お金で買える物の話し

叔母  「お金で買える物はたった一つ。時間だけだよ」

叔母曰く、お金でものを買っていると思うとさもしい人間になるのだそうだ。
食事をするとき、とても豪華なものを一人で食べるのと、そこそこのものを仲の良い人間と食べるのとでは後者の方が断然おいしく感じる。
お金で物を買っちゃあいけない。「楽しむ時間」を買わなきゃいけない。
そういうお金の使い方が出来る人間になりなさいねって、ずっと言われて育った。

 
 
 
人生

叔父  「人生って甘いもんだぞ。こんな俺でも生きてるんだから(笑)」

なんでだったか忘れたけど、やまねが自信を無くし、青い顔をしていたときに叔父さんはこう言って笑った。
そのころやまねはまだ子供で、大人達は「人生とは厳しいものだ」「お前みたいにうかうかとしていると、あっと言う間に落伍者になる」なんて、やまねをいつもお説教していた。
そんなとき、叔父さんが急に逆のことを言ったから子供のやまねはとってもびっくりしたものだった。

叔父さんの人生は波瀾万丈だ。学生時代は警察のご厄介に何度もなっていると、親切な(!)人が教えてくれた。
結婚もしたし、離婚もした。博打にも手を出したし、サラ金にも追われたし、自殺未遂もやまねが知ってるだけで二回はしている。
まじめに働き始めたら仕事中に事故に巻き込まれ、腕に大変な障害を残すことになった。
やまねは実は叔父さんが私がアルバイトしているお店に来たとき、小さな価値のないものを万引きしたのを目撃してしまったことがある。(店長に報告しなかった私もきっと同罪。)
叔父さんは落伍者ってやつなのかなぁ・・・?

やまねには不思議とそう思えない。
叔父さんの周りには少し寂しくて暖かい空気がある。
やまねが以前、病気になって倒れたとき、一番最初に駆けつけてくれたのは叔父で、一番お見舞いに来てくれたのも両親の次が叔父さんだった。
やまねは叔父さんが大好きなのだ。
叔父には別れた奥さんとの間に一人娘がいて、その子だってもう叔父がどんな人生を歩いてきたか親切な(!!)人たちにおかげで知っているはずなのに、やっぱり叔父が大好きだ。

 


 
 
お土産

父・母「はい、私たちの新婚旅行のお土産だよ」

確かやまねが16歳の時だったと思う。父と母が突然そんなことを言ってやまねに珊瑚のイヤリングをくれた。
なんでも新婚旅行の時、未来の自分たちの子供(つまりやまねだ)にお土産を買ったらしいのだ。
とってもロマンチックなことだと思うと同時に、もし女の子が産まれなかったらどうするつもりだったんだろう?と少し笑ってしまった。
新婚だった頃、父も母も生まれる前からやまねに逢うことを楽しみにしてくれていたんだって、少し嬉しくなった。