時が止まる  (2000年12月19日)


やがて時が止まる
いつも見なれたこの部屋で
君の声があふれそうな
夕暮れのときから
今まで忘れていた
君といつか何度も繰り返した
許すことを
今思い出した

いつか愛が染まる
こんな悲しい道程で
君の声があふれそうな
夕暮れのときから
今まで忘れていた
どこか遠く旅して繰り返した
許すことを
今思い出した



父よ  (2000年11月22日)


西の空に
綿菓子のような雲が浮かんでいる
フワフワとラピュタのごとくに漂って
地平線の向こうへ行こうとしている
紅葉が終わりつつある山とともに
茜色に染まろうとしている

あの地平線の向こうに
彼の地があるのだろうか
あなたはどんな格好をして
どのあたりを走り回っているのか
茜色に染まりながら

あなたが逝った日
どんな空をしていたか忘れてしまった
けれど
まんじりともせずに
兄からの電話を待っていた
昔のあなたとのことを思い出し
涙を流しながら待っていた


(父の命日に)



遠くを  (2000年11月16日)


わたしは遠くを見つめている
空高く舞い上がって
少しずつ落ちていきながら
水平線のかなたに沈む
夕陽を追い越していきたいと
願うように

わたしは遠くを見つめている
ユーカリの木の枝に上って
家路を辿ってゆく
友だちの姿を見ながら
大きく手を振っていた
あの頃のように



風花(カザバナ)  (2000年11月14日)


早池峰山(ハヤチネサン)から風花が
ひらひらと舞い降りて
君の黒い髪にかかる
すぐにとけて消えるけれど
君はそれに気づくこともない

それは
君から言い出した別れの言葉のよう
わたしのたましいに
静かにふりかかるけれど
すぐに消えてなくなる
その言葉に自分で驚いて
うろたえているのは


どうしてこんなことになったんだろう
どうしてここまで来たんだろう
ふたりで考えてみても
誰も答えてくれることはない
これはふたりの選んだ道
振り返ることはできない
もちろん戻ることも

山の中腹に日が沈む
まるで
とけて消えてしまうみたいに



(早池峰山は、岩手にある、宮沢賢治ゆかりの地)







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