母の自己主張 その1



兄が彼女を家に連れてきた日
何故か 私は 実家にいた 相棒もいっしょに

そして 目撃してしまったのだ

頑なに 2階に籠もり ついに 彼女が帰るまで降りてこなかった 母を

小柄でとても可愛い 素敵な女性だった

私は 一緒に テニス旅行をしたり 映画を兄と3人で観たり

テニス旅行の時 さりげなく助手席を 私に譲ってくれた 彼女

某県知事の 妾の 子だった

年月は経過し 兄は 銀行支店長の 娘と 結婚をした

あれほど 私に 銀行員と公務員は 嫌いだと 言っていた母が
もう 何も 主張を しなかった

車に同乗する 機会が やってきた 当然 助手席には彼女が座った

母は お嫁さんに 遠慮し 具合が悪くても けして
甘えることなく 亡くなっていった

たられば だけれど 最初の彼女が お嫁さん だったならば

母は きっと 甘えられたのでは ないか と 私は 思えてならない

それでも これが 母の 選択の結果

母の自己主張を 無碍にできなかった 兄の選択の結果


母の 早すぎる 死 に 対して 今も 父と私の 間で
いろいろな 見解が 飛び交っている

「最初の 彼女との 結婚を 許していれば もっと 生きていたかも」

という 私の 意見に

父は 「系図に 妾の子 が 一度 入ったら もう 2度と消せない」 と

母の 本能 から 発した 自己主張が 子供にとって 正解だったのか

それは わからないけれど けして 系図を意識しての ものではなく
兄の人生を 思っての ものだと 私は 確信している