ふる〜つ☆ぱ〜てぃ第二話
〜第二話〜
セリアが帰った数分後、フロウは廊下を歩いていた。勿論、ミュールに連絡するために、だ
しかし・・・
「人間界へ行くなんてどうするんだろー・・・?」
歩みを止めてフロウは呟いた。
フロウ達が住む世界はいわゆる“異世界”。人間界との交流は禁じられている。
「私としても興味はあるんだけどね〜・・・方法がないんじゃ行けないと思うなぁ・・・」
ふぅ、と溜息をつき、腕組みするとフロウは再び歩き出した。
「あっ!フロウ様だわっっ!!こんにちは〜〜〜〜〜
」
「えっあっホントだ〜〜!!超可愛い〜〜!!」
「フロウ様ーっっ!!お仕事がんばってくださぁいっ♪」
途中で会う苺族の仲間たちの言葉に一回一回にっこりと微笑み返しながらフロウはミュールの部屋へと向かった。
ミュールの部屋はフロウの部屋の3つほど下の階にある。
フロウは階段をとん、とん、と降りながら再び考えていた。
(唯一行ける手段って言うと“アレ”だけど・・・。実際にあるのかはわからないし・・・)
最後の四段をジャンプで一気に降りると、そのまま廊下を歩いて行く。
(発生させるには他の種族の同意も必要になるな。そしたら杏樹にも会うのかっ!嫌だな・・・)
「きゃぁっ!」
ぼーっとしていたのが悪かったのか、フロウは一人の聖霊に頭をゴンッとぶつけた。
「ご、ごめんなさっ・・・」
慌てて言うと思考をやめ、ぶつかった方を見る。すると、ぶつかった相手は驚いたような声で言った。
「・・・あ、フロウ様・・・?こんな所で何をなさっていらっしゃるのですか?」
その相手――おっとりとした優しげな声音で綺麗な青銀の髪を持つ女性――は、心配そうに
スッと手を差し出す。
フロウは「ありがと」と言って手につかまり、立ち上がった。
「それで・・・このフロアにいるということは何かわたくしに用事でもあるのですか?」
そのままにこぉ、と微笑み、女性は言う。フロウはこくん、とうなずいた。
「うん、ミュールに相談があって、ね」
「相談?えぇ、お聞きしますわ・・・それではわたくしの部屋で話しましょう、フロウ様」
再び微笑むと、女性・・・苺族の副長、ミュールは自分の部屋の方へと歩き出す。
フロウはとてとてとその後ろについていった。
「さぁ、どうぞ」
キィィィ・・・ときしんだ音がしてドアが開く。フロウは中へ入り、適当な椅子に座った。
「少しお待ちくださいね・・・お茶をいれますから。フロウ様は煎茶がお好きでしたよね」
そう言うと、ミュールはぱたぱたと台所の方へ行き、やかんを火にかけ、棚から急須を取り出す。
その様子を見て、フロウは決心したように口を開いた。
「ミュール・・・あのねっ」
「・・・どうしたのですか?随分と焦っていらっしゃるような感じですね?」
心配そうな声音でミュールが聞くと、フロウは苦笑して答えた。
「焦ってるって言うか・・・えっと、セリアはわかるよね?セイルのとこの」
「えぇ。存じてますよ。セリアさんがどうかしたのですか?」
「それがねぇ・・・」
そこで言葉を切り、ふぅぅぅ〜と大きく溜息をつく。その様子にミュールはくす、と笑みをこぼした。
「・・・ミュール?何??」
きょとんとした表情でフロウが聞くと、ミュールは楽しげに答える。
「いぇ、フロウ様も大人になられたと思いまして・・・」
「そう?・・・んでね、そのセリアが、人間と和解のために旅に出るって言い出したの」
その言葉にミュールの顔が一瞬固まる。そして、小さな声で言葉を紡ぎ出す。
「・・・人間と、和解・・・?そんなことできるとでも思ってるのですか?」
「わからない。でも、このままじゃ何も変わらないから・・・」
「フロウ様はお忘れなのですか!?あの愚かな生き物たちはファレイ様を消したのですよ!?」
ミュールは声を荒げる。目元にはうっすらと涙が浮かんでいた。
先代のファレイは、人間に消された者の一人。和解に行った時に捕まり、無残に散ってしまった。
「忘れたわけじゃ、ないよ、私だって・・・。でもねっ憎しみはなにも生まないから!!」
「フロウ様も、行かれるのですか?人間界へ」
「・・・うん。行こうと思ってる。セリアだけじゃ大変だから」
「そう・・・でも、わたくしは反対です!」
そう言うと深呼吸し、ミュールは続けた。目元の涙は頬を伝い、ぽたっと床に落ちる。
「ファレイ様の事もありますし、今フロウ様がいなくなったら皆が困惑して、悲しみます!」
「でもねっ」
反論しようとするフロウの言葉をミュールは遮る。
「でも、はありません!!最悪の場合、ジュリアに乗っ取られる事も考えられるのですっ」
「ジュリアって・・・“族崩し”の?」
「えぇ・・・。そんな事になったらもう取り返しがつきません。」
今、この世界では沢山の種族が『族崩し』と呼ばれる者たちによって消滅させられる事件が
多発していた。
とは言っても、長のチカラが強ければそのような事は起こらないが、
長の留守中などを狙われるので抵抗できない族があった。
実際、苺族も狙われた事はあった。それが“ジュリア”と呼ばれる少女の仕業だったのだが
フロウが追い返して以来、来てはいなかった。
「お願い、ミュール。私が行っている間、苺族の面倒を見ていて」
「フロウ様、そのようなことはいうものではありません。長は貴方なのですから」
優しく、しかしきっぱりとミュールは言いきる。フロウは悲しげな瞳でミュールを見つめた。
「そんな目してもだめ、です・・・とと、お湯が沸いたようですね」
ミュールは急須に茶葉をいれ、お湯を注ぐと急須と茶碗を持って来てフロウの前のテーブルに
ことん、と置いた。
「・・・フロウ様、“賭け”をしませんか?」
とぽぽぽ・・・と茶碗にお茶を注ぎながらミュールは呟いた。
「え?」
思わず聞き返すフロウに、ミュールは優しげな笑みを浮かべ言う。
「ここに、コインがあります・・・それで、決めませんか?」
そう言ってミュールはポケットから一枚の金貨を取り出して見せる。
「うん、いいよ」
フロウは満足げに肯く。ミュールはそれを見るとぽんっ!とコインを宙に放り投げ、
落ちてきた所を手の甲にのせ、反対の手を乗せて伏せた。
「いいですか?表だったら私も許します。裏だったら諦めてくださいね?」
緊迫した表情でフロウは再びこくん、と肯いた。そしてミュールはコインの上の手をスッと退ける。
「・・・やぁった――――――――――――――――!!!!」
そこには、表向きになっている金貨が一枚あった。
「わかりましたわ。運もフロウ様の味方のようですし、ね」
苦笑しながらミュールは言った。フロウはにこぉっと笑うと、
「ミュール、ありがとっっ!!」
と言い、お茶が入った茶碗を持ち上げ、こくこくと一気に飲み干した。
「仕方ありませんね・・・。気をつけて行くんですよ?それと、危ないことはしないでくださいね」
「うんっっ!!」
元気よく肯くと、フロウは茶碗を置き、立ちあがった。
「それじゃ、私は帰るね。ご馳走様でした」
「えぇ、また来て下さいね」
「わかった・・・ミュール、またねっ♪」
そしてドアをあけ、フロウは自室へと戻って行った。
「これも、運命と言うものなのかもしれませんね・・・」
フロウが帰ったあとでミュールは呟いた。そして“賭け”に使ったコインをスッと持ち上げる。
それは二枚のコインが重なっていて、どちらから見ても表になるようにできていた。
「行かせたくはありませんけど・・・ファレイ様の遺言ですもんね・・・」
ミュールはコインを見つめ、そしてぎゅっと抱きしめる。
「フロウ様、どうかご無事でお戻りください・・・」
そっと呟いたその言葉はとても寂しげだった。