思い出の宝箱

リョウくん編−完結
☆告白

リョウくんは一番奥に座っていた。
ちょうど彼の周りに人はいなく、私は彼の左側の席に滑り込んだ。

今じゃなきゃ、今言わなきゃ、決心がくずれる。
後で呼び出す勇気も、場所を変える勇気も私には無い。

ひとつだけ深呼吸をして話し掛ける。

「リョウくん、ちょっと話をしてもいいかな?」
「ああ、いいよ。何?」

こんなに近くで真っ直ぐ見つめられたのは久しぶりだ。
ドキドキして、くじけそうになった。

私は彼の耳に左手をそえて、他の人に聞こえないようにした。
そんな事をしなくても大音響のカラオケボックスでは聞こえるはずも無いのに・・・・。

彼の耳元3cmでささやくようにこう話した。

「私・・・・。私ね。・・・・・・・・・・リョウくんのこと、好きだった。ずっと、ずっと好きだった。どうして私じゃダメだったの?」

何か言おうと口を開きかけた彼を私は制した。

「待って!もういいの。お願いだから何も言わないで・・・・。」

堪えきれずに涙が溢れてくる。
2年分の想いの涙が・・・・・・。

「ごめんね。自分に区切りをつけたかったの。このままじゃ私・・・一歩も前に進めない。だから・・・何も言わないで・・・・。」
「・・・・・・・・・。」

私は卑怯者だった。
相手の心も考えずに投げつけたボール。

投げるだけ投げて、返球を拒んだ。


もし彼が口を開いて、何か私に話したら・・・・・。
その時の私は正常ではいられなくなっただろう。

もし彼が「俺もあの時お前のこと好きだった。」なんて言い出せば、取り替えせぬ過去を思い出して気が狂っただろう。

もし彼が「今の彼女と別れるから付き合おう。」なんて言い出せば、彼女を傷つける。
そしてせっかく前を向いて歩こうと思った決心が鈍ってしまう。
また、一からやり直しだ。
第一、リョウくんは私の手におえるタイプではない。

もし、彼に「ごめんね。彼女が大切だから、すももとは付き合えないよ。」なんて言われたら、わかっていた事とはいえ嫉妬に燃え盛る炎が私の身を焦がしてしまうだろう。


まさに自分の為に、自分の未来への扉を開ける為にした告白。
自分勝手な最低な告白。

でも、私はそれだけあなたに苦しめられた。
少しくらい、横暴でも許されるだろう。(と、思いたかった)


それまで一曲も歌わなかったリョウくんが腰をあげた。

選曲は・・・・「完全無欠のロックンローラー」


大人しく奥の椅子に座り、焼酎を飲んでいたリョウくん。
カラオケは好きじゃないって言っていたリョウくん。

彼はテーブルの上に乗り、激しいアクションで踊りながら歌いだした。

「完全無欠のロックンローラー、ロックンロールで生きていく・・・・」
「つっぱって、つっぱって、つっぱって、つっぱって・・・・・」


リョウくん・・・・。
私・・・知ってるんだ。

あなた、本当はすごく甘えん坊のくせに、いつもつっぱって生きてきたんだよね。
女の子の前では、いつもかっこつけて・・・・。

ふざけてばかりで、あいつは面白い奴だってみんなに思われてる。
そうする事で内面の自分をガードしてた。

本当は誰よりも淋しがりやで、繊細で、傷つきやすいくせにね。
あなたはこれからもそうやってずーっと、つっぱっていくつもりなの?


ねぇ、リョウくん。
私・・・あなたのそういう所、全部ひっくるめて大好きだったよ。
本当にあなたを好きだって気持ち、絶対誰にも負けないよ。
いままでも、これからもずーっと、ずーっと・・・・・。

今の彼女にも、これから現れる未来の花嫁さんにもね・・・・・。

いままでありがとう。
素敵な思い出をいっぱいいっぱい・・・・・ありがとう。
つらくて、苦しくて、死にそうだったけど、とても楽しくて、嬉しくて幸せで・・・・。
あなたに会えてよかったと、心から思います。


☆ダイヤモンド

その後私は周りを省みず、みんなに迷惑をかけながらずーっと泣いていた。
外を歩いている時も、電車の中も、家に着いても、ずーっと、ずーっと泣いていた。
いつ泣き止んだのかは覚えていない。

涙って枯れないんだね。



それから2年間の交際を経て、私は桜木さんと結婚する事になる。

そして桜木さんは相変わらず「仕事の虫」の我が家のダー様となった。


二十歳くらいの頃、友達と3人で伊豆に旅行に行った。
伊豆シャボテン公園の陽気なおじさんから聞いた話を思い出す。


お嬢さんがた。
結婚するなら1番好きな人ではなく、2番目か3番目を選びなさい。

何故なら1番の人はみんなにも好かれるから。

ダイヤモンドは美しくて、誰もが欲しがるものだから。
苦労して手に入れても、また誰かに奪われないとも限らない。

それなら、誰の目にもとまっていない原石を探して来なさい。

そしてそれをあなたの手で、あなた自身が磨き上げていきなさい。

結婚している男性が素敵なのは、奥さんが毎日旦那さんを磨いているからなんだよ。

いいかい、お嬢さんがた・・・・
結婚するなら2番目か3番目だよ。


私はこの時、はっきり言って
「何言ってんの?このおっさん。結婚するなら一番好きな人じゃなきゃ意味無いじゃん。私は一番かっこよくって一番ステキで一番好きな人と結婚するんだよ!!」
そう思った。

でも、今は・・・・・おじさんが何を言いたかったかわかるような気がする。

私にとってリョウくんは永遠の王子様で、たぶんこれから先もそれは変わらないと思う。

ピカピカ光るダイヤモンドは余りに鋭角で人を傷付ける。
その美しさに隠された悲しみを閉じ込めて、彼はこれから先も輝き続けるだろう。

私はそのダイヤモンドを写した写真を思い出の宝箱にしまってある。
もう、あまり出す事も無いだろうけどね。


私は今、世界で一番大切な宝石を丸く削っている最中だ。
この宝石に角はいらない。
果たして我が家のダー様は何色に光り輝くのだろうか?


おしまい。


☆あとがき

最後まで読んで頂いて本当にありがとうございました。
なにぶんにも素人が書いているものでございます、つたない点は大目に見て頂き、お許しを頂きたいと思います。
恐れ多いお願いなのですが、素人が書いているものとはいえ、転載や引用はなさらないで下さい。
そんな人はいないと思いますが、よろしくお願いします。

このお話は私の実体験を元に作られたお話です。
個人名や団体名など全て偽名を使わせて頂いています。
思い出しながらの事ですし、多少の脚色も加えてありますので、一から十まで真実なわけではありません。


私の心の宝箱。
少しだけお見せいたしました。
如何だったでしょうか?
あんまり面白くなくても許して下さい。
私にとってはかけがえの無い宝物なんですから・・・。


何気ない日常、うまく行かない恋愛、どうしようもない感情、臆病で自分勝手な自分etc.
あなたにダブるものはひつとでもありましたか?
賛否両論あるでしょうが、あくまで過去の出来事です。
これからどう生きていくかは、私次第・・・・


そして、あなた次第です。
素敵な恋愛をいっぱいして下さいね。


長々とありがとうございました。

2004.5.19 すもも

HOME BACK