love letter 13


3月の終わり

俺は塾長になった。
自分でもこんな形でなるなんて思ってなかった。
前の塾長が残した仕事の山。
何も知らずにいるたくさんの生徒。

…目の前にある仕事(もの)を
確実にこなしていくこと。

それしか考えられなくなっていた。

忙しすぎる毎日。
周りからのプレッシャー。

…出る杭は打たれる。
周りの講師からの攻撃。
…よくあることだ。

ただ、自分でもわかっていたけれど
俺の心にゆとりはなくなっていった。

いけない。これではいけない。
これでは前の塾長と同じだ。
生徒につらい想いをさせてはいけない。
生徒の前では平静を装わなければ…
生徒の前では普通でいなければ…

…心が崩れていった…

塾では膨大な仕事と生徒の授業で疲れ果て
家に帰れば彼女が俺を悩ませる。

「かまって」

「そんなに仕事が大事なの」

「何ですぐ寝ちゃうの」

…俺の疲れは何処で癒されるものなんだろう…
俺には安らぎの場所なんてないのだろうか…

ふと、こんなことを考え始めた。



安らぎの場所が欲しい。
癒される場所が欲しい。
…何もかもを忘れてしまえる場所。
俺を「俺」として見てくれる存在。
心から許しあえる存在。




…いつだっただろう。
授業の後、Mikiが残っていたのは。




「先生、大丈夫?」

「何が?」

「疲れてるみたいだから…」

「あぁ、平気だよ。
でもMikiが残るなんて最近じゃ珍しいな。
どうかしたの?」

「…先生」

「…何?どうかしたの?」

「…我慢しなくて…いいんだよ…」

「Miki?」




…二人の距離は近づいた。




「…先生…」

「…Miki…
また…甘えてしまうことになる
…こんなの…いけないだろ…?」

「…何も考えなくていいから」

「…でも」

「…いいから」

「…Miki…」




…二人の影が重なった。




そこにいたのは3年前の幻?
それとも新しい時の始まり?

その答えを探すよりも
今はそのぬくもりに
酔いしれていたかった。

頭の中は真っ白で
ただ、抱きしめていた。
あのころのように。
あのころよりも強く。

…Mikiを求めていた。

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