音楽の錬金術師

2話



先ほどの事件から1時間が経過していた。

結局何も分からずじまい。

「仕方ねぇな・・・。とりあえずさっきのおっさんに犯人の顔見てないか訊きにいくか。」

「そうですね・・・。」

エドとニコルは落胆しながらバリンの仕事場「アトリエ・ヴォーゴリアス」に向かった。

「アトリエ・ヴォーゴリアス」は5番街の中ほどにある。

大きく、鉄や鋼などの金属の匂いが立ち込めてくる。

「あっ兄さん!!」

入るとアルが駆け寄ってきた。

「何か証拠は見つかった?」

「いや・・・。さっきのおっさんに話を訊きにきたんだ。」

「そう・・・。今バリンさんが上で機械鎧の取り付けしてるから訊けるのは随分あとになりそうだよ。」

「そう・・か。」

エドは落ち込みながらも考え事をはじめた。

「ゴメンねニコル。本当はすぐに犯人を捕まえたいんだけど・・。」

「あやまらなくていいよ悪いのは犯人なんだから。」

ニコルは人にあやまれるのが苦手だった。

ガチャ

バリンが仕事場からでてきた。

「バリンさん被害者の人は?」

ニコルが心配そうに尋ねた。

「あぁ、心配はいらねぇよ。お前さんが早く教えてくれたからな。明日の朝には目覚めるだろう。」

ニコルはホッと右手で胸をなでおろした。

――――――「!!」

「どうしたの兄さん?」

「いやなんでもない・・・・。」



「バリンさん、明日また来るからよろしく。」

「あぁ。小僧なら歓迎さ。」

挨拶を済ませると3人は宿に戻った。

戻っている間エドは不気味なぐらいなにも話さなかった。

宿に着くとニコルは手伝いがあるからと酒場に入っていった。

部屋に着いてからもエドは無口だった。

アルは様子が変だとは思いながらもあえて訊かなかった。

もう3時間ほどたっただろうか。

その間2人はほとんどはなしていない。

コンコン

「夕食が出来たので食堂に来てください。」

女性の声が聞こえた。この宿で仕事をしているメイドだ。

「あっはい。今行きます。」

アルが答えると廊下を歩いて行く音が聞こえた。

「兄さん夕食だって。そんな落ち込んでないでご飯でも食べて気分転換しようよ。」

「あぁ。」

エドはぼんやりと返事をした。

食堂に行くと料理が並んでいた。

エドは「なにか」を誤魔化すかのように料理を口にはこんだ。

たくさんあった皿の料理がどんどん空になってゆく。

他の宿泊客はいないようだった。

それも当然か。もう100人も被害にあっているのだから。

今現在街に残っているのは宿の定員20人あまりと、

頑固な地酒職人達だけだった。

この街の気温や湿度が酒造りにちょうどよいらしく、誰ひとり出て行こうとしない。

食事を終えたエドは部屋に戻ろうとしたがメイドに呼び止められた。

「今日は酒場で久しぶりにニコルが演奏します。聴いていきませんか?」

「いや・・・今はそんな気分じゃないんで・・・・。」

「兄さん?行かないの?ニコルが演奏するんだよ?」

「あぁ。」

「そう・・。じゃあ僕は聴いてくるから。」

アルは酒場に向かった。



酒場の階段を下りるたびにたくさんの人の声が聞こえてきた。

昼間街にはほとんど人気がないのだが、

どこにいたのか3、4、50代と思われる男達で溢れていた。

話によると、

昼間は酒造りに没頭していてほとんど外に出ないらしい。

この酒場での二コルの演奏は、

通り魔のせいでほとんど外に出られない彼らの唯一の娯楽と、自分の酒の自慢の場らしい。

アルがふと見回すと職人たちの半数近くは機械鎧を付けていた。

皆バリンに装着してもらったと、ありがたそうに口々に言う。

1人の職人がアルに酒とつまみをすすめてきたが上手く言い訳をして逃れた。

「早く始まらないかな〜・・・。」

アルは職人達に食事を勧められるので気が滅入っていた。

部屋が暗くなった。

端にある少しだけもりあがっているステージをライトが照らした。

後ろのカーテンからニコルが出てきた。

青い髪に緑の瞳。

腰につけているポシェットから錬成陣を描くのに必要なチョ−クと絵の具を数本取り出した。

ステージの近くに置いてあったガラクタにニコルが錬成陣を書いていく。

錬成反応の光が辺りを包んだ。

アルが眩しさに目を閉じ、開けた次の瞬間には楽器が錬成されていた。

アルは見たことも無い楽器に驚きと興奮を抑え切れなかった。

アコーディオンとギター、ベース、コンガそれにドラムを混ぜたような不思議な楽器。

ニコルはその楽器をひょいと持ち上げ言った

「皆さん今日は来て頂いてありがとう御座います!!

思う存分唄い、踊りましょう!!」

ニコルは演奏をはじめた。

明るくて自然と体が踊りだしたくなる不思議な曲が楽器から溢れてくる。

アルはこの街で悲劇が起きていることなどすっかり忘れて皆と唄い踊った。

ニコルもとても楽しそうだった。



――――――――――。

いかほど経っただろうか。

男たちは疲れて眠っていた。

アルはニコルに感想を言いに行った。

「すごかったよニコル!

僕、音楽でこんなに楽しくなったの初めてだよ!!!」

「本当に!?ありがとうアルとてもうれしいよ!!」

アルは暫らくの間ニコルと話をしていた。

ボーン、ボーン

時計は2時を指していた。

「あっもうこんな時間だ。行かなくちゃ。お休みニコル。」

「お休みアル。」

アルは意気揚々と部屋に帰った。

このことを兄さんに話せば機嫌も良くなるだろうとアルは思っていた。

エドはまだ起きていた。

「兄さんも来ればよかったのになぁ〜。

すごかったよニコルの演奏!」

「そうか・・・。」

エドのそっけない反応にアルは少し大きな声で言った。

「兄さんどうしたの?さっきからずっと変じゃない!!」

アルはようやく疑問を投げかけた。

エドワードは重苦しそうに口を開いた。

「俺さぁ・・・。見ちゃったんだ。」

「何を?」

「バリンさんのアトリエにいる時にアイツの機械鎧に血が付いてるのをさ。」

「・・・・・。あいつって・・・?」

「・・・ニコルだよ。」







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