ふる〜つ☆ぱ〜てぃ第三話





〜第三話〜
薄暗い部屋の中に、二人の少女がいた。
一人の少女が「姉様」、と口を開く。
「・・・何者かが来る気配がする・・・」
二人は部屋の中心にある透明な玉・・・水晶のような玉に
手をかざし、何かを探すようにじっと見つめている。
その少女の言葉にもう一人の少女が答えた。
「あら〜?何者か・・・って誰なのかしらね、瑠樹〜?」
先ほどの少女とは違う・・・緊迫感にかける、のんびりとした声。
おっとりとしながら姉様と呼ばれた少女は首をかしげた。
「わ、わからないから何者かと言っておるのじゃ!」
瑠樹は慌てて突っ込みを入れる。それと同時に玉に映っていた映像は
フッと消えた。
「あっ!!・・・姉様のせいで切れてしまったではないか〜〜」
驚いたような・・・どこか不満げな顔と声で瑠樹は言った。
そんな様子にくすくすと笑いながら“姉様”は
「ごめんなさぁい」
と悪げも無く呟く。
「と、とにかく!厳重な警戒をした方が良いとわらわは思う!」
「わかったわ、瑠樹・・・、貴方の占いは滅多なことでは外れないからね」
にこ・・・と軽く微笑し、“姉様”は静かに部屋を出て行く。
一人、部屋に取り残された瑠樹は再び玉に手をかざし、呟いた。
「・・・何じゃ、この感じは・・・。懐かしいようで・・・嫌な予感・・・」


「これと、これと・・・うん、OKっ」
フロウはパンパンになったリュックを背負う。
中身は勿論自分が必要だと思った物だけなのだが、とても量が多くなってしまった。
「それじゃ・・・、行って来ます」
出口で一旦振りかえり、そう言って“自分の部屋”へ別れを告げると、
胸の中に穴が空いた様で寂しい気持ちになる。
それを振り払うように何度か首を振り、それからフロウは部屋を出た。
「振りかえってばかりじゃダメだ・・・今は人間界へ行く方法を探さなくちゃ・・・」
何やら真剣に考え込むフロウにふと優しげな声がかかる。
「フロウさま?どうかしたのですか?」
「何か心配な事でもあるのかい?」
「あ、ミュール、セイル・・・」
フロウは声の主達の名を呼び、それから何でも無い、と笑って見せた。
「セリアが大広間で待ってるよ・・・早く行ってあげてくれないか」
そう言ったのは銀髪の青年・・・葡萄族の副長を務めるセイル。
「フロウ様、わたくし達も後で行きますから・・・セリアさんと話でもしていてくださいね」
と、ミュール。
「うん、わかった」
元気良く頷き、フロウは走り出した。

「ふろうまだかなぁー・・・せいるもみゅーるおねーちゃんもいっちゃったし・・・」
大広間ではセリアが一人、大きな荷物の上にちょこんと座っていた。
上方にある大きなシャンデリアを見上げ、足をブラブラと動かす。
「ひーまだなー・・・」
そして大きな溜息を一つ付くと、ふと扉の方を見た。
コツコツと誰かの足音が聞こえる。セリアはぴょんっと荷物から飛び降り、
ぱたぱたと扉へ走って行った。
そして扉が開いた瞬間、その相手に向かってマシンガンの如く話し始めた。
「ふろ〜〜うっ!おそかったねっ、にもついっぱいあったの?せりあはじゅんびすぐおわっちゃってねっっ」
「うん、ゴメンね。待たせてっ」
そんなセリアの言葉を切るようににっこり笑ってフロウは答えた。セリアもにこ〜っと微笑み返す。
「んじゃ、いこぉ。“ぜんはいそげ”っていうでしょ?」
「あー・・・えと、ミュールとセイルが来るらしいから、それ待ってよう?」
諭すように再び微笑むと、セリアはきょとんとしながらも頷いた。
「・・・そなの?わかったー」
そしてまたぱたぱたと荷物のところへと戻り、ジャンプして再び荷物の上に座りこむ。
「ねぇ、セリア・・・思ったんだけど」
そんなセリアにフロウは声をかける。セリアはきょとんとしてフロウを見返した。
「なに〜〜??」
「人間界へ行くって簡単に決めちゃったけど、どうやって行くか、セリアは知ってるの?」
「知らない」
0,2秒で即答された。フロウはやっぱり・・・と思いつつ溜息を付く。
「あのね、セリア・・・」
「遅くなってすみませんっ!」
説明しようと口を開いた時、新たな声と共に扉が開く音がした。
二人が一緒に扉の方を見やると、そこには二人の副長・・・ミュールとセイルがいた。
「ごめんね二人とも。ちょっと色々とあったんだよ」
そう言ってセイルはなでなでとセリアの頭を軽く撫でた。
セリアはきょとんとしながらセイルを見上げ、
「いろいろって、なに?」
言葉と共に可愛らしく首をかしげた。
「それは・・・これです」
セイルに代わってミュールが答える。そして水色の鞄の中から一連の宝珠を取り出し、
フロウに渡す。
その紅色をした宝珠は一つ一つが美しい光沢を放っていた。
フロウはその中でも一際美しい一つの中をじっと見つめた。
刹那。
宝珠の中に一筋の光と、禍禍しい炎の渦と・・・黒い翼を持つ“人”が見えた。
それはフロウの方を見ると、にぃ・・・と口端を上げ、不気味に笑った。
そして“人”の唇はゆっくりと何かの言葉を紡ぎ出す。


「キ」

「ミ」

「モ」

「オ」

「イ」

「デ」



ゆっくり、ゆっくり・・・唇はそのように動いた後、その動きを止める。
そして。
バサッ・・・バサッ・・・という音と共に、その“人”は宙へ舞った。
そのままフロウの方へ不気味な笑みを向け・・・ゆっくりと羽ばたきながらその身を近づけて行く。
フロウはその“人”から何か嫌な波動を感じた。


「きゃあっ」
思わず悲鳴をあげ、フロウは宝珠を手放す。
宝珠はふわりと空中へと浮かび、カララン、と軽い音を立てて地に転がった。
「フロウ様!?」
叫びと共にミュールがフロウへと駆け寄る。
「・・・あ、ご、ごめん・・・何でも、ないよ」
フッと宝珠を見、それからあはは・・・と苦笑しながらフロウは言った。

宝珠の中には先ほどまであった“人”も“光”も“炎の渦”も、全て見えなくなっていた。

「ふろう〜?どーしたの、いったいぃ?」
心配そうに問うセリアに再度苦笑を向け、誤魔化そうと宝玉に見惚れたような仕草をしながらフロウは言う。
「そ、そういえば・・・これ、キレイだね・・・。どうしたの?」
「え?あぁ、えぇと・・・これが人間界へ行く方法ですよ」
少し戸惑ったように言い、それからにこっとミュールは笑った。セリアとフロウはきょとんとした表情になる。
「「どういうこと??」」
と同時に口を開き、その様子に二人の副長は愉しげにくすくすと笑みをこぼした。
「えぇとですね。まずは何処から説明しましょうか・・・。やっぱりはこの宝珠の事からですね。
・・・セイル、お願いしても良い?」
「あぁ。・・・まず、この宝珠は何か、からにしようか」
そう言ってセイルはパチン、と軽く指を鳴らす。すると何処からかホワイトボードが現れ、
セイルの手には黒いペンが握られていた。セイルはペンのキャップをきゅぽんっとはずし、ホワイトボードに
文字と絵を描き・・・その絵を示しながら話はじめた。
「・・・えっとな。ここ、人間界。ここが俺らが住む聖霊界。んっで・・・」
言いながら“人間界”と“聖霊界”の間にキュッキュッと線を一本引く。
「これが・・・虹の橋、だ。」
「「ニジノハシ??」」
「そう、虹の橋・・・それについてはミュールの方が詳しいから後で説明してもらおうな」
にかっと微笑むとセイルはまた説明を続けた。
「んでな、この虹の橋を渡るには、ゲートを通らなきゃいけないんだ」
そして“虹の橋”の両端を黒く塗りつぶす。
「このゲートを通るには、ゲートの封印を解かなきゃいけなくてな・・・」
「封印?そんなの何であるの?」
「そうでもしなきゃ、沢山の聖霊や人間が行き来するだろ?その中には悪い奴もいるからだよ」
「そっか・・・はい、続けて良いよ」
「じゃぁ続けるな。・・・で、その封印を解くために必要なのがこの宝珠なんだ」
「これが・・・?うーん、何だかそう言われると神秘的に思えてくるのが不思議だよ〜・・・」
フロウは不思議そうに宝珠を見つめ・・・軽く持ち上げてみた。
「そう。それが封印玉・・・これを集めれば楽々と人間界に行けちゃうってわけさ」
楽々、という部分には疑問を抱きつつ、フロウは再度頭の中で事柄を整理する。
「んじゃぁ・・・この宝珠を探せば良いんだね!目標は大きい方が楽しいし〜♪」
にっこりと笑って人差し指を軽く立ててそう言うと、
「・・・あー・・・」
返事を返したセイルはどこかばつが悪そうに頭をかいた。
「集めるっつーかな、場所は全部わかってんだ」
「へ?」
呆然としながらフロウはセイルを見た。
「聖霊界の長達が持ってるんだけれどそれを借りて使うしかないんだ・・・」
「・・・は?」
「持ってる族はー・・・と。苺、葡萄、蜜柑、檸檬・・・桜桃、梨、桃ってトコだったと思う」
「そ、それだけなのね?」
ホッとしたようにフロウは言った。これでも嫌になりかけたのにそれ以上もあるのでは集める側は
もう「とっても大変」としか言い様が無い。・・・それどころか行くのを断念したくもなる。
「あぁ、俺が調べたとこではこんなもんだったよ」
「はーい、はーい!しつもん!」
座っている荷物の上から手をいっぱいに伸ばしてセリアが言う。
「そのふーいんぎょくって・・・ほかにつかいみち、ないの?」
「・・・と言うと?」
「んと、こうせんがびびぃーっとでたり、ばりあーになったり・・・」
「無いよ、残念ながら、ね」
苦笑しながらセイルが答えると、セリアはつまらなそうにぷぅっと頬を膨らませた。
「そなの?・・・じゃぁじゃまになるだけなんだねー・・・」
「あ、そうとも言うかもな・・・。でも、セリアは一族を救いたいんだろ?だったら頑張らなきゃ
いけないんじゃないか?」
言葉と共にセイルはぽん、ぽん、とセリアの頭を撫で、微笑む。
「うんっ!」
元気良く頷くセリアを見つつ、フロウは心の中で思った。
(なんで宝玉から光線が出たりバリアになってくれたりするの!?)
そんな事が起きてくれるのなら、宝玉集めなんて簡単に終わってしまうことだろう。
(・・・あ、もしかして)
フロウは閃いた。
(そんな簡単に集まったらつまらないから光線とか出ないようになってるんじゃないの・・・?)
・・・まさか、と思いながら溜息をつき、
「そーんっなわっけなっいかぁ・・・」
自分の考えに自分でツッコミを入れてみる・・・が。
「ふろう?・・・どっかおかしくなったぁ?」
「どうなされたのです?どこか悪いのですか?」
「・・・風邪でも引いたのかい?」
三人から返ってきた言葉に内心で溜息をつきつつ
「・・・何でもなぁい」
と答え、フロウは再び宝珠を見つめた。
宝珠は妖しげに紅色の光を放つだけだった。