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11月3日 変なしこり。

この前出来たニキビが、変なしこりとなり僕の口元に残った。
「ニキビ跡地」が全面に押し出されている今回のしこりスタイルは、困ったことに一向に消えてくれそうもない。それどころかしこりは「前からここにいましたよ」的な面構えで、今にも鼻歌を歌い出しそうな程我が物顔で僕の口元を占拠している。
しこりは案の定そのまま居座り、やがて鼻歌を歌いながら優々と朝風呂をかますようにまでなった。「フンフフンフひーとーつーだーけーのはーなー、オイちょっと、お湯熱いから温度下げてー。あとタオル出しといてー」と風呂場から叫ぶしこり。
僕はそんなしこりに腹が立っていた。僕とて(ギャンボを立派に蓄えてはいるが)乙女の端くれだ。(ギャンボ=ちんぽ)(僕は卑猥な表現に我慢がならないので、あえてこの様にオブラートに包み込んでいくことにした)
「ニキビ跡地」であるしこりを毎日鏡で見る度に、まだ消えないまだ消えないと苛々を募らせていたのだ。それがなんだ、ヤツときたら我が物顔にも程がある。
それが今日、ついに爆発した。
「あんたねえ、しこりたいならしこりなさいよ!そうよ、あんたなんていつまでもシコってればいいのよ!」
と、怒鳴ったところで僕は赤面した。僕は卑猥な表現には我慢が出来ないセレブなのだ。だからもう寝るブリティー。こんなお下品な話につきあってられませんブリ。あー下劣な男っていやですこと(股間をぼりぼり掻きながらヘルス「抜き山抜き彦」へとフェードアウト)

11月9日 生まれ変わるという事。

今回のリニューアルで、今まで漂っていた湿っぽさが幾分かなくなり、明るくなった様に感じるのではないだろうか。そう、随所から漂っていた腐臭をキムコで吸い取ることに成功した。硫黄の臭い系サイト、「ヒダリマガリネオ」は今、銀杏の臭い系サイトととして新たに生まれ変わったのだ。
実はサイトを閉鎖して、新しくどこかで始めようかと思っていたのが夏前の事。それから間もなく忙しくなり、それどころではなくったのだ。ずっと見に来てくれていた方なら気づいたと思うが、更新頻度が夏から随分と落ちてしまった。ゆっくりとPCに向かえる時間が減ったからだ。
それと同時にサイトに対するテンションも下降を辿った。だが、掲示板への優しい書き込みや変なアダルトグッズ業者の宣伝、誰も登録しないであろう嘘くさい出会い系サイトの宣伝やら、さらにメールフォームから送られてくる優しい言葉や卑猥な陰語、そして空メール。それらが僕のやる気に再び火をつけてくれた。
火がついた僕のやる気はメラメラと燃え上がり、チリチリと前髪を焦がし始めた。
危ない!
僕はとっさに消化器を取り出した。勢いあまり、消化器本体が僕の顔面を殴打したが僕はひるまなかった。しっかりと構え、己の顔面めがけて消化剤を吹き付ける。
強烈な勢いでピンク色の粉が僕に襲いかかり、僕は激しく咳き込みながら転げ回った。
「きっ、貴様、何をする!」
僕は、僕に無礼を働いた消化器を殴りつけた。だがヤツのボディは鉄で出来ていたので僕の手が砕けた。ならば、と蹴りを入れると消化器は吹っ飛び、道に停めてあった黒塗りフルスモークベンツにぶつかり、エンブレムをへし折った。
これはマズい、とエンブレムの代わりにチュッパチャップスを刺しておいたが、残念な事に僕は海の藻屑と化してしまった。
だから新しく生まれ変わったのだ。
名前も「えのきだけ」から「榎木戸モレシャン」に改名した。生まれ変わったのだ。ついでに新コンテンツ「フォト日記」も新たに設けてみた。そこでは携帯で撮った何かをアップしていきたいと思っているので、暇でどうしようもないときは覗いてやって欲しい。

11月13日 同窓会と愛。 

先週、四年ぶりに開かれた同窓会を前にして、僕は久しぶりに重めの風邪でダウンした。
僕がどれだけ同窓会を楽しみにしていたか。仕事ばかりで、淡々と流れゆく時間の中で、大した喜びもなく過ごす日々の中で、青春を共有したあの頃の面子に会えるというその時間を僕がどれだけ楽しみに待っていただろうか。
だが、僕の体は同窓会二日前から風邪をお召しになり、バカな事に前日には高熱でうなされた。当日は、少しは下がったものの熱は完全には引かなかった。それでも無理して行ったが、当然酒など飲める筈もなく、熱のツラさと、思ったように動かない体と脳に悩まされながら過ごすハメとなった。間もなく僕はダウンし、タクシーで家に帰ったのだった。
車の中で僕は考えた。風邪を引くタイミングがあまりにも悪いのだ。今まで健康だったのに、何故その、四年ぶりの日をわざわざ選び、風邪を引いたのか。楽しみにしていたのは知っていた筈である。だとすれば何故、僕の体は僕の邪魔をするのか。
やはり、この問題についてじっくり話し合ってみる時間が必要なのかもしれない。いや、むしろ時間を割いてでも話し合わねばならないだろう。たとえ、その話し合いによりどちらかが傷ついたとしても、これは解決すべき問題なのだ。ケンカ別れになろうとも、僕は話し合うべきだった。
問題に目をつぶり、誤魔化しながら過ごす事もできる。何も無いように振る舞うことだってできる。そしてそれが楽な道であることも知っている。だが、時には本心をぶつけることだって必要なのだ。それが良い結果を生み、二人の絆をより強めることになればいいではないか。より良い関係を、僕は築きたい。
だからこそ、僕は、僕の体に聞いてみたのだ。
「何故、今、風邪を引かせたんだい?」
体はうつむいたまま、黙っている。
「なあ、怒らないから言ってみなよ」
僕はできるだけ穏やかに促した。
「だって……行かせたくなかった」
「なんでさ?」
「だって、同窓会で、出会いがあったらヤなんだもん」
「それが理由?」
「うん」
次の瞬間、僕は、僕の体を抱きしめていた。なんて純粋、なんて愛おしい僕の体!ああ、僕の体よ!いくら抱き締めてもまだ足りない!ああ、ああ!!
僕はそのまま、僕の体を本気で抱き締め続け、やがて骨を砕いた。それから高いところに上り、僕の体を放り投げてから僕自身も飛び降り、僕の体に膝爆弾を食らわせながら落下していった。

11月20日 奥歯が痛い。

今日は一日中奥歯の痛みに悩まされていた。もしかすると、これが親知らずの痛みなのかもしれない。とにかく疼くのだ。
もしも奥歯がこの先痛み続けるというのであれば、痛いままでもいい。ただ正義漢の僕としては、このまま理不尽な痛みで僕を苦しめることを見過ごすわけにはいかなかった。
無抵抗、かつ何も悪くない僕を苦しめることは正義とは言えない。親知らずは悪だ。僕は自分が正しいと信じる道を行く。僕の親知らずの痛みを止めることが出来るのは、他でもない、この僕だけなのだ。親知らずに、自分に行為が悪であると言うこと分からせねばならない。親知らずとて人の子、僕が誠意を持って語りかければ、きっと理解してくれる筈である。
「なあ、親知らず。今日はいい天気ではないか。こんな日に、君は何故、痛むんだい?」
僕はできるだけ穏やかに、そしてにこやかに、親の気持ちで語りかけた。
「うるせえハゲ。お前に俺の気持ちが分かるかこのボケ」
挑発に乗ってはいけない。親知らずは僕を試しているのだ。
「ははは、穏やかじゃあない、しかし若さって素晴らしいな。けれど、君の痛みのせいで、この人は苦労しているんだ」
僕は自分の事を指さして言った。
「知るかこのハゲ」
「貴様ぁ、誰がハゲかぁああ!……おっと、ははは、ついムキになってしまった、いやいや、みっともないところ見せてしまって申し訳ない」
僕は冷や汗をかいたので、頭にのせてあったカツラを持ち上げ、そのカツラで汗を拭いた。カツラを頭に戻し、携帯ブラシで七三に分けながら僕は続けた。
「親知らずよ、若さっていいよなあ」
僕は若き日の自分を思い出しながら言った。
「だから、消えろってこのハゲ」
「貴様ぁ、誰がハゲかぁああ!ブッ殺してやる!」
気づくと僕は親知らずに殴りかかっていた。親知らずは抵抗し、僕の髪の毛を掴んだが、髪の毛のみ掴んだままヤツは転んだ。
ズキン、と奥歯に痛みが走った。
僕はこのチャンスを逃さなかった。親知らずを懲らしめるのは今しかない!
強く握りしめた僕の拳は堅い。渾身の力を込め、パンチを僕の奥歯に叩き込む!
「ギャア!」
僕は自分の拳を口にくわえたまま吹っ飛び、そして生まれてきたことを後悔した。その後悔を引きずったまま、いや、背負ったまま生き、42歳の若さで天に召されたのだった。めでたしめでたし。

11月27日 守るべきもの。

うっかりしていた。
歯医者を予約していたことをすっかり忘れてしまい、スッポかしてしまったのだ。
約束も守れないバックレ野郎だと思われてしまうことだけはなんとしても避けたかった。なぜならば僕が守れる物など所詮は約束しかない。つまり約束は僕にとって最後の砦だったのだ。
約束も、ゴールも守れないとしたら、僕は一体何を守って生きて行けば良いのか。
かつては僕にも、一人前のゴールキーパーだった時代があった。当時の僕は、「神経質な守護神」という異名を持ち、チームメイトからは「あいつは自分の事を必死に守る、あいつにまかせておけば、あいつは平気だ」と噂されていた。「だからあいつの事は忘れて、パーッと騒ごう」とも言われていた。
このことから、僕が如何に優秀なキーパーであったかが理解して頂けるのではないかと思う。
当然、異名は多岐に渡っていた。キーパーとしての才能は神経質だけには留まらなかったのである。「守護神of神経質」「守護神経質」「守護神なのか神経質なのか」「それとも昆虫好きなのか」「神経質かつ守護神なのか」「こじゃれた神経質」「胃弱な神経質」「神経質なのか胃弱なのか」「胃弱なのか」「胃が痛むのか」「胃弱な守護神」「守護神胃弱」「守護神今日も病欠」「守護神胃弱で今日もサクロン」「サクロン」「テポドン」「味噌かつドン」「ドン胃弱」「胃弱ドン」「胃弱ドーン!」「胃弱ドーン!」「胃弱ドーン!(泣きながら)」
「胃じゃ……うう、俺もうこんな事言うのイヤっスよセンパイ!辛いんスよ!……もう、今日限りでやめさせてもらいますから!」

そう怒鳴ると、守護神は乱暴にドアを閉めた。閉めたドアに挟まれた、レースのカーテンが少しだけ揺れていた。隙間風が吹いているのだろう。
その時、突然ドアが開き、守護神が顔を出したのである。
彼が戻ってきた! 彼の顔をまた見ることができ、私の心は年甲斐もなく踊りだした。
だが彼は挟まったカーテンを直し、それからまた、ドアを閉めた。
残されたのは、胃弱な私だけだった。
今日も、胃が痛む。
そして明日も。

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