花の街



夏休みの国語の宿題で作りました♪
原稿用紙10枚分に色々詰め込み過ぎたので
後悔がいっぱいありますが、どうぞお楽しみください!



いつからか、少年は迷っていた。
「ここはどこだろう?」
答えは返ってこない。少年もそんなことはわかっていた。
こんなに広い森だとは考えてもみなかったから食料は最低限のみ。
最後にまともな食事をしたのはもう何日も前・・・少年は心身共に限界だった。
「腹、減った・・・」
近くの木に寄りかかり、何かないかとポケットをあさる。
あったのはガムの包み紙一つ。他には何も入ってはいなかった。
軽く溜息をつき、少年はそのままぺたんと座りこんだ。
そして、なぜこのような事になってしまったのか、と考え始めた。

時は数週間前。少年は友達にこんな話を聞いた。
「裏山に大きな森があるだろ?あそこには大きな街があるんだってさ!沢山の花があって
空気もキレイで最高らしいぜ」
少年は興味深々に聞いた。もともと冒険が好きだった少年にとってその手の話はどんな
勉強の話よりも楽しい物だった。
「俺、行ってみようかな」
ポツリと呟き、頭の中で計画をたてた。しかし友達は笑いながら言った。
「やめとけって。ウワサだぞ?本当なわけないじゃんか」
「そうとは限らないだろ?物は試し、だよ」
そう言った少年の顔は期待で輝いていた。友達は呆れてもう何も言わなかった。

そして少年は軽い気持ちでこの森へと探険に赴いたのだが・・・。
「俺もう動けない・・・このままここで一人さびしく死んでくのかな」
言って自分のそんな姿を思い浮かべる。誰も来ない森の奥にある白骨と化した自分。
少年はその考えを打ち消すように大きく頭を振った。
「絶対嫌だ!・・・仕方ない、歩くか」
諦めたように言いながら少年は立ちあがる。

その時だった。
ガササッと音がし、木の葉がゆれた。
「誰だ!?」
少年はさっきまでの空腹感も忘れ、音の所へと走る。
「あっ、あのっ、えっと・・・・・・」
そこにはおろおろとした様子で花の入ったかごを抱えた一人の少女がいた。
年は13,4、というところ。少年と同じ位に見えた。少年のこげ茶の髪とは違い、
少女は美しい桃色の髪をポニーテールにしている。そして紅の目で少年をじっと見ていた。
「貴方、誰ですか・・・?街の人じゃないし」
「俺は、えと、そのぉ」
少年は慌てて目線をそらす。その様子を少女は不思議そうに見た。
「も、もしかして記憶喪失になったとか?」
「あ、ああ!そう!記憶喪失なんだ!」
元気良くうなずき、話をごまかす。そして少年は微笑しつつ少女へ問い返す。
「ねぇ、さっき街って言ったよね。近くに街があるの?」
「えぇ。知らない?花の街って言うのよ」
少女は自慢げに話し出した。
「一年中沢山の花が咲いていて、とってもキレイなのよ!私はその街に住んでいるの」
「へ、へぇ。そっかぁ。ねぇ、俺もその花の街に連れてってくれない?」
「え?」
少女はきょとんとして言葉を切る。目がどうして?と問う。
「俺、その街が見たくて来たんだ」
「そうなの。ご苦労サマ、だね」
にこっ、と笑い、少女は歩き出した。少年は急いでそのあとをついていった。
「ねぇ、君の名前は何て言うんだ?」
少年は歩きながら話しかける。少女は振りかえって答えた。
「アルメリア、よ。アリアって呼んでね。あ、貴方の名前、どうする?・・・そうだ!」
アルメリアは自分の持っていたかごを少年へ差し出す。
「好きなの、選んで」
何だろう、と思いつつ少年は一番に目に付いた赤い花を指差した。アルメリアはその花をかごから抜き取り、少年に手渡す。
「この花ね、クレマチスって言うんだよ。よし、貴方は今日からクレマチス・・・クレス!ね、良いでしょう?」
楽しげに話すアルメリアに少年はこくん、とうなずく。アルメリアは満足げに微笑した。
「じゃあクレス、よろしくね!・・・あ、街だよ。到ちゃーく!」
「ここが、花の街・・・・・・本当に綺麗だ」
少年は思わず感嘆の声をあげた。そこにはバラやらスズランやらパンジーやら、沢山の花々が咲いていた。
そして沢山の人もいた。
「クレス!長老様に挨拶しに行きましょ」
辺りをきょろきょろと見回す少年をアルメリアは一軒の家へと引っ張って行った。

「おや、アリア。いらっしゃい」
出迎えてくれたのは初老の女性だった。
「こんにちは、ミモザ様!あのね、お客なの。記憶がなくて・・・今はクレスって呼んでる」
アルメリアは少年を見ながら説明する。ミモザは物珍しそうに少年を見つめた。少年は
慌ててぺこっと礼をした。
「そうかい。でも掟は守るんだよ、アリア」
「はい!それじゃ、クレス!行くよ」
「あ、うん。それじゃ、失礼します」
少年は再度ぺこっと頭を下げるとアルメリアと共にミモザの家をあとにした。

そして数分後。二人は一つの花畑にいた。
「ねぇアリア」
「なに?」
「さっき言ってた掟って、何?」
「ここに来た客は、宿泊しちゃいけないの。それより、見て!」
アルメリアはそう言って近くに咲く1輪の桃色の花を摘んだ。
「アネモネって言うの、これ。私が好きな花なの。花言葉は、『はかない恋』、『真実』。
アフロディテって言う女神が、死んでしまった大好きな人のために流した涙がこの花に
変わったんだって。悲しいけど、好きなんだ」
そういうアルメリアの顔はどこか寂しげだった。少年は頷き、別の赤い花を指差した。
「あの花は?」
「あれはネリネ。ギリシャ神話の水の神の名前なの。花言葉は『また会う日を楽しみに』だよ」
「じゃあ、これは?花言葉、何?」
少年はもらったクレマチスの花を差す。
「えっと、『心の美』。アルメリアはね、『心遣い』、『思いやり』。良いよね!」
「あぁ。・・・あ、夕陽だ。もうこんな時間か」
辺りは美しい赤色に染まり始めていた。太陽は西へ傾き、月も出始めている。
「そ・・・っか。もう、お別れかぁ。早いね」
アルメリアは苦笑すると、少年の手を取り、街の入り口へと歩いて行った。

そして、入り口ではミモザが待っていた。
「ミモザ様・・・。見送りに来たんですね」
アルメリアはそう言い、にこ、と微笑した。
「それじゃ、クレス。また今度遊ぼう。・・・あ、そうだ!これっ」
思い出したようにアルメリアはかごをあさる。そして、花を3輪差し出した。
それは、アネモネ、ネリネ、アルメリア。花畑で教えてもらった花だった。
「また会う日を楽しみにしてる!絶対、忘れないでね!」
「ありがとう、アリア。絶対、忘れないよ」
「うん、うん・・・。じゃあね、クレス」
アルメリアの目元にはうっすらと涙が浮かぶ。
少年は大きく手を振り、そして街を出ようと歩き出した。

その刹那、ミモザがスッと手を伸ばし、何か呟き始めた。
アルメリアはぎゅっと目をつぶり、拳をきつくにぎっていた。
「少年の街での記憶よ、全て無へ帰れ・・・」
ミモザが言い終わったと同時に歩き出した少年は光に包まれる。
そしてそのまま少年の意識は遠のいていった。
「ごめんね、ごめんね・・・」
あとには泣きじゃくるアルメリアとミモザの姿があり、少年は何処かへと消えていた。
丁度、夕陽が沈んで月が顔を出すのと同じ頃だった。

「・・・ン。・・・イン!」
少年は最初、自分が呼ばれているとは気付かずにぼうっと宙をみていた。
「カイン!林檎、食べないの!?」
少年はカインって誰だろうと思いつつ声の方を見る。そこにいたのは呆れ顔の母。
数日ぶりに見た母の顔はとても懐かしく思えた。
そこでふと少年は気付いた。
「俺は数日も何処へ行ってたんだろう」
「あら、覚えてないの?あんた森の奥で倒れてたのよ。この花を大切そうに持ってね」
そう言って母が指したのは花びんに入れられた3輪の花。少年はその花に見覚えがあった。
そして母へ再度言葉を向ける。
「母さん。俺の名前って何だっけ」
「え?名前って、カインでしょ?頭でも打った?大丈夫?」
心配そうに言う母を見ながら少年は思った。
(違う、カインじゃない。別の・・・名前・・・)
「大丈夫そうね。・・・カイン、この花、珍しいわね。この辺では見ないわ。何の花だっけ?」
「それは・・・ごめん、覚えてない」
少年はすまなそうに頭を下げる。母はポン、と手を打って言った。
「思い出したわ。アルメリアよね、たしか」
「アルメリア・・・。アリ、ア・・・」
少年の頭の中で全ての記憶が繋がった。迷った事、街での短い時間での思い出、アルメリアと
話した事、そして・・・約束。
「母さん!俺行ってくる!」
飛び起き、急いで服を着替え、走り出す。
母は驚きながら少年に聞いた。
「カイン!どこ行くの!?」
少年は振り向き、笑顔で答えた。
「約束を果たしに、花の街へ!」