスに対する人間のココロと脳の関係について考察する。 注1 生理学者の名前。 注2モントリオール大学の生理学者の名前。 注3イギリスの雑誌の名前。 注4ストレス学説のタイトル。 注5ストレスからくる病気。

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