結婚の理想と現実



ここではストレスや悩みについてお話してみたいと思います。
小説仕立てにしてありますので、ゆっくりと御らん下さい。
同じ思いの方やこんなことで悩んでますと自分からお話したいと思った方
私はこうして立ち直ったと言う方、ぜひご意見下さいませ。


1.疑惑

去年の冬のことだった。
10cmヒールの皮のブーツを履いて、友達の出産祝いの飲み会をした帰り道、おぼ つかない足取りの私はみんなの予想どおり足をくじいた。
昔から足もとが弱く「ほらほら、そんなに走ると転ぶわよ」という周囲の期待を 裏切らない子供だった。

「いたぁい・・・。」

しかし、先ほど友達と別れた私は仕方なくひとりJR有楽町駅の改札をくぐった 。
「なんだか最近ついてないな、いつもだるい感じがするし、ちょっと疲れがたま ってるのかな?」
車内は残業を終えた疲れ気味のサラリーマンとほろ酔い気分の人々で溢れかえっ ていた。
酔っているせいか、足の痛みもさほど感じなくなってきた。
一刻も早く家にたどり着きたかった。

翌朝目覚めると、案の定右足が赤く腫れあがっていた。
私は会社に電話をいれて午前中に病院に行くことを告げた。
病院の待合室で一冊の料理雑誌を手にとる、夕飯のことなどを考えながらパラパ ラとページをめくっていった。
そして私はある記事に目をとめた。

「うつ病・・・・・?」

うつ病の症状

1 気分の落ち込みが一日を通じてみられる
2 今まで楽しめていたことが楽しめなくなる
3 体重の短期間における著明な変動(1ヶ月以内で5%以上)
4 睡眠パターンの変化(不眠または過眠)
5 普段より行動の量が著明に変動
6 自己への不信感または罪悪感を感じ、自分を責める
7 いつも疲れる
8 考えがまとまらない、集中できない、決断できない
9 死にたいと思う

上の症状のうち5以上が2週間続く場合うつ病の可能性があると言える。
早めに診療内科の受診を進める、との事。

私は後ろから頭を鈍器で殴られたかのような衝撃を受けた。

「まさかね・・・。」

結婚前、私は人一倍元気にパワフルな生活を送っていた。
ストレスを感じた事がなかった訳ではないが、充実した生活を送っていた私は、 ストレスでつらいと認識する前に解消してしまっていたからだ。

「まさかね・・・。」

今度は声に出して言ってみた。


2.嫌悪

その日も仕事を終え、自宅の最寄駅からいつものくら〜い道のりを20分かけて 歩いていた。
私はこの道が嫌いだ。
暗くて何もなくて、明かりの付いていない家と人気のない公園と造園屋の畑。
家にたどり着くまでに人に出会わない事なんてざらにある。
そんなに遅くなったかと時計を見るが、いつもと同じ「午後6時半」を少しまわ ったところだった。
ため息と共に足を前に踏み出す、今日はいつにも増して寒い夜だ。

私は暗闇が苦手だ、いままで暗い道なんて歩いた事がない。
都会で生まれて育った私はいつもネオンに囲まれていた。
車は四六時中走っていたし、コンビにもビデオ屋も深夜だろうが明け方だろうが 明かりをつけていた。
こっちに越してきてびっくりした事は「ライト」がないと自転車で夜の道を走れ ない事である。
もちろんいままでも夜間はライトを付けて走っていたが、周りが明るいのであま り気にとめた事がなかった。
木枯らしがコートのそでを通って吹きつけてきた、私はひとつ身震いをして肩を すくめた。
「はぁ〜」
白い息と共に再びため息を吐き出す。
ほどなく自宅が見えてきた。

3.欠落

暗闇を破るように部屋の電気をつけ、エアコンのスイッチをいれる。
ブーンという音と共に静寂から抜け出した。
TVをつけて肩までこたつに潜り込む。
誰もいない部屋はことさら冷たい。
脱ぎ捨てられたままのコートが目に入る。
シワになるから片付けなくっちゃ。
頭では考えるが体が言う事をきかない。

この家は好きだった。
何もかもが新しく、二人で住むには少し贅沢な広さ。
日当たりのよいベランダと小さな庭。
お気に入りのカーテンと、親にわがままを言って買ってもらった両面ハッチの食 器棚。
全てが完璧だった、都心から離れているという事を除けば。

TVではバラエティ番組がやっていた。
視線は画面に注がれているが、一向に頭に入ってこない。
冷えきった体が暖められてきた頃、涙がひと粒こぼれ落ちた。

フッとわれに返って飛び起きる。
いつの間に眠ってしまったのだろう?
今、何時?
時計を見ると11時少し前だ。

「しまった、帰ってきちゃう。」

涙で湿ったクッションを部屋の隅に追いやって慌てて着替えを済ます。
シワくちゃになったコートとスカートを眺めて、しばらく後悔の念にひたった。

プルルルルルル・・・・・

彼からの電話だ。

「もしもし・・・・・。」
「今から帰る。」
「うん、わかった。気を付けてね。」

私は急いで食事の準備に取り掛かった。


4.調査

「utsubiyou」
パソコンに打ち込んで検索してみる。

【大うつ病の診断】

 下記の9項目のうち5項目以上が、1週間以上にわたって続く場合に診断されます(ただし、5項目の中に1か2が含まれること)。

1.うつうつとした気分がほとんど毎日続いている。

2.何をしても、興味をもって取り組めないし、喜びも感じられない。そんな気分がほとんど毎日続いている。

3.特に食事療法をしていないのに体重が減少したり、増加したりする (例えば一ヶ月で体重の5%以上の変化が見られる)。 または、食欲がなくなったり、増進したりする。

4.十分な睡眠がとれなかったり睡眠過多になったりするのがほとんど毎日続いている。

5.すごくあせってイライラしたり、まるで元気がなくなったりする状態が、ほとんど毎日続いている。

6.理由もないのに疲れやすくなったり、気力が減退したりする状態がほとんど毎日続いている。

7.自分は全く価値のない人間だと深く思ったり、自分はとても罪深い人間だと思い込んだりする状態がほとんど毎日続いている

8.思考力や集中力がなくなって、何かを判断したり決断したりする能力がなくなる状態がほとんど毎日続いている。

9.死について繰り返して考えるようになった。特別な計画はないが自殺したいと繰り返し思ったり、どうやって死のうかと計画を立てたり考えたりする。


 【軽症うつ病の診断】

 次の2点に当てはまる場合に、軽症うつ病の可能性が高いと診断されま す。

1.抑うつ気分(ゆううつで不安、イライラした気分)がほとんど一日中続くような日が、そうでない日よりも多く、少なくとも1年間同じような状態が続いている。

2.1.で述べた抑うつ状態に加え、下記の6項目の症状のうち少なくとも2項目以上が、1年も2年も続いている。

食欲減退かまたは過食
良く眠れない不眠か、寝すぎてしまう過眠
気力の低下、または疲労
自尊心の低下
集中力の低下、または決断困難
絶望感

以上『e治験.comさん参照』



5.自覚

そういえば、最近寝つきが悪いし眠りも浅い。
朝はすっきり目覚められずいつも調子が悪い。
結婚して半年、気がつけば10キロも太ってしまった。
大好きだったビーズもやる気にならないし、あんなに楽しかった料理も今は苦痛でしかない。
何もやる気がおきなくて、気がつけば眠ってしまっている。
あんなに楽しみにしていた、友達との久々の再会も先週末ドタキャンしてしまった。

理由は・・・・『めんどくさくて、行きたくなかったから。』


最近はメモに一日の予定を書く事にした。
家に帰ってから寝るまで分刻みで書いていく。

6:30 家に着いたら座らずにまず着替える事。
6:40 洗濯機のスイッチをいれる。
6:45 乾いた洗濯物を取り込んでたたむこと。
7:05 夕食の支度をはじめる。





こんな事をしなければならなくなってしまった自分が情けなくて情けなくて涙が止まらなかった。

休みの日は何でもできた、彼がいると無駄な動きは一切なくなる。
なぜだろう?

彼の仕事はいつも忙しく、早いときで10時、普通で12時、深夜2時3時もあたりまえ、果ては明け方5時に帰ってくる。

私はいつもひとりで、寒くて暗い部屋で彼の帰りを待ちつづけている。
ず〜っと、ず〜っと待ちつづけている。

彼に話したことがなかった訳ではない、一人でいると何もやる気が起こらない事や、頭がおかしくなりそうになる事、でも彼は「困ったね」と言っただけで私がどれだけ悩んでいるかなど理解した節はみられなかった。

彼は家事に協力的な良い夫だった。
私が仕事を持っているという事もあるが、時間のあるときは進んで掃除や皿洗いなどをしてくれた。
ただ私の心の中で起こっている事にはまるで気がつく様子はなく、やる気がないダラダラ病くらいにしか思っていないようだった。


6.蓄積


寒さが増すと共に私の症状はひどくなった。
今度はメモに書いても実行ができなくなった。

朝目がさめないので、仕事に遅刻する事も多くなった。
それでも仕事中や人に接しているときは何事もなかったかのように振舞えた。

もともと社員50名程度の小さな会社だったが、数年前の大規模なリストラの為、女子社員は私を含め二人だけになった。
その一人もほどなく出産の為に退職、私はそれ以来もう2年くらい平日に同世代の女の子とは話をしていなかった。

そんなことも鬱積していくにあたり影響があったのかもしれない。

もちろん友人がいなかった訳ではない。
何故だか、古くからの友人には心配をかけたくなかったのだ。
彼女達には努めて明るく振舞ってしまう自分がいた。

今思えば、私の精一杯のプライドだったのかもしれない。
バカなプライドだった。

誰か助けて、私を助けてください。

声にならない声を上げながら、私はズブズブと黒い沼の中に沈んでいった。


7.躊躇

日々壊れかけていく自分に言い聞かせる。

「しっかりして、自分の病気に気がついたという事は治療の第一歩なのよ。」

そうだ、このままでは本当におかしくなってしまう。

「でも、どうすればいいの?」
「病気なんだもの、お医者さんに行けばいいじゃない。」

そうか・・・・、そうだった・・・・。
私は病気なんだった・・・・。
そんなことさえわからなくなっていた。

すがるような気持ちで病院を調べてみた。
通いやすいところ、夜遅くまで診察可能なところ、料金、病院の雰囲気やどんな先生なのかなど。
いろいろ考えたが、どうしても「ここ」という所がない。

そんなとき、ある診療内科のサイトにたどり着いた。
やさしい顔をした先生が微笑んでいた。
コメントは・・・・・

「わたしがお話を伺いましょう」

こらえていた涙が溢れてきた・・・・。
昼休みの誰もいないしんとしたオフィスで、私は肩を震わせて泣いた。

食事に出た男性社員が帰ってくる前に、顔を直して普通にしてなくっちゃ。
急いで病院の診察時間や電話番号の書いてあるページを印刷してカバンにしまった。
ただの紙きれなのに・・・お守りのような存在だった。

私はしばらくの間それを持ち歩いていた。
でも、どうしても電話をする勇気が出なかった。

電話をすれば楽になれるのに・・・・。

ある日、意を決して会社近くの公衆電話の前に立った。
メモを片手に受話器を上げる。

3×××−×××

私はここで躊躇した。
最後のひとつのボタンをどうしても押す事ができなかった。


8.希望


季節が移り、木々の色や風の香りに春の訪れが感じられるようになってきた。
鳥のさえずりも季節の変化を喜んでいるように聞こえた。

私は吸い寄せられるように一軒の店に入った。

そこに飾られた色とりどりの石たちは、やわらかくて暖かい光を放っていた。

閉店間際の店内に人気はなく、ひっそりと静まり返っていた。
オニキス、ブルーレース、アメジスト、ローズクオーツ・・・・・
ひとつ手に持ってみると石は不思議な温度を持っていた。

「よかったらどうぞ。」

髪が腰まである小柄な店員に紙を一枚差し出された。

白  水  晶   ・・・ 全ての浄化・幸運を招く
ア メ ジ ス ト ・・・ 心を癒し直感力を高める・安眠
ラベンダーアメジスト・・・ ストレスから解放し、心の安定をもたらす

石の持つ力がそこには書かれていた。

「あの・・・。ラベンダーアメジストってどれですか?」

差し出された石は白味がかった美しい紫色をしていた。
見つめていると不思議と暖かい気持ちになった。

私はその石を小さなリングにしてもらう事にした。
リングを作りながら小柄な店員が私にこう言った。

「石に呼ばれちゃったんだね。」

顔を上げた彼女は、どこか遠い昔に出会った事のあるような懐かしい雰囲気のする人だった。


9.転換

午後5時、まだうっすらと明るい。

風はまだ冷たいが、あぁ、春が来たんだなと思った。

明日からは待ちに待った海外旅行だ。
南米ジャマイカとニューヨークの旅10日間。
彼の仕事の都合で新婚旅行が8ヶ月ずれたのだ。

私は薄紫のリングを眺めながら微笑んだ。


10日間はあっという間だった。

ジャマイカで自然に触れ、よく食べ、よく飲み、よく笑い、現地で知り合ったイギリス人とバーで歌い、ネイルサロンで冗談を言い、毎晩遅くまで語り合った。

ニューヨークで買い物をし、自由の女神を見てグラウンドゼロへ行った。
黙祷を捧げ、自分の命に感謝をした。

4月だと言うのに凍えるような寒さの中、ヤンキーススタジアムの裏で松井の出待ちをした。
試合の興奮も手伝ってか、ちっとも苦にはならなかった。

夫と四六時中一緒にいられたのもよかったのかもしれない。
私の心の氷は少しずつ溶けていった。

帰国後、やめていた運動をすることにした。
汗をかくと気分がすっきりした。
彼の帰りが遅いのだから、私も好きな事に時間を使えばいい。

ずっと家にいなければならない法律はない。

春夏用に、新しい服を買い込んだ。
長かった髪を肩まできり、久しぶりにマニュキアをつける。
そうそう、この色は一番のお気に入りなんだ。

おしゃれをすることもすっかり忘れていた。

英会話も休まず続けている。
レッスン後の気分の高揚は心のエッセンスになる。

友達に連絡をとってみた。
日頃の不義理など気にせずに優しく声をかけてくれる。

「すもも・・・今日は声が明るいね・・・。今度、みかんちゃんとあんずが子供つれて里帰りするから、うちに集まるんだけど・・・・すもももおいでよ。」
「うん、行く行く〜」

休みの日に夫をおいて出かけてはいけないなんて誰が決めた?

プラグの上にうっすらと付いた埃が視界に入る。
見なかった事にして二階に上がった。

週末まとめて掃除すればいい。

ナツメグも削り節の大きな袋も棚の後ろに追いやった、使いたくなったら出せばいい。
それが賞味期限が切れる前であることを祈りつつ・・・・。
だしの素も中華味もけっこういけるし、たまにはお惣菜を買えばいい。

全てを完璧にする必要などないのだから。

ルールを決めていたのは私・・・。

私自身だった。

だから、新しいルールも私が決めていけばいい。

4ヶ月たった今、3キロの減量に成功した。
あせることはない、ゆっくりと確実にもどしていけばいい。

ラベンダーアメジストのリングは宝石箱の中に大事にしまってある。
もう何ヶ月も身につけていないけれど。
今度、薄紫のワンピースを着た時につけてみようかな?


10.最後に・・・・


うつ病は「心の風邪」と言われています。

日本人の5人に1人が一生のうちに一度はかかる病気だそうです。

まじめで完璧主義、責任感の強い人や几帳面な人などが、かかりやすいそうです。


大切なのは休養をとる事。

がんばり過ぎない事。

早めにお医者様に相談する事。

私はたまたま旅行という長い休養をもらいました。
それがなければ今どうなっているかわかりません。

また寒い季節がやってきます。
去年行かれなかったし、今年の冬は大好きなスキーに絶対でかけようと思います。

そして、もしも今度具合が悪くなったら、勇気を出してあのお医者様に連絡してみようと思います。
病院に行かなければ正確な診断はされません。
もしかして私は睡眠障害(?)か、本当はただ怠けたいだったのかもしれません。(笑)


お互いがんばらずにがんばりましょう。。。。。

2003.9.18   す も も ♪

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