| 12月5日 なんだこれ。
思えば昨年の今頃には僕の人生を大きく左右する出来事があり、そして今年もまた、似た感じで僕は大きく左右に揺れていた。
左を取るか、右を取るか。左か、右か、それとも上か、いや下か。ちょっと待て、裏側は見たのか。ああ、裏側には何も無かった、なんか変な筋ばったものがあっただけだ、あれは関係ないだろう。筋ばったもの……?もしや!おい、ちょっと見せてみろ。いいよ、見なくて。いや、気になるんだ、筋ばったもの、見せてみろ。いやだって、恥ずかしいから。ホレホレ、見せてみろ、お前の筋ばったもの。やめてやめて、人が見てるから!
(ボロン)
……こっ、これは、病気!?いやいや、違うって、みんなこんなんなってるから。そうなの?こういう風になってるの?そうそう、だから心配しないで、個人差はあるけどね。そう、じゃあちょっと裏側も良く見せてみろ。いいよ、見なくて。いや、気になるんだ。いやだって、恥ずかしいから。ホレホレ、いいから見せてみろ、お前の筋ばったもの。やめてやめて、人が見てるから!
(ボロン)
……こっ、これは、病気!?
みたいな感じで僕は揺れている。僕はただ幸せになりたいだけだ。そうか、じゃあちょっと見せてみろ。いいよ、見なくて。いや、気になるんだ、筋ばったもの、見せてみろー、見せてみろー、見せてみろー……なんだこれー、なんだこれー、なんだこれー、なんだこれー!
12月15日 中年期クライシス。
僕は一体何を目的に生きているのだろうか。ここに来てついに解らなくなってしまった。
立ち止まっていると胸の中がムズムズと痒くなり、掻きむしりたくなる様な衝動に襲われ、かと言って考える間も無く走っていたら疲れてしまう。僕は一体どうしたら良いんだ!と、まるで気むずかしい小説家の様に項垂れ、頭を掻きむしり、掻きむしったその手を鼻に持って行ってニオイを嗅いだら、オヤジのニオイがした。
全員「オヤジのニオイがした!」
なんのまだまだ、若いモンには負けんワイ!と、僕は立ち上がりそしてまた明日に向かって歩き出した。確かに僕には何もない。その上僕は沢山の人を傷つける。でも僕は決して自分を嫌いにはならないだろう。自分を嫌いになるなんて、そんな事をしたら自分が可哀想だからだ。いつでも自分を好きでいられるよう、僕は努力を怠らない。だからまずは頭を洗おう。そして軽石で足を洗おう。古い角質を根こそぎ落として、いつでもフレッシュな自分でいられるよう軽石で足を洗おう。そう、いつでもフレッシュでいたい。そう思って洗面台に立ち、鏡の中の自分を見てみたら疲れ顔のオヤジがいた。
全員「オヤジがいた!」
オヤジ「誰がオヤジじゃい!」
オヤジはそう言うと僕に殴りかかってきたので、僕は軽く左にステップを踏んでかわし、オヤジのがら空きボディーにフックを突き刺した。くの字に身体を折り、苦しむオヤジ。そしてそのオヤジとは他でもない、僕自身なのだ。
今、僕は苦しんでいる。その苦しみを乗り越えてこそ成長があるんだよ。と、頭を抱えて悩む僕の肩を叩くと、僕は頭を抱えていた手を僕の鼻に持ってきた。その手はやはり「オヤジのニオイがした!」
12月23日 達観。
やる気がなくなった。それは全てに対しなのかもしれない。ある意味僕は、一部において達観してしまった様な気がしている。痛ましい勘違いかもしれない、いや、勘違いであって欲しい。しかし僕はそう思ってしまうほどにやる気がなくなっているのだ。
今までのやる気のない感じとは明らかに違う。不思議と心が落ち着いていて、それは今までに感じたことのない種類の穏やかさなのだ。心は穏やかに落ち着きつつ、そしてただやる気が無い。
やる気があるだけ無駄なのだ。無駄なものがない様に思わせる事自体が既に無駄で、しかしその無駄な事をする事に疑問を感じることも既に無駄であり、結局無駄な物は何もないという、こう、なんだかよく分からないけれど多分僕は落ちているんだろう的な事に気づいてしまった。解った訳でもなければ、解っていない訳でもない。ただ何となく僕は気づいた。僕の中で僕は気づいた。これを達観と言わずして何を達観というのだろう、ねえ?タッカン。
タッカン「俺に言われてもわかんねえべ!」
そう言いながらタッカンは鼻をすすった。タッカンの青っぱなは既に口の中に流れ込んでおり、すするだけ無駄な事は誰が見ても明らかだった。
タッカン「大体よ、オメエさっきから訳のわかんねえ事ばかり言ってよ。何様のつもりなのよ!エ?」
タッカンは大分ご機嫌斜めの様で、僕はタッカンに小突かれ、尻餅を付いた。それを見てタッカンはゲラゲラ笑った。タッカンが呼吸をする度に鼻提灯がふくらみ、そしてしぼんだ。何度かそれを繰り返すうちに鼻提灯がパチンと弾け、タッカンの顔をおおった。タッカンはそれを手でぬぐい、ズボンで拭いた。タッカンのズボンはいつもテカテカだ。
タッカンはその手で僕の手を引き、僕を立ち上がらせた。それから尻を払ってくれた。根は良いヤツなのだ。
タッカン「なあ、俺の尻も払ってくれよ」
そう言うとタッカンは僕に尻を突き出した。僕がタッカンのズボンを払い始めると、タッカンは「フンッ」という声と共に酷い屁を放ち、そしてまたゲラゲラ笑い始めた。
その内屁の臭いが辺りに充満し始め、その臭さに僕もおかしくなり、一緒にゲラゲラ笑った。
「はははははは!」
僕とタッカンの笑い声が響く。
タッカン「笑うな!」
突然タッカンが切れ、辺りの空気が凍り付いた。
続く
12月31日 良いお年を。
今年も残すところあと数時間。今年起きた出来事を振り返ってみると、やはり「いい年だったなぁ」と言えない自分がここにいた。
僕は一体いつになったら今年は良い年だった!と胸を張って言える様になるのだろう。こんな不幸続きなのだから、せめて百万円くらいは当たるだろうと思って買った宝くじは見事に僕の期待を裏切りくさった。最悪十万は当たるつもりだったのだ。しかし、外れた……!九千円買って、九百円とはッッッ……!!!
僕は十万当たってなかったら坊主という約束を僕としていたので、僕の為にも僕は坊主にならなくてはならない。しかし生まれてこの方一度たりとも坊主たり得たことのない僕にとって、坊主とは未知の世界。だから不安がないと言えば嘘になる。それに本当に坊主にするのかと聞かれれば「すいません」と答えるだろう。しかし、坊主にする、即ち新しい世界へと飛び込むという事はつまり、新年を迎えるにあたって実にふさわしい行為に思えてならないのだ。いや、最早必要不可欠な儀式であると言える。
そう、いい加減僕も、厄年を抜け出さねばならない所まで来ている。坊主にして、全く新しい世界へと飛び込まねばならない。
しかし、困った事が一つある。それは僕自身、この世界を結構気に入っているという事だ。だから別に無理して坊主にしてまで新しい世界へ行く必要などないのだ。
しかし、僕との約束は絶対だ。
僕は知っている。僕を裏切る事がどれほど恐ろしいかを。僕は僕の怖さを誰よりも知っている。だから僕は僕を裏切ることだけは絶対に避けなければならない。僕は陰険だ。陰険で性病で胃弱でヘテロセクシャルで厄年だ。僕を、何人たりとも怒らせてはいけない。胃弱を何人たりとも怒らせてはいけない。なぜならば胃弱を怒らせると、ストレスで胃に穴が開くからだ。胃に、穴が、開いてしまうのだ!
たとえ自分自身とて僕を怒らせることは避けねばならない。恐ろしい目に遭いたくなければ僕は僕との約束を実行せねばならない。
なぜならば僕は怒りで胃に穴を開け、ストレスフルで十円禿げる。十円禿げた僕は、最早坊主と変わらない。坊主の方がむしろ潔い気すらする。だから僕は僕を怒らせることを避けて、宝くじを買わなかった事にしようと思う。いいですね、僕は、宝くじを買ってない(BOUZU)
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