戻る

3月1日 オカマフォーエーバー。

約4日。こんなに日記を書かなかったのは、このサイトを始めて以来だわ、と、僕の中のオカマが遠くを見ながら呟いた。オカマの遠くを見る目に少しだけ射している暗い影が、僕を惹きつける。こんなに魅力的なオカマはいない。
気付くと、僕はオカマと一緒に夕暮れ時の誰もいない浜辺を転げまわっていた。はしゃぎ合う僕達。それから時間が止まる。
僕はオカマの目を見つめて言った。
「なあ、オカマ、俺達……」言い終わるより先に、オカマが口を開く。
「オカマって呼ばないでよ!失礼しちゃうわ、キー!」
オカマは僕の顔をガリガリ引っ掻いて走り出した。
「まてよ!」必死に追いかける僕。だがオカマに追いつけない。足の速いオカマだ。オカマ足速い。超、カマ速(ばや)い足。
「カマ速(バ)えー」僕は息を切らしながらそう呟き、これ以上追いかけても無駄だと悟った。オカマの事はもう、諦めるしかない。僕の中のオカマキャラは、僕から逃げ出してしまったのだ。
「さよなら、カマ林」と、僕はカマキャラに別れを告げて、その場を立ち去った。
後日、カマ岸から手紙が届いた。
封を開ける時に、指が切れた。あいつめ、かみそりの刃を仕込みやがったな。微笑ましい気持ちになる。
中を見ると、僕の大好物のチョコが入っていた。
チョコ!僕はチョコが大好きなんだ!早速むしゃぶりついた。とてもビターで最高に旨い。食べながら封筒をよく見ると、中からメモが出てきた。
そのメモには『どくいり きけん たべたら しぬで』と書かれている。
「きゃッ!何かしらコレ!怖いわッ!」
僕の中にオカマキャラが戻った瞬間だった。だがすぐに死んだ。
とても残念だ。

3月3日 もやしっ子。

関東地方に春一番が吹き荒れた。
丁度僕が昼飯を買いに外に出たときの話。強い風が、ビルとビルの間から吹いてきた。それはとても強い風だった。向かいから歩いてきていたお婆ちゃんなどその風で飛ばされそうになっていた程だ。恐るべき強風。もやしっ子ならば間違いなく吹き飛ばされていただろう。もやしっ子ではなくて本当に良かった。と、強風で吹っ飛ばされて、道路をゴロゴロ転がりながら思った。もやしっ子だったら、今頃吹っ飛ばされているところだ。
やがて風が少し弱まり、ようやく立ち上がれたは良いが、またもや強風によって飛ばされ、やがて車に撥ね飛ばされた。危ない危ない、もやしっ子だったら今のは間違いなく致命傷だな。と、僕は自分のマッチョさを誇りに思いながら他界したのである。
とても残念だ。

3月5日 恐怖の金縛り。

先日、夜中に突然目が覚め、金縛りに遭っている事に気付いた。体が全然動かないし、声も出ないのだ。体が寝ているのに、脳は起きている状態が金縛りだ、と聞いたことがあるが、果たして本当にそうなのだろうか。この、僕の金縛られ具合は、本当にそうなのだろうか。不安になる。
金縛りを解くため必死にもがく、が、正確にはもがけていない。指先まで全く動かない。しかも何やら息苦しい。僕はだんだん怖くなってきた。何か霊的な力なのだろうか。などと考えると恐怖が益々増す。つまり、ます×3、なのである。いや、ますはかけない。何せ動けないんだから。
と、最低の駄洒落も交えつつ話を先に進めるが、本当に恐ろしくなってきたのだ。この金縛られ具合は洒落にならない。どうにかしなくては!
僕は考えた。何が僕を金縛らせしめているのかを。金縛ばばばばらせしめているのかを。そして、金シバらばらせしめるとは、一体どういう状況なのかを。
もはや当初の目的である金縛るという行為からは激しく逸脱してしまった状態である『カナシバらせしめる』
随分と身分の高いお方に対して使う言葉のような雰囲気を出している。例えば、カナシバお召しになられている、という風にも使われるのだろう。
そうか、僕は金縛りに遭っているのではなく、金縛らせしめしめてられているのか。しめしめなのか。そうだったのか。それに気付いた瞬間、金縛りから開放された。もう少し高貴な気分を味わいたかったのに、とても残念である。

3月9日 ゲームやりすぎ、のち死亡。

べベーン!(いきなり全裸で登場)
(服を着ながら)さて、この2日間の殆どを、ゲーム「信長の野望」に費やしてしまった。長時間連続でゲームをやり続けて死ぬ人の話を最近良く聞くので、僕も気をつけねばならないと思う今日この頃。実は今、猛烈に頭が痛い。そう、ゲームのやりすぎで頭が痛い。これは面白ゲーム「信長の野望」の陰謀なのだ。そう、ブナガーノ(信長)は僕を殺そうとしている。そして僕はそれを見抜いた。つまり、ブナガーノの野望を阻止する事に成功したのだ。そう、言うなれば僕は明智光秀。これは謀反なーのだー!(最早脳が壊れ始めている)
ムホン!(咳払い)さて、話を続けるが、その恐るべき陰謀を見抜いた僕は、早速PCから「信長の野望」のCD-Rを取り出し、それを裏返しにして壁に飾ってみるとあら不思議、素敵なオブジェの出来上がり!
その七色に輝く素敵なオブジェが、僕を殺そうとしていただなんて信じられなかった。しばらくウットリと眺めていたが、飽きたのでマグカップの下に置いてみた。やはり素敵だった。七色の光がとても綺麗で、見ていると吸い込まれそうになる。
吸い込まれたら困るので、またPCの中に戻してブナガーノ再開。あソレ戦じゃあ!(服を脱ぎながら)

3月11日 武将宣言。

やる気ゼロだーい!(全裸で天に向かって大声で)
全てにおいてやる気がなくなる3月。僕は毎年、この時期になると情緒不安定気味になってしまう。正直な事を申し上げると、僕はこの先一生、ゲーム「信長の野望」だけをやって生きていきたいと思っている。真面目に働いたり、真面目に学校に通っている皆様には誠に申し訳ないと思うが、僕はこれから、戦国武将として生きていきたい。いや、いくことに決めたのだ。実に申し訳ないが、僕の決意は固い。誰がなんと言おうと今日から僕は武将だ。武士だ。お侍なのだ!
そう、株価が八千円を割った昨今、これから再び戦乱の時代が訪れるのだ。否、訪れますのジャ。ソレ鎖国の復活じゃい!日の本の国の男子達よ、今またマゲを結って立ち上がれ! そして思い出すんだ!夏に短パンであぐらをかいていて、立ち上がった時のひざ裏のあの不快さを!汗びっちょりのあの気持ち悪さを!クーラーの冷たい風がその汗を冷やして、なんだか損したみたいな、こう、もやもやと嫌な気持ちになっただろう!さあ思い出すんだ!
思い出したか!
ならいい!ワシはもう寝る!

3月13日 機種変更への道。

今の携帯に変えてから既に2年が経った。それだけ使うと随分と旧型、かつポンコツになってしまい、ちょっと長く話しただけで電池が切れてしまう。ちょうど2年、いい機会なので機種変更をしようと思い、ショップに向かった。どうせなら写メールが出来る最新のヤツがいい。僕はジェイフォンユーザなのだ。
ショップに着き、狙っていたヤツに変えてくれと頼む。が、ないと言われてしまった。僕はどうしてもその機種が欲しかったので、食い下がる事にした。
「奥のほうを探したら?」と、いわゆる袖の下を幾らかチラつかせながら言う。
「そういうのは困ります」と言いながらも店員はもの欲しそうな顔をしている。なるほど、量が足りなかったか。
「無いと思うから無いのでは?」と、メンタルな面からつついて、袖の下の数を増やしてみる。
店員はゴクリと生唾を飲み込む。僕はその瞬間を見逃さなかった。コイツは落とせる。
「これねえ、凄いんですよ」と、僕は袖の下であるチョコボールを机に何粒か並べる。「中にはピーナツ、コーリコリ」
「……コ、コリコリ!?」店員の口から涎が垂れた。
「こっちはキャラメル、ネーバネバ」言いながら、並べていく。
「……ネバネバ?」
店員が訝しそうに顔をしかめる。しくじった、ネバネバはマズかったようだ。
「いやほら、織田裕二の例の歌。って古!」
僕は人に指摘されるのが嫌なので、自分で突っ込みを入れつつ、店員の反応を見る。
店員はチョコボールを凝視しながら「ああ、なんだ、びっくりしたジェイ」と呟いた。
ジェイとは、ショップの店員の口癖であり、心を開いた相手にだけ使う言葉である。この言葉が飛び出したと言うことは、即ち落ちた事を意味する。
店員は、ポケットにチョコボールを全てしまいこんでから、席を立った。「あるかもしれないので、ちょっと待っててくだジェイ」
僕はウキウキしながら待っていた。いよいよ僕も写メールの仲間入りだ。これからはバッシバッシパンツを隠し撮るぞう!
意気込んでまっていると、店員が戻ってきた。
「お客さんごめんなさい。やっぱりないコモ」
コモ?
僕はもしやと思い、表に出て看板を確かめた。そう、ここはドコモショップだったのだ!ズコー!(自殺)

3月15日 弱気な虚弱体質。

「弱気な虚弱体質」という最低の異名を持つこの僕は、またしても風邪に苦しめられているのだった。しかも今回は、風邪の諸症状に加え、口内炎という素敵で凶悪な敵が弱気な僕を一層弱気にさせてくれている。しかも出来た場所が悪い。口を開けるだけで歯に擦れるような場所に出来くさったので、喋ったり、物を食べたりするだけで痛いのだ。
こうなると僕は弱り行く一方である。口も開かぬ無口な虚弱体質。食事もとらずに、ただ死を待つだけ。
「……馬鹿ヤロウ!」
僕はそんな弱気な僕に喝を入れるため、立ち上がる。
だが弱気で病弱なので、またすぐに横になった。そして、「馬鹿なんて言ってごめん」と弱気に謝る。「本当、申し訳ないと思ってる。ごめん」と念を押しながら布団に潜り込む。やがて布団から少しだけ顔を出し、「でもちょっとだけ馬鹿、なのかもしれないよね。いや、あるいは、だよ、あるいは」と言い、相手の様子を伺ってから、「ああ嘘、ごめん。今の取り消し、馬鹿なんかじゃない」と言いながらまた布団にもぐるのだった。涙をこらえながら。いや、本当は泣いているのかもしれない。顔で笑って心で泣いて。弱気な彼の運命やいかに!(2日後死亡)

3月17日 ベンツと僕。

一車線の道。車道の真ん中よりやや左寄りに、つまりほぼ真ん中にデーンと駐車してるベンツがいた。そのベンツの左側にはまだ人が数人並んで歩けるほどの余裕がある。もう少し、左に寄せて停めれば誰も困らないと言うのに、なんとも自己中心的なベンツである。
近年、ベンツ率は増加の傾向にある。それに比例するように、このような馬鹿なベンツ(バカベン)も増えているのだ。
そんな非常識な駐車を黙って見過ごせる、「男の中の男」こと僕ではない。ちょっとスモーク濃い目だからって調子に乗らせるわけにはいかない。皆が気持ち良く過ごせる為に、最低限のルールは守るべきである。僕は正義の怒りを胸に、男らしく堂々と歩いてベンツの正面を通り過ぎ、中に座っているスーツ姿の男を男らしく横目でチラ見した。そして男らしく小声で「事故れ事故れ……」とブツブツ呟く事に成功したのである。ブラボー!コイツは我ながら男らしい!僕は自分が誇らしかった。誇らしすぎてテンションが猛烈にあがり、喜びの頂点に達したので男らしく奇声を上げながらスキップをして、その勢いのままベンツのシンボルをへし折った。すると殺されそうになったので、代わりに将棋の駒である「桂馬」を付けておく。うん、ジャガーみたいでイカスじゃん!
しかしスーツにシャレは通じず、東京湾に沈められかけたので、今度はそこに風車を刺してみた。「エヘへ、風力発電、なんちって」と言いながら、後ろを振り返ったが、それからの記憶が無い。どうやら僕は、死んでしまった様である。 実に残念だ。

3月20日 愚痴三昧。

おみくじ引かせりゃ万年凶。虚弱体質いつも風邪。やっと治ると思ったら、今度は背痛に悩まされ。厄年フィーバー今日も胃痛。うんこ好き好き坊っちゃんこと僕えのきだけ、ただ今降臨!(高いところからフルチンで登場)
(着地で足をくじきつつ)オス!不幸の館へようこそ! (スーツに袖を通しながら)

今日は通勤途中、普通にバイクに乗っていて、ちょっと背筋を伸ばした瞬間に背中に激痛が走った。その後は歩くのも辛い状態だったので、すぐさま接骨院へ。
午前中から死せる老人と化した僕は、それでもなんとか仕事を終えて帰宅。そしてバイクを停めようと思った瞬間にまたトラブル。なんとバイクを置かせてもらっている場所に、原付のカウル(外装)がいくつも放置されているではないか。もう明らかに窃盗の名残。それをどかして置いたものの、なんだか僕が盗んできて放置したみたいな状態になっている。ただでさえ、でかいバイクを置いていて、他の住民に引け目を感じている小心者な僕には、とてもツラい試練だ。すぐに管理している不動産屋に電話をしたが、留守電だった。
もう、背中は痛いやらで何がなんだか解らなくなっていたので、間違えてその留守電に、「母に捧げるバラード」こと「げるバラ」を吹き込んでしまった。これは武田鉄也率いる海援隊の名曲で、僕の十八番なのだ。しかもなぜか最近売れている、どっかのグループの「贈る言葉」ばりに、勝手にノリノリの曲にアレンジして歌ってみた。上手に歌えたのでとても満足だ。僕はとても満足しているのだ。

3月23日 神さま。

「どっち殴ればいいのかな」
ある日、神様は、僕にそうお尋ねになられた。
「殴るって、誰をですか?」
僕は神様に、そう聞いた。
「いやホラ、サダムかブッシュか、だよ」
神様は、ひどく悩んでいるようだった。それにしても難しい質問を僕になさるものだ。
「じゃあ、全然関係ない人を殴ってみたらどうですか」
僕は考えるのが面倒だったので、適当に答えた。
「そうか、その手があったか。じゃあ、いくぞ」
そうおっしゃると、神様はおもむろに立ち上がり、僕を殴りつけた。「このバカー!いい大人が、そんなケンカなんてしないでよ!」
神様は右手を振りながら「あたしの為に」と小さく呟かれたのを、僕は聞き逃さなかった。
「痛たたた……。ところで神様、今、あたしの為に、って聞こえたんですが」
「いや、そんなこと言ってないよ」
神様が言ってないと言ったら言ってないのだ。神様は絶対だ。逆らうことはできない。「……そうですか」
「あ、これ食べる?」
そうおっしゃると、神様はみたらし団子を差し出してくれた。
「すいません、じゃあ、頂きます」
僕はそれを受け取り、1口かじった。その様子を見ていた神様が、ニヤリと笑ったような気がした。
まもなく、意識が朦朧とし始めた。どうやら毒団子だったようだ。
戦争が始まってから、神様は心を痛めていらっしゃる。まるで気でも狂ったかのような、不可解な行動が増えたように思う。遠のいていく意識の中で、僕はただ、痛いのは、苦しいのは嫌だ、と、そう考えていた。

3月24日 (狂気の)写メーラー。

写メール万歳!
携帯を機種変更して、ついに僕もカメラ付きの仲間入り。喜び勇んで、まず最初に自分の股間をスナップショット。ワオ!イッツア、スモールワールド!
次に僕は、路上のウンコを隠し撮り!イエス!携帯に国境はナッシング!
それらを知人の女性にイッツ送信!返事はアイノウ「縁切ります」

教授「……とまあ、以上の文章から、彼が要注意人物であると言うことが解るね」
助手「でも随分と投げやりな臭いがしますね」
教授「そうだね、投げやりだ」
助手「ちょっと可哀想ですね」
教授「ああ、ちょっと可哀想だ」
助手「ところで、僕、用事があるんで、先に帰ります」
教授「ああ、そうか。うん、わかった」
助手「では、失礼します」
教授「うん、気をつけて」
教授「……」
教授「ふう……

3月26日 ラブアンドピース。

バイク便の人と軽トラの人が揉めていた。
仕事を終えて家に帰ろうと思い、バイクのエンジンをかけた時だった。僕の目の前で、軽トラとバイク便が停まり、なにやら揉めだしたのだ。他の車の音がうるさくて、声は聞こえなかったが、バイク便の男が怒っているのは分かった。軽トラのおじさんも何かを言い返している。争いごとが嫌いで、正義感に溢れた男臭い僕に、目の前で争う2人を無視して、立ち去ることなどどうして出来ようか。
「ケンカをやめねえか!」
僕はヘルメットを被って、さらにマスクをしたままモゴモゴと言ってから続けた。「みんなが笑ってるぜえ」
そう言って辺りを見渡すが、誰も笑っていない上に、ギャラリーは僕だけだった。
「お日様も笑ってらあ」
そう言って上を見るが、見事なまでの夜空だった。そのまま視線を2人に戻すと、まだ揉めている。どうやら僕のザエソン(サザエソング)は届かなかったようである。だが、諦めるわけにはいかない。
「なあ、磯野、俺は残念でならねえ」
僕は2人の側まで行って、バイク便の男の肩に手を置いて言った。
「お前の姉さんの髪型はおかしいし、どちらかといえば恥ずかしい。だけどな磯野、俺はお前を嫌いになったりはしねえんだ。なあ、お前を恥ずかしいだなんて思ったことは一度もねえんだ!なぜだか解るか?お前はお前で、お前の姉さんはお前の姉さんだからさ。なあ、争いはいけねえ、ラブアンドピースを心に刻んで、お前のその目の前のおじさんを愛してやれ。なあ、おじさんをいたわってやれ。いいか、全ての人が」
そこまで言い終わった頃には、僕は家に着いていた。今日も一日お疲れさまでしたあ!

3月29日 サイコスリラー訪問販売。

寝起きでうだうだしていた時のこと。突然チャイムが鳴り、誰かの来訪を告げた。誰だろうと思って出てみると、何やらサラリーマン風の見た目はマトモな男が、電話回線がどうのと言っている。
結論から言えば、家への不法侵入者を電話回線を通して察知するというハイテクマシーンの訪問販売だったのだが、その事をなかなか明かさない巧みな話術の前に、僕は驚愕したのだった。
つまり(実際は訪問販売のくせに)訪問販売ではなく、回線を見に来たという事を、さも「大家さんを通した」的なニュアンスで「防犯の点検をしに来た」とだけ、住人である僕に言うのだ。
玄関先で「まだ聞いてませんか?」と言われたので、正直な僕は正直に「念仏は聞いてません」と小声で言った。「はい?」と聞き返されたので、「念仏はまだ聞きたくないんです」と先ほどよりも大きな声で正直に言った。そらからわざとらしく空を見て、「まだ……まだ、成仏しとうないのや……」と僕は言った。最近ホラー小説にはまっているので、霊の気持ちは良く分かっているつもりだ。次に、「呪わへん、あんさんの事は、呪わへんから……」と言いながらドアを閉めようとした。
が、男は「中に上がって、電話回線を点検してもいいですか?」と言うのでうっかり家の中にあげてしまったのである。
この時点で、僕はまだ訪問販売であることに気付いていなかった。
電話器の前に案内すると、ピッキングがどうのこうの、と言うので、僕は「ああ、互いの性器をなで合うみたいな、いわゆるBってヤツですね」と、頷きながら相槌を打ったが、それはペッティングであり、ピッキングとは無関係だった。
やがて、係りの者を呼んで説明させるので、呼んでもいいですか、と携帯を見ながら言う。そこまできて僕はやっと気付いたのだ。これは訪問販売であると。
僕はなんという事をしてしまったのか、家に上げてしまったのである。この男の巧みな心理作戦に引っかかった愚かなる僕は、怒りよりもむしろ、自分への悔恨の念と、奴の話術にただ感心していた。スゲエ、これが最近の訪問販売員ってヤツか。
気付くと僕は、その男の鼻をへし折っていた。仲間を呼ばれたら僕の負けだ。僕は先手を打って、さらに男を殴り続けた。やがて気絶したソイツヲオシイレニトジコメタ。ソレカラワガヤニ火ヲハナチ、ボクハニゲタノダ。ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒイヒh燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えrおめおもろおもしろおもしろおもしろくねえな

3月31日 郵便物が届かない。

郵便物が届かないことに気付いた。正確には、届く場合もある。だが、大半は届かず、宛先不明だかなんだかで、相手に戻されてしまう。引っ越してきてから約8ヶ月。これが全く届かないのであれば、もっと早くに気付いていただろう。だが、たまには届く事により、気付くのが遅くなってしまったのだ。
これは困った事になった。なぜ僕の郵便物は、そんな粗末な扱われ方をするのだろうか。僕の家などまるで無かったかのように、宛先不明で戻される郵便物達。思えば年賀状も一枚も来なかった。これは陰謀である。大事な手紙も届かなければ、不幸の手紙も届かない。かといって、死への通達書も来なければ、召集令状も届かないし、冥界へのお誘いや、恐怖新聞も届かない。僕の存在などここに無いのだ。そう、ここに無い。
待てよ?無いフリをしているということは……。
僕は気付いた。これは郵便局の陰湿なイジメである。僕の存在などまるで無視するその行為は、明らかにイジメそのもの。
許せない。僕のカワイイ僕をイジメる連中を、許すことはできない。僕は僕の保護者、すなわちPTAである。僕を守れるのは、僕だけなのだ。僕のカワイイ僕を守るため、僕は郵便局に電話を入れた。
担当が出たので、早速怒鳴りつける。
「僕のカワイイ僕をイジメる事は、僕が許しませんわよ!」
担当者はなんのことか分からないと言う。そうだろう、僕も自分が何を言っているのか分からないのだ。
僕は僕がイジメに合っているという事を、詳しく、かつ大げさに、霊的な要素を要所に散りばめたフィクションを交えつつ説明した。説明しているうちに、話の結末を考えるのが面倒になったので、途中から世界情勢について語り、やがて、話題は身内への不満へと流れた。
「でね、その時、旦那ったらなんて言ったと思う?俺には仕事が大事なんだ、よ!頭きちゃうわよねえ、こっちの気も知らないでさあ……」
「はあ」と、頷く担当者。
僕はその愚痴が長かった事をすぐに反省して、「ごめんね、じゃあまたね、旦那さんにもよろしくね」と言って電話を切った。充実した一日だった。

戻る