ストレスを克服し実力を発揮するために
〜人間の気持ちと音楽〜

本論文の構成


序 章 はじめに
第1章 ストレス
第2章 脳波と人間の生理・心理状況
第3章 音楽の効果
第4章 音楽効果の実態
第5章 リラックス商品
(1)既存の商品
(2)これから求められる商品
第6章 ストレス克服による実力の発揮

第4章 音楽効果の実態

心を静める効果があるのは、「1/fのゆらぎ」の成分を含んだ渓流音・波音・鳥の声などであるとされ、ヒーリングミュージックというのは自然音+音楽という形態が多い。1/fゆらぎ効果は武者俊光氏注1の研究により、近年明らかにされた。鳥のさえずりやせせらぎの音は、5分聞こうが、10分聞こうが、いつも同じように繰り返し音として聞こえてくる。しかし、厳密には全く同じ音の繰り返しではなく、1/fゆらぎの法則にあるという理論で、武者氏は「感覚的には、期待性と意外性とが拮抗した、適度な相関性と適度な変化のバランスがとれた快い音で、人間の生体電気パルスの基本的なリズムは1/fゆらぎであり、人間は、この1/fゆらぎを上手に利用しながら行動を制御している」と述べている。リラクセーションミュージックCDとしてレコード店・書店で販売されているほとんどが、クラシックや川のせせらぎという自然の音などのゆったりとした曲調でインストゥルメンタル注3であるのはこの理論に基づいた考えからであろう。 一般的に、リラックスするには穏やかで静かな曲調、元気を出すには華やかでリズミカルな曲調、集中力をつけるには躍動的で力強さのある曲調が良いと見られていている。 しかし、自分がこの曲聞いていたらリラックスできるとか集中できると思えるものがあれば、十分にヒーリングミュージックの役割を果たしているのではないだろうか、脳波に影響を与えアルファー波を導くのではないだろうか。この仮説に基づきアンケートを実施したところ次のような結果が得られた。

 上記の表から読み取れることは、疲れた時に聴く曲はロック、ヒップホップが多く、ヒーリング・ミュージックを聴く人はほとんどいないということである。しかし、このアンケートは学生中心におこなったものであり、疲れた時に聴く曲、リラックスするために聴く曲というものは年代によって異なるのかもしれない。 1988年、貫行子氏注3によって、実験が行われている。作曲家とバイオミュージックを作成し、この他にロック(松岡直也のFree voyage)、演歌(北の宿から)、クラシック(モーツァルトのクラリネット五重奏曲イ短調第2楽章)、インドの瞑想の音楽、せせらぎと鳥の声を10代から60代まで30人に被験者に曲を聞いてもらい、脳波測定をするという実験であり、各音楽ごとに好みとやすらぎの度合いについても調査して、アルファー波増加率と年代と好みとの関連を検証したものである。


過去の実験例から、最もアルファー波の増える音楽は年代によっても異なることが見て取れる。 ≪資料4≫のグラフを見ると、40代では特にアルファー波の増えた音楽はなく、ストレスが解消されにくい世代と言う事が伺える。また、10代20代では、バイオミュージックとロック、30代ではせせらぎとインドの音楽、50代ではバイオミュージックとせせらぎ、60代ではクラシックと演歌がそれぞれ1位と2位に上がっている。心理的な面に基づいた「好み」の順位表についても3位以内に全ての年代でバイオミュージックがあげられ、好みとアルファー波は概して対応する事が判明していると貫行子氏は説明している。 この実験は≪アンケート結果3≫とも一致するが多く、人によって激しい曲調のロック、こぶしのきいた演歌などでもアルファー波を導く場合があるということを示している。つまり疲れたときに聴く曲やリラックスできる曲というものは、人それぞれであり、また、年代と好みによって大きく左右されるということだ。偶然に全ての年代にある程度共通してアルファー波を導くことが出来るということで専用のCDはクラシックやバイオミュージックなどを中心にまとめられているのだろう。人によってはこれらを苦痛と感じ、ストレスがたまってしまう人もいるのである。 また、同質の原理によれば、恋が終わった時に失恋を歌った曲を聴くことで、歌詞に自分の気持ちを代弁してもらうと安心感を覚え、心の傷を早く回復させる事ができるとされている。同質の原理とは、聞き手の気分やテンポに合った音楽を与えることで、精神的に良い方向に向かわせる音楽療法の原理である。元気になりたいからといって気持ちと掛け離れた音楽を聴くと、その歌詞やテンポに拒否反応が起こり、逆にストレスとなってしまうという考えから導き出された原理である。 しかし、落ち込んだ時に暗い曲ばかり聴き続けていてもその状態から抜け出せなくなってしまうので注意が必要である。悲しい思いをした時には、同質の原理にのっとり、はじめに自分の気持ちを代弁してくれる音楽を聴き、徐々に明るい音楽へと変えていくのが良いだろう。 エドワード・ポドルスキー注4は著書[音楽療法]に不安神経症・鬱病・神経衰弱・心身症等、さまざまな病気にあわせたクラシック音楽の処方をまとめている。音楽療法の多くは、クラシックを中心としているが、リラクセーションやヒーリングの為にはその目的に応じた音楽というものも必要になるとまとめていて、実際に欧米では、スティーブン・ハルパーンやウインダム・ヒル、ナラダ・レーベル等、多くの作曲家や演奏家がリラクセーションのための、枠組みにとらわれない音楽を創造している。 全ての人に普遍的な特定の音楽があるのではなくて、年齢や好みに加えて、その時の心理状況によって、その時に必要な曲が変わってくるのだ。自分がリラックスできるとか集中できると思えるものがあれば、十分にヒーリングミュージックの役割を果たしていて、必要なのは、自分の心理状態を把握し、自分の好みに基づいた気持ちのよい曲、リラックスできる曲を見つけ、リラクセーションを図ることである。 第5章では既存のリラックス商品からこれからどのようなリラックス商品が必要かを考察し、第6章では本論文のまとめとしてストレス克服による実力の発揮について述べることとする。 注1 東京理科大学助教授 注2 歌詞の入っていない曲 注3 当時財団法人ユース開発協会バイオミュージック研究所所長 注4 エドワード・ボルトスキー

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