送りバント

2048年、アンゴルモアの大王が50年遅れでやってきた。
奴はあっという間に世界を征服し、チョモランマの頂上に城を建て王座にふんぞり返ると、やぶから棒にこう言った。
「おい、俺は送りバントが見たい。見せろ。一回で決められなければ人類を皆殺しにする。」
すぐさま、全世界におふれが出された。
しかし、2048年の若者は皆バントが下手だった。
もうあの男に頼るしかなかった。
――川相昌弘、87歳。前人未到の600犠打を達成した男。
川相は胃がんと腸閉塞で入院中であり、ひざ頭はムズムズするし小便の切れも悪かったが、
人類代表の打診があると快く引き受けた。
さっそく一時退院の手続きをとり、自衛隊のヘリでチョモランマに向かった。
背番号0が大王と向かい合う。大王はこう言った。
「俺が投げる。」
人類は大王の投球練習に恐怖した。ものすごいノーコンなのだ。
しかしどんなボールでも、一回で決めなければ人類は皆殺しにされてしまう。
無限の重圧が、川相の肩にのしかかった。
そして、運命の第一球・・・。それは案の定、顔面近くの危険球だった。
川相は現役時代の勘を呼び覚まし、ボールをかわしながらバットを立ててバントしようと考えた。
しかし本当にその通り、体が動くのか?
世界中のお茶の間で、祈りが捧げられた。
次の瞬間!ボールは三塁線ぎりぎりに転がった。
大王が慌ててマウンドを駆け降りボールを拾ったときには、ランナーは楽々セカンドベースに到達しており、
川相はファーストベースを枕に力尽きていた。
人類は勝利したかに見えた。
しかし・・・
「ふはははははははは、川相!!今のは内野安打だ!送りバントじゃねぇ〜。
ふははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」
アンゴルモアの大王は汚い奴だった。こうして人類は滅びた。
THE END
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