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   ― 夜更け ―





 夜中にふと目が覚めた。
 あたりを見回すと貴雄、昂志、佳介が床で眠っている。そうか、お泊り会だったんだっけ。
 水月は自室で寝ているのだろうか、この部屋にはいない。

 僕はしばらく眠れそうになかったので、2階のベランダに出た。
 外はひんやりと冷たい風が吹き、星がキラキラと輝いている。
 僕はポケットからタバコを取り出し、火をつけた。
 ふぅっと一息。

 (ちょっと疲れたな・・・・・・)

 「タバコはお体によくないですよ」
 ふいに後ろから声が聞こえた。
 パジャマ姿の水月が僕の隣に並び、空を見上げた。
 「星・・・・・・綺麗ですね」
 「ああ・・・・・・」
 僕等は二人して夜空を見上げていた。
 「水月も眠れないのか?」
 「まあ、そんなところです」
 会話が続かない。
 「みなさん、良いお友達ですね」
 「ははっ、慣れるまで多少時間はかかるけどね。 ・・・・・・そういえば、水月、家族は?」
 「私の? 私にも家族はいません。 幼い頃の記憶もほとんど・・・・・・」
 「そうか・・・・・・なんか、悪いこと聞いちまったかな」
 僕はどうしたらいいのかわからなくて、少し戸惑ってしまった。
 「うふふ、そんなことないですよ、気にしないでください」
 水月は笑って言うが、どことなくその笑顔に寂しさを感じた。
 僕は上着を脱いで、水月の肩に被せた。
 「? これは・・・・・・」
 「少し冷えてきたからね」
 水月は一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに微笑み返してきた。
 「・・・・・・あ、あのさ・・・・・・水月がここに来てまだ日は浅いけど・・・・・・」
 僕は照れくさくて夜景を見ながら言うが、なかなか思いを言葉にできない。
 「その・・・ここを自分の家だと思ってさ・・・ぼ、僕のことも家族だと思っていいよ」
 恥ずかしくて顔から火が出そうだ。 水月を横目で見ると、水月と目が合った。
 「ありがとうございます。 やっぱり浩史様はお優しい方ですね」
 「ああ、そうだろ?」
 僕等はしばらく笑いあった。
 雲ひとつ無い星空のに二人の笑い声が響いていた・・・・・・


  「みなさん、朝ですよーっ!!」
 水月の元気な声が部屋中に響き渡る。
 「ん・・・・・・なんだぁ〜・・・・・・???」
 まず最初に目が覚めたのは貴雄だった。
 「水月〜・・・・・・もうちょっと寝かせて〜」
 僕は寝るのが遅かったため、正直眠い。
 「ダメですよ! 浩史様っ! ほらっ、みなさんも起きて起きてっ!」
 結局起こされてしまった。まだ寝ているのは昂志だけだ。
 「佳介〜、起こしてやれ〜」
 貴雄の一言。またそれに従う佳介。
 「昂志、そろそろ起きなよ!」
 「☆○▲‖〆±♂□∋∀∠∂‰Åψ???」
 「なに言ってるかわかんねーよ、こいつ寝ぼけてやがる」
 「それでは朝食の用意が出来てますから、キッチンへどうぞ」
 水月はそれだけ言うと先にキッチンへと向かった。


  朝食後、僕らはリビングでくつろいでいた。
 「何で日曜の朝にこんな早く起こさなければならんのだ」
 貴雄はかなり機嫌が悪いようだ。
 「さあな、でも水月が言うには『休日だからって寝てばかりではダメです、時間は有効に使わないと』だってさ」
 その水月は今洗濯をしている。
 「とはいえ、日曜に朝から一体何をすればいいんだ・・・・・・」
 僕は嘆く昂志に提案した。
 「解散・・・・・・しますか?」
 周りは無言で頷いた。
 こうしてあっけなくお泊り会はお開きとなった。


  その後、特にすることも無くなった僕は大学のレポートを書いていた。
 「浩史様、コーヒーが入りましたよ」
 「ああ、入ってくれ」
 水月がドアをあけて入ってくると、コーヒーのいい香りが部屋に漂う。
 「ご苦労様。水月、あんなヤツらの相手は疲れただろ」
 「うふふ、正直言うとちょっと疲れました。でもそれ以上に楽しかったですよ」
 水月は微笑みながら言った。
 「ははは、それはなにより。まあ今日はゆっくり休むといいよ。今日は僕が晩御飯を作ろう」
 「あらあら、それはいけません。私の仕事が無くなってしまいます」
 「ダ〜メ。休養も仕事のうち。しっかりと休んでもらうからね」
 実は以前、この家での一人暮らしを覚悟して料理を祖母から教わっていたのだ。
 「じゃあ・・・・・・お願いします」
 水月もどうやら掴んできたらしい。一度言ったら聞かない僕の性格を。
 「お任せっ!!」
 僕は即行でレポートを終わらせ、夕食の準備に取り掛かった。


  「まずこれを鍋に入れて・・・・・・おっとこれもだ。っとその間にこっちを仕上げて・・・・・・」
 我ながらテキパキとした無駄の無い動き。
 「・・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・水月、そこでじっと見つめるの、やめてくれ」
 さっきから視線が気になってしょうがない。
 「えっ!? で、でも・・・その・・・えーっと・・・」
 「や、気になるのはわかるけどね。水月はテレビでも観てなさい」
 「は、はい・・・・・・」
 水月は渋々キッチンを出ていった。
 僕は料理に専念し、次々と仕上げていった。
 「水月ー! 出来たよー!」
 水月はキッチンに戻ってくるなり、驚きの声を上げた。
 「まあっ! コレ浩史様一人で作られたんですかっ!?」
 「何言ってんだよ、俺一人しかいてないじゃないか(汗)」
 水月は訳のわからないことを言っている。
 「さ、そんなことはいいから早く食べよう」
 水月を椅子へと座らせ、僕も椅子に座り早速料理に手をつけた。
 「うん、我ながら天晴れ」
 「ホント・・・おいしいです。なんだか・・・懐かしい味がします」
 「ああ、そうだろうな。なんてったってばあちゃん直伝だからね」
 僕は少し胸を張った。
 水月は次々に皿を空けていった。
 どうやら水月を喜ばせる作戦は成功したようだ。

 食後、僕らは普段通りお茶を飲み、風呂に入り、床についた。
 今日は少し疲れていたようだ。
 布団に入るとすぐに眠りについてしまった。

        ( つづく )



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