流れ星 (1998年11月21日)

流れ星に願いを託す
誰もがすることじゃないか
そんなことで寒い朝に早く起きて
窓から外を見るなんて
どうしてそんなまねをするんだ

けれどあなたにとって星は特別のもの
子どもの心を持ったまま天に召された時
星が生まれるのです
そう話すあなたの横顔が輝く

高い高い天に限りなく近づき
心が熱く燃え尽きる時
あなたの魂も星と輝く


たましい (1998年11月21日)

夕暮れ時に祈ることばは
やわらかい天鵞絨に包まれ
祈るわたしのたましいは
あなたの御光に包まれる
あんなにも凍える心が
あなたから与えられるひとつひとつの御言により
こんなにも暖かくなる

わがたましいよ
このひとときを忘れることなく
祈り続けられるように
あなたの御心に
繋がっていられるように


紅い葉が見える
切り立つ絶壁に
激しく流れる川の畔に
まだ周囲の木は色づく時を待ち
静かに立っているのに
その木は
すべての葉を紅く染め
燃ゆるごとくに立っている

雨で増水した川の水は
滝となってどうと流れ落ち
またその滴が舞い上がり
わずかに木々を濡らす
そのような滴さえ
瞬く間に消えてしまう
その紅い葉に触れたなら (1998年11月1日)


この貴重な時間です
とても澄んだ空気の中で
やわらかい朝の光の中で
心深く祈ります
私にとってとても貴重な時間です

この大切な時間です
レストランの薄明かりの中で
あなたの視線を感じながら
あなたの言葉を受けます
私にとってとても大切な時間です(1998年11月1日)


どんより曇ったハノーヴァーの空は
冬のドイツによくある風景だ
人工湖は凍てつき
子どもらがスケートを楽しんでいる
ラートハウス(市役所)の緑の屋根は
どれほど長い時を見つめてきただろう
ヨーロッパで初めてできた大学も
今日はひっそりとしている

けれど
私の眼の裏には
今までその大学で学んだ
数多くの人たちの姿が
ぼんやりと浮かびあがるのを
冷たいけれどやわらかな空気の中で
しっかりと捉えていたのだ (1998年11月1日)


鯨を追いかけながら
遠い海を渡ってきました
氷の山がどどどうと流れていきます
それを必死で避けながら
ゆっくりと船を進めます
船は長旅のために
とてもひどく傷んでいます
漁師たちは何度もここに来たことがあり
もうじき鯨の大群に出会えることを
よく知っているので
ワクワクしながら仕事をしています

突然
鯨の姿が目の前に現れて
漁師たちは大喜びしました
その直後
船は傾き始め
漁師たちの声は叫びに変りました
けれどやがてそれも静かになり
みんな黙々と
それぞれの運命に委ねていったのです(1998年11月1日)


唐紅の立ち消えて
白い時を重ね
大銀杏にすべての時を委ね
キャンパスを歩きながらその葉を踏む
嗚呼ゆきゆきて哀し
悲しき人の行かんとぞ想う

そんなことはつまらないとあの人は言った
けれど誰だって人それぞれの幸いがあり
それをそれぞれが抱きしめて歩くのだ
そのようにしながら
哀しみの天鵞絨を抱くのだ(1998年11月1日)


これほどに愛した人がいるだろうか
その人のために命を捧げることすら厭わず

風に包まれて歩くわたしの傍らで
ゆったりと
あたたかな息を手に吹きかけながら
大いなる空の彼方にある星の子らを見つめ
寒々とした空の端を見つめ
そうして
幾年かの時を超えて旅をする人(1998年11月1日)


生命

この小さな生命
誰のために生き
誰のために死に
遠いところからやってきて
遠いところに去ってゆく
誰かのために捧げてみたい
このちっぽけな生命を

ほんの一週間しか生きられない
蝉でさえ
誰かのために必死で鳴く
私もそのように
誰かのために必死で
生きていきたい


海鳥たちが声高く
鳴きながら飛ぶこの町に
あなたがやってきたのは
3年前の雨の降る午後でした

木枯らしの吹きすさぶ季節に
ボストンバッグひとつ抱えてあなたは
さりげなく駅のホームに降り立ちました
大学に帰る弟を見送りに
駅まで車で来ていたわたし
あなたの暖かな青い眸と
優しげな微笑みに心動かされ
あなたが向かうべき教会まで
あなたを送っていきました

それからのあなたは
町の人たちをこよなく愛し
淋しい人たちの友となり
時には力強く語り
ときには優しく声をかけ
多くの人の心の支えとなりました

そんなあなたの傍らで
私はいつもひっそりと微笑み
黄昏に町が染まるまで
あなたの力に少しでもなれたらと
あなたの支えに少しでもなれたらと
いつも静かに
祈っていたのです


朝な夕な
君のことを想い
君のために祈る
安らかな心で
いてほしいと
いつも明るく
温かい心で
いてほしいと
君のことを想い
君のために祈る


ドリーム・イン・パラダイス

透き通るような
夏色の風が
誘うように抜けて
君を困らせる

遠い水平線の
上を走る白い
ヨットが波間にきらめく夏の陽

ああここが
ああ君の
最後の楽園になるよ

強い風に吹かれ
波が高鳴って
サーフィン・ボードが
さらわれてゆくよ

高いココナッツの木の
上で遊ぶ白い
天使が清らに微笑み返すよ

ああここが
ああ君の
最後の楽園になるよ


鰯雲

水面に映る鰯雲
追えば逃げ
逃げれば追われゆく姿
たださえ募る思いのみ
抱いて降らす玉時雨
木の葉の中に隠されて
声なき音に耳澄ます

緑色の雨

変な話だけれど
緑色の雨が降る
確かな理由は分からないけれど
緑色の雨が降る
白い壁も
真っ赤な屋根も
緑色に染まってく

たぬき

月夜の晩に
ひとりで街を歩いてみた
そこにはたくさんの狸がいて
酔っぱらいをだます
ポンポコポンと腹をたたいて
笑わせて
だましてしまう
でも
今は狸もいない
みんな
人の皮をかぶって
愛想よく笑うだけで
だましてしまう

アルバム

愛を見たい
そのために
どれほど多くの人が
今まで苦しんできた
心の鍵を開けないで
いっぱい部屋をもっているから
ひとつひとつ案内したげる
いつかね

地の果てで見た
美しい風景
写真にとっておきたい
けれど
君の写真はいらない
心のシャッターをいくつも押して
死んでも忘れることのない
そういうアルバムをつくるから













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