魔女物語第2話
そんなこんなで昼休みの休憩時間。一同は適当な日陰を見つけ、涼んでいた。
「ったくもぉっ!!」
「まーまー。リアっち落ち着こうよぉ?」
ぷんすかっと頬を膨らませて怒っているリアの隣でティーファがなだめる。
「だってだってだってっ」
「・・・リアさん?本当、いい加減にしてくださいよ?」
スゥ・・・と背筋に寒気が走るような冷たい目で明都はリアを見た。
殺気を感じたリアは慌てて手を眼前で降り、否定した。
「や、やーだ明都ってばっ!怒ってるのっ??」
「あーぁ、明都怒らせてやんの、あの馬鹿・・・」
隣でボソッとクラウスが呟いてみる。
「・・・なーにが言いたいのかなァ?ク・ラ・ウ・ス?」
瞬間的にリアの目つきが変わる。そして放電し始める。
そしてバチバチバチバチッという音と共に辺りに電流が溜まり始めた。
クラウスへ対する怒りに八つ当たりの怒りまで入っているという最悪の状況である。
「・・・あぁ、俺が悪かったです、ハイ。ごめんなさい」
身の危険を感じたクラウスは正直にぺこりと頭を下げた。
一応クラウスはこの女ばかりのパーティで唯一の(?)男だから
少しの事は多めに見られる(事も多い)が、「口が過ぎる」と
八つ当たりされる可能性が一番高いわけでもある。
「確かに今のはクラウスが悪いとわたくしも思いますわ」
二人のやりとりを耳にしたエリスがにこぉ・・・と微笑みながら言う。
手にはエリスお気に入りの青緑の綺麗な、そして高級そうな茶碗。もちろん、中には
温かい煎茶が注がれている。この炎天下の中でそのような飲み物を飲むのは変だが、
『エリスと明都には逆らってはいけない』という暗黙のルールのもと、
誰一人文句の一つも言わない・・・いや、言えないのだった。
どんなに頭に来ても、我慢しなければならないというのも辛い事だが、我慢するほどの
大変な理由があるのだった。
煎茶は「高級品」の類に入る物。そう簡単に手に入るわけでもないのだ。
そんな高級品を易々と手に入れ、そして堪能できるエリスはパーティ1の金持ちである。
彼女の本名はエリス・フィリヌアス。フィリヌアスと言うと、世界に名高いフェルリアス王国の
王家の一族を示す。そして、エリスはその第一王女・・・つまり次代の王位継承者に値する人物。
というわけでエリスは祖国からの援助金を用いてパーティの金欠を補っているのである。
だからエリスの機嫌を損ねて援助金が出なくなるととても困るのだ。
そして、明都。彼女は“倭国”と呼ばれる小さな国の中で女王を務めていた。
10歳というとても若い年齢で、だ。やはり反論を唱える者もいたが、何よりも明都の
人を惹き付ける魅力を見込んでいた前女王、初華(ういか)の推薦という事があり、
数年程王として国の政治を切り盛りしていた。
結局は家臣の薦めもあって今ここで他の者たちと共に過ごしているのであるけれども、
今でも彼女の政治は良い手本として子供達へ受け継がれているという。
そんな彼女は小柄な体格を活かし、素早い動きを得意としている。その動きに様々なパターンの
攻撃法を組み合わせて自己流の【忍術】を作り、特攻隊長として重宝されている。
仲間の中には明都以外にそのような役目を担える人がいないため、明都の機嫌が悪く、
「私闘う気分じゃないです」なんて事を言われたらとても困るという事で
皆は一生懸命明都のご機嫌取りもしている。・・・何だか情けない。
「でっしょーーー!!エリスでもそう思うでしょぉ!?」
リアはとても嬉しそうな表情でエリスの手を取り、飛び跳ねた。
完璧に自分が勝ったと確信したから、である。
「・・・あら、喜んでもらえるのは嬉しいけれども、エリス“でも”と
言うのは失礼ですわ」
「あっ、ごめんごめん」
パッと手を離し、少し悪びれた風にリアは言った。ただ、その表情は嬉しそうである。
その様子にエリスはコホン、とせき払いし、「まぁ良いとしますわ」と言い、話を始めた。
「それで、なのですけど。さっきに占った結果によると、この近くの欠片はもうありませんわ」
「「「「は!?」」」」
エリスを除く皆は大声を上げた。
それも仕方がないこと。この炎天下、何日もかけて捜していたのに“もうない”では
ヒドイのではないか、と皆は言いたかったのだ。
「これもウィンディのお告げですわ♪次の場所もわかりましたし、行きましょう?」
愉しげにエリスはそう告げるとそのまま水を飲み始める。
沈黙が辺りを包みこんだ・・・と思われたがそれも一瞬の事。
「「「「――――――――エリスぅ!!!!!」」」」
皆は四方からいっせいにエリスに掴みかかろうとした・・・が。
「あら、皆さん・・・どうかしましたの?殺気がしますわよ?」
くすくすと笑いつつエリスはとんっとジャンプして宙に舞い、全ての攻撃を避ける。
そして攻撃を見切られ、避けられた人達は・・・勢いをつけすぎたせいか、
悲しい事にそのまま向かい側に位置した人と正面衝突という結果になり・・・
その日の探索はメンバー大半が重症のために打ちきりになったと言う・・・。
To be continied♪