love letter 12


あのメールから
俺の中で何かが動き始めた。

Mikiに彼氏がいるとか、
自分に彼女がいるとか、
そんなことはどうでもよかった。

Mikiが生徒であるとか、
俺が教師であるとか、
そんなことはどうでもよかった。

…ただ、自分の気持ちだけが
そこに、あった。

俺はMikiを求めていた。
あのころのように。
あのころよりも強く。

その気持ちが大きくなっていった。
少しずつ。確実に。

Mikiからのメールも増えていった。

時折伝わる、Mikiの声。

「先生、離れていかないで。
ずっと…傍にいて」

「君への想いが止まらないんだけど…」

「私は君を求めてる。
何をって言われてもわからないけど…」

…時は動き出していた。
確実に動いていたんだ。

3月

俺の異動がほぼ確実になったころ…
俺たちはまた遊びに行く計画を立てた。

場所は前回と同じ新宿。
何をするでもない。
ただ、話すだけで良かった。
買い物でもない。
カラオケでもない。
目的なんて…なかった。
ただ、二人でいられればそれで良かった。

…きっと離れることが怖かったんだろう。
俺も。Mikiも。
少しでも傍にいたくて
少しでもつながっていたくて
何かにしがみついていたかったんだ。

離れたくなかった。
逢えなくなるなんて考えたくなかった。

ただ、その日、新宿で
俺は実感してしまった。

…Mikiには「彼氏」がいることを。
「当然」であるべき事実を。

わかっていたことだった。
今更言うことでもないのに。
Mikiの言葉ひとつで
こんなにも苦しくなる自分がいるなんて
思ってもいなかった。

「彼氏とこれを見たんだ」

「彼氏が言ってたんだけど…」

「彼氏はこれが好きなんだ」

その日だけで何回聞いた言葉なんだろう…

その言葉が俺に襲い掛かってきた。

…自分とMikiは世界が違う…
そんなことを漠然と感じた。
何があったわけでもない。
はっきりとMikiにそういわれたわけでもない。
俺の被害妄想でしかなかったのかもしれない。
でも…
そうだとしても…
その「事実」は俺の胸に響いた。

その日の帰り…
俺は思った。

もう、出かけることもない。
もう、あのころに戻ることもない。

…やっぱり忘れるべきなんだ。

そう自分に言い聞かせた。
必死に言い聞かせた



…はずだった。



その翌日
俺は上司に呼び出された。
どんな話なのか…?
全く想像がつかないまま
俺は上司と先輩と話をした。

そこで告げられたのはひとつの答え
俺たちの運命を変えるひとつの答え

それは

「俺がMikiの校舎の塾長になること」

…それが俺たちにとって
ここまで重要な意味を持つこと

そのころの俺は全くわかっていなかった。

…時は止まらなかった。
むしろ、加速していったということに
俺はまだ気がついていなかった。

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