2. 『火車』 宮部みゆき 新潮文庫
今まで僕は、ミステリーといった類の本というのは全然読まなかったのですが、
ふと目にとまったこの「宮部みゆき」という作家、割と若い層からの支持もあったので試しに
読んでみようというのがきっかけでした。
最初に読んだのは、中居正広が主演した映画でも知られる「模倣犯」。
ハードカバー上下巻の超大作でしたが、つい夢中になって一気に読み切ったことは記憶に新しいですね。
その次に読んだのがこの「火車」でしたが、改めて宮部の懐の深さ、分野を問わない豊富な知識、
そして人間の描写のうまさに感心しました。
僕の読んでいて面白いと思う基準として、いかに文章から自分の脳内において
その場面を思い描くことが可能であるかというのがあります。
宮部みゆきの文章は、登場人物一人一人の顔かたち、性格、それらを即時に頭の中で作り出し、
ひとつの映像として確立していってしまう巧みさがあり、まさに僕自身の「面白い」基準に合致するのです。
ただそれだけじゃなく、プロットやストーリーテリングという点でも、ありふれた中での非日常、というか、
絶対的に離れた位置に存在するものではないことも、とっつきやすさ、面白さの要因ではないのかと思います。
そんなことで、僕がその後、宮部中毒にかかったことは言うまでもありません。
さてこの「火車」という本、題材は「カード借金」であり、これもまた僕たちが日ごろ接するものであるがゆえに
いつ自分の身に降りかかってもおかしくないものとして、ついつい引き込まれてしまった感があります。
ただ人並みの幸せをつかみたい、そんなありきたりだけど、切実な願いをかなえるために奔走する女性を、
第三者の視点から実に巧妙に描き出していると思います。そんないろいろなパズルが組み合わさったとき、
ようやく本人との対面というときになって、本編は終了するのですが、その後の展開を読者自身にそれぞれ
思い描かせるのもまたにくい演出だと思います。
まぁもっとも、なんかすっきりしないというように感じる人もいるようですが。